ダークボのふきカエ偏愛録

#61 こんなに面白いのに…

ダークボのふきカエ偏愛録 ダークボのふきカエ偏愛録前回のコラムで、タイミングが悪くてタイトルを書けなかった新録企画は、ドイツ映画『アイガー北壁』でした。観てくれました?
「面白かった」という声は聞くものの、「良いふきカエだった」(良くなかった、でもよし)と言ってくれる人はなかなかいなくて。頑張って作ったんだけどな。まあ面白く観てもらえたんなら成功ですけど。

BSの視聴率は公表されていないので書けませんが、正直『アイガー北壁』は、数字はイマイチでした。ちょうど新首相の会見の裏になっちゃったし、一応全国公開されたとは言え、有名とは言えない12年前の非ハリウッド映画ですから、仕方ないのでしょう。
地上波各局に洋画劇場が並んでいた頃なら、例えば「今週の木曜洋画はどんな映画かな?」というモチベーションで毎週観てもらえましたが、今では「〇〇をテレ東でやってる」という順序になっちゃって。
今も番組として頑張ってるテレ東「午後のロードショー」なら、メジャー作品より劇場未公開サメ映画の方がウケちゃったりもするし、飯森Pが育てたザ・シネマさんなら「またとんでもねー企画やってるぞ」と注目してもらえますが、BSテレ東「シネマクラッシュ」にはそんなブランド力はないようで。もう20年やってるんだけど、哀しいなあ。

覚えておいてください。ドイツの娯楽映画は面白いのだ!
ヨーロッパ映画は、日本では、映画祭で受賞するようなシネアスト向けのゲージュツ作しかなかなか劇場公開されませんが、当然ながらどの国にも、大衆向けのエンタテインメント作品というのはあるわけで(去年公開されたロシアの戦車映画『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』は破天荒に面白かったな)。

『アイガー北壁』はドイツの「山岳映画」の伝統で生まれた映画ですが、ドイツには「アウトバーン(高速道路)映画」という伝統芸もありますね。つまりカーアクション。
20世紀末にテレ東で放送したアメリカ映画『暴走ハイウェイ・奇跡のチャイルドシート』(俺命名。#58 を参照)をリメイクして1エピソードに織り込んじゃった「アウトバーン・コップ(アラーム・フォー・コブラ)」シリーズは今も続いてるらしいし、唐沢寿明さん&窪田正孝さんでリメイクされた「ラストコップ」もオリジナルはドイツの刑事ドラマで、これまたカーアクションがド迫力。「木曜洋画」で放送された『ザ・クラウン 炎のリベンジャー』から始まる「ザ・クラウン」シリーズも凄い。どれもTVムービーですが、完全に映画クオリティ!
アクションだけでなく、爆笑コメディの類もスグレモノが多くて。たまに〈未体験ゾーンの映画たち〉あたりで上映されたり、DVDリリースされるジャーマンエンタテインメントは、要チェックです。

ダークボのふきカエ偏愛録ちなみにドイツ映画のふきカエを作ったのは、『アイガー北壁』が2本目でした。
1本目は、忘れもしない『es[エス]』。
単館系では大ヒットしたサスペンス映画です。被験者たちを“囚人役”と“看守役”に分けて疑似刑務所に監禁するという、本当にあった心理実験に着想を得た映画で、あまりにもキモ楽しいので「木曜洋画」でプライムタイム放送した次第。
前にも紹介したかもしれないけど、ふきカエ制作にあたっては、声優陣も囚人役(平田広明さん、磯部勉さん他)と看守役(森田順平さん、江原正士さん他)に分けて、スタジオの反対側に座ってもらうという「実験」をしました。視聴率は最悪で実験は失敗でしたが(女囚じゃなきゃダメか)、現場は超面白かったな。打ち上げまで気分引きずったりして…

数字の取れなかった映画の話ばかりで滅入っちゃいますが。
テレビのふきカエ洋画劇場は、最初から面白いとわかってるブロックバスター映画を繰り返し観せる番組じゃなくて、世の中にはまだまだこんなに面白い映画があるんだよ、というのを知らせる場でありたい。こうしたサルベージ活動は、誰も観てないからもうやめろ、と言われるまでチャレンジしたいと思いますので、ぜひご支援を。
(実は既に次の企画を準備してますが、実現できるかどうか…)

さて、これも今まで発表できませんでしたが、ようやくお知らせ。

ダークボのふきカエ偏愛録10月21日にUHDブルーレイで発売される「バック・トゥ・ザ・フューチャー トリロジー 35thアニバーサリー・エディション」に、BSジャパン(制作当時)版のふきカエが初収録されます。
このために作ったわけじゃないけど、今年になって収録したいという申し出を頂いた時は嬉しかったな。これでBSが観られなかった方にも、宮川一朗太さんのマーティを観てもらえる! 音声を切り替えれば、マーティもドクも山寺宏一さんだったり。

それにしてもVHS以来、何回買い換えさせりゃ気が済むんだ…。この調子じゃ、40周年には「あの」ふきカエも加わりそうだな。

 

[作品画像はAmazon.co.jpより]
※Amazonのページで紹介しているDVD・ブルーレイ等のソフトは、日本語吹替え音声を収録していなかったり、このページで紹介しているものとは異なるバージョンの日本語吹替え音声を収録している場合や既に廃盤となっている場合もありますので、ご購入等の際はご注意ください。