吉田Pのオススメふきカエル

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『STAY HOME! (…with NETFLIX)』

本稿を書いている5月末、東京をはじめとする首都圏でもやっと緊急事態宣言が解除される見通しが出て、長かった自粛という名のトンネルの先にかすかな光明が見えてきました。
かく申す私も自粛前に最後に劇場で観たのが『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』で3月15日だったので、なんと2か月以上映画館に行ってない。映画を観始めてからこの40ン年で初めてですよこんなの。さすがに辛いわあ。

でももう少しの辛抱です。各映画館とも感染防止の対策を整えつつあるようなので、またビールを片手に劇場の暗闇に身を任せる至福の日々がやってくるでしょう。それまではもうしばし、自宅での映画鑑賞を。おすすめの吹替え作品をいくつかご紹介します。

『6アンダーグラウンド』
吉田Pのオススメふきカエル

監督:マイケル・ベイ
出演:ライアン・レイノルズ メラニー・ロラン
NETFLIXにて配信中

自らの死を偽装したテック界の大富豪が、卓越した技能で世界を股にかけて活躍する男女を集めチームを結成。傍若無人な独裁者を倒すため、”命”をかけた任務に挑む。
 

いやもうマイケル・ベイですから当然ですが、爆発に次ぐ爆発、破壊に次ぐ破壊。全編がズドーンバゴーンどんがらがっしゃーん(語彙力…)の連続で、聞けば燃やした燃料は6万リットル、壊したクルマは750台ですと。まあ今ガソリン安いからいいのか(そういう問題ではない)
これだけのスケールのアクション超大作をなんで劇場公開しなかったのか(コロナ禍の起きる前の作品ですからね)少々不思議ではありますが、NETFLIXといえば今やハリウッドメジャーに負けないコンテンツ製作力(主に予算ですが)の持ち主。加えて作り手としては、劇場の確保や配給にまつわる様々なスケジュール上の制約から解放されるというメリットもあったようです。

しかしとにかくマイケル・ベイですから(しつこい)配信用にスケールダウンなんてするはずもなく、画面で展開する怒涛のアクションつるべ打ちは、映画館で観るのに勝るとも劣らない迫力です。加えて吹替え版も秀逸。主演のライアン・レイノルズには『デッドプール』の“俺ちゃん”で定番となった加瀬康之氏、志田有彩嬢が色っぽくもカッコよく華を添えて、宮内敦士アニキが渋く脇を固める。アクション映画の佃煮みたいなこの一本、コロナの憂さを吹き飛ばすには最高です。

 

『アナイアレイション -全滅領域-』
吉田Pのオススメふきカエル

監督:アレックス・ガーランド
出演:ナタリー・ポートマン ジェニファー・ジェイソン・リー
NETFLIXにて配信中

不可解な現象が起こる謎の領域「エリアX」がアメリカ国内の海岸地帯に拡大。現地に調査隊が派遣され、元兵士の生物学者レナの夫も加わるが、彼らは音信不通となり行方不明になってしまう。やがてレナの夫だけが生還したものの、瀕死の重傷を負っており昏睡状態に。レナは夫の身に何が起きたのか突き止めるべく自ら調査隊に志願し、エリアX内部の未知の領域に足を踏み入れる…
 

さてお次は打って変わって陰鬱なアート系SF作品。ジャンルとしては“異世界からの侵略もの”に入ると思いますが、見事なのはその世界観の構築です。我々の済む“日常”のすぐ隣に“悪夢”が出現し、その境界線が次第に曖昧になっていく。その謎を解くべく異世界に踏み込んでいく探査チームが全員女性、というのも作品の静謐なムード作りに貢献しています。何のかんのとまだまだ男性社会のハリウッド。初手から女性層にアピールするような作品ならともかく、男性客が主体であろうこの手のハードSFで主要キャラが全員女性、というのは配信だからこそできたチャレンジではないかと思います(事実、唯一劇場公開されたアメリカでの興行成績はイマイチでした)

主演のナタリー・ポートマンを吹替えるのはナタポーと言えばこの人、の坂本真綾さん。初めてナタリーを吹替えたのが1998年の『ヒート』で、当時は二人とも十代だったはず。ともに子役時代から同じ俳優の吹替えを続けて、一緒にキャリアを積んでいけるというのは声優としても無上の喜びじゃないでしょうか。そういえば彼女に初めてスタジオでお会いしたン十年前は学校帰りでランドセル背負ってたもんなあ(遠い目)

 

『アイリッシュマン』
吉田Pのオススメふきカエル

監督:マーティン・スコセッシ
出演:ロバート・デ・ニーロ アル・パチーノ
NETFLIXにて配信中

1950年代のフィラデルフィア、トラック運転手フランク・シーランはマフィアのボスであるラッセル・バッファリーノのもとでヒットマンの「仕事」を引き受けるようになる。やがてラッセルから全米トラック運転手組合の委員長ジミー・ホッファを紹介され、彼のボディーガードを務めながら家族ぐるみの付き合いを築いていくが、次第にホッファとマフィアとの間の溝が深まっていき…
 

こちらはもう一年以上前の作品なので、ご覧になった方も多いかもしれません。思い起こせば数年前この作品が製作される第一報を聞いたとき、スコセッシとデ・ニーロの新作と聞いてビックリ、それが劇場ではなく配信での公開と聞いてこれまたビックリ。いやアル・パチーノまで出てるし、どう考えてもこれ劇場公開のバジェットでしょう、なんでまた配信で、と思ったのです。その時は。

日本では配信に先立ち劇場で限定公開され、自分も初見は映画館でした。上映時間3時間半に及ぶ長編を一気に見せ切ってしまう手腕はさすがスコセッシ。そういえば『アビエイター』も『ギャング・オブ・ニューヨーク』も長いけど面白かったもんなあ。と大満足で小屋を後にしたのでした。

そして後日、配信されているのを自宅でのテレビで(今度は吹替え版で)再見して気づいたのです。この大河ドラマは、むしろ自宅での鑑賞に適しているのではないか、と。ストーリーの中に明確な起承転結はありません。アメリカ近代史の裏側をあくまでも史実に沿って淡々と描いていきます。その流れを自宅のリビングで、途中で飲み物を作ったりトイレに行ったりしながらこちらも淡々と追いかける。そのリズムこそがスコセッシの意図したものだったんじゃないか?(ちなみに一緒に観た家人の感想は「こんなダラダラ人殺してるだけの映画が何でこんなに面白いの!?」でした。褒めてるんですよw)

吹替え版はデ・ニーロ初登板の沢木郁也氏に加え、パチーノ=山路、カイテル=樋浦と鉄壁の布陣。長尺なのに加えスコセッシ映画の常である膨大な台詞の量に、収録現場はさぞ大変だったこととお察しします。しかし人様が苦労して作った大作を自宅でリラックスしながら鑑賞するというのもまた無上の喜びであるのですw
 

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劇中、お偉い米軍将校が映画館で『ダンボ』を観ながら涙するシーンがありまして。2か月ぶりに劇場が再開されたら自分もそうなりそう