吉田Pのオススメふきカエル

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『春だ!アニメだ!ピクサーvsイルミネ~ショ~~~ン!』

↑タイトルの後半はあのミニオンの声で読んでね!

コロナ+花粉症でマスクを手放せない毎日ですが、それでも季節は巡り冬が終われば春が来る。陽気もいいしなんか楽しいことしたいな~、という今の時期にピッタリの作品が現在劇場と配信で公開中です。奇しくもアメリカのアニメ界を代表する二大スタジオが真っ向勝負となった、その二作品を御紹介しましょう。

『SING/シング:ネクストステージ』
吉田Pのオススメふきカエル

 
監督:ガース・ジェニングス
声の出演:内村光良 長澤まさみ
3月18日より全国公開中
→ 公式サイト

「ニュー・ムーン・シアター」を再建した支配人バスターの更なる夢は、世界的なエンタテインメントの中心地レッドショア・シティで新しいショーを披露すること。そのためにはレッドショアを牛耳る冷酷なボス、ジミーのオーディションに通らなければならない。バスターと仲間たちは、今は隠遁生活を送っている往年のロック歌手クレイ・キャロウェイをショーに出演させることを思いつくが…。
 

オモシロ可愛いミニオンのキャラクターでお馴染みのアニメスタジオといえば、イルミネーション。同社が5年前に放った大ヒット作『SING/シング』の続編が登場です。前作を観終わったときに「あーこりゃ絶対に次があるな~」と予想したとおり、コアラの支配人バスター・ムーン率いる奇天烈エンターテイナー集団が帰ってきました。

バスター一座は前作で地元の劇場を見事に再建し、公演はいつも大盛況。でもそうなると欲が出てくるのが人(じゃないけど)の常。「わしらこんな田舎で満足しとるタマやないで!都でてっぺん取ったるわ!」とばかりに、目指すはエンタメの本場レッドショア(どう見てもラスベガス)!…この辺り、日本語版でのウッチャンのキャラが見事にハマって、なんとも山っ気のあるバスター像を作り上げています。あの声に乗せられていろんなことやらされた若手芸人、深夜番組とかでよくいたでしょ?

でもレッドショアで晴れの舞台に立つには、この街のエンタメ界を牛耳る興行会社の社長、ジミー・クリスタルのお眼鏡にかなわないといけない。この社長、見た目が狼なのに加えて声が大塚明夫アニキなので、そりゃ恐いに決まってます。出演契約を取り付けたいバスターが苦し紛れに出した条件が「往年のロック歌手クレイ・キャロウェイを復帰させてショーに出す」でした。とは言えクレイは引退後15年も隠遁生活を送っていて、こっちにはコネもなければツテもない。さあ、どうする?

このシリーズの売りである“洋楽の名曲てんこ盛り”は続編でももちろん健在。冒頭からプリンス& ザ・レボリューションの大ヒットナンバー“Let’s Go Crazy”でかっ飛ばし、エルトンの“Goodbye Yellow Brick Road”にバカラックの“I Say a Little Prayer”と名曲のつるべ打ち。そして圧巻なのは…ここはネタバレなので伏せますけど、伝説のシンガーであるクレイ・キャロウェイの声を演じるのがあのU2のボノ、とくれば…ね?そして日本語版でクレイを演じるのは本邦ロック界のスーパースター、B’zの稲葉浩志!

もちろん長澤まさみ、坂本真綾ほかメインキャラたちは今回も続投。前作でシナトラばりに“My Way”を歌い上げていたネズミのマイクが今回出てこないのは残念ですが、山寺宏一ファンはご安心ください、これぞ山ちゃん!という別の役でちゃんと出てきます。芸達者が揃って繰り広げるワクワクドキドキ、まさにご極上の“That’s Entertainment”を是非とも劇場の大画面で!
→吹替え版のスタッフ・キャストはこちら

 

『私ときどきレッサーパンダ』
吉田Pのオススメふきカエル

 
監督:ドミー・シー
声の出演:佐竹桃華 木村佳乃
Disney+にて独占配信中
→ 公式サイト

カナダで暮らす中国系の少女メイは流行りの音楽やアイドルが大好きで、恋や遊びに忙しい13歳。でも伝統を重んじる両親の前では、期待に応えようと本当の自分を隠す日々を送っていた。そしてついに感情をコントロールすることができなくなってしまったメイがある朝目を覚ますと、なんと自分の姿が巨大なレッサーパンダに…!
 
 

さて、新鋭イルミネーションに対するはもはや老舗と言ってよいピクサーの最新作。ある朝目覚めたらとんでもない姿に…といえば元ネタは不条理文学で名高いカフカの『変身』かと思いきや、あんな禍々しく救いのない話ではなく(当たり前だ)思春期を迎えた少女の不安定な心の内をユーモラスに描く快作となっております。

特筆すべきは主人公であるメイのキャラクター。これがもし日本だったら13歳の少女をアニメの主役として描くとき、どうしたって“萌え”や“カワイイ”という要素を避けては通れないと思うのですよ。まあぶっちゃけて言えば「カワイくない女性主人公はあり得ない」ということ。これは日本のアニメにDNAレベルで刷り込まれている不文律であり、あのジブリでさえその呪縛から逃れることはできません。

でも本作の主人公メイはどうでしょう。上の画像でわかるようになんと彼女「全っ然カワイくない」!低くて上を向いた鼻、出っ歯気味の前歯、目と眉毛の間隔が広い典型的な“アジア顔”、我々ニッポン人が毎朝鏡で見慣れているあの顔なのです。日本の場合はそのコンプレックスを「せめてアニメの中ぐらいは…」と美化した結果プリ○ュアみたいなキラキラ美少女が画面を埋め尽くす結果になるわけですが、メイと同じくカナダで生まれ育った中国人である本作の監督ドミー・シーはアジア系の主人公をことさら美化も戯画化もせず“そのまんま”描いています。これ、考えてみたらすごいことですよ。

そんな等身大の主人公と一緒に泣いたり笑ったりするうちに、気がつくと「本当の自分って何だろう?」と我が身を振り返ってしまうような、実は深~い作品。日本語吹替版もメイにフレッシュな新進女優佐竹桃華さん、その厳格な母親に声優としてももはやベテランの域に達している木村佳乃さんを配し、オリジナル版の楽しさそのままにお届けします。こちらはただいま絶賛配信中、ご家族そろってお楽しみください!
→吹替え版のスタッフ・キャストはこちら
 
 

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で、やっぱり山ちゃんの歌を聞きたいなあ、と思ったら前作をもう一度。