吉田Pのオススメふきカエル

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『6500万年を翔けた夢とアドベンチャー!』

…これはもう前世紀となってしまった1993年、シリーズ第一作『ジュラシック・パーク』が公開されたときのキャッチコピー。ベストセラー小説をあのスピルバーグが映画化となれば大ヒットしたのは当然ですが、そこから三十年に渡ってシリーズ化されることになるとは、さすがに当時は想像できませんでした。世紀を跨いで駆け抜けたその大ヒットシリーズが今年、ついに完結します。今回は最終作『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』の公開に先立ち、映画の魔術によって現代に甦った恐竜と人間たちの軌跡を振り返ってみましょう。

吉田Pのオススメふきカエル『ジュラシック・パーク』(1993)

監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:サム・ニール リチャード・アッテンボロー

マイケル・クライトンの原作は遺伝子工学からカオス理論まで、緻密な科学的考察を核に組み立てられたまさに“理系エンターテインメント”。スピルバーグは映画化に当たりそうした理屈を極力そぎ落とし、大自然をバックに恐竜たちが駆け回る壮大なアクション・アドベンチャーに仕上げました。その結果、興行収入が世界で10億ドルを超える大ヒットとなり、その後のシリーズ化の礎を築くことに。ジョン・ウィリアムズ作曲の雄大なテーマ曲はその後もシリーズを通じて繰り返し演奏され、『スター・ウォーズ』『インディ・ジョーンズ』と並んで彼の代表作となりました。日本語吹替え版でメインキャストを演じたのは富山敬さん、弥永和子さん、永井一郎さんといった面々。皆さんもうこの世にはいらっしゃらないことを思うと、三十年という歳月を改めて実感します。

 

吉田Pのオススメふきカエル『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(1997)

監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:ジェフ・ゴールドブラム ジュリアン・ムーア

その大ヒットを受けて4年後に制作された続編。前作のラストでパークは閉鎖されますが、実はパークの恐竜たちは隣の島にある別の施設で孵化・育成されていて、そこにはまだ別の個体が生き残っており…そして再び恐竜たちとのサバイバル・レースが始まります。ヒット作を次々と生み出しているスティーヴン・スピルバーグですが、意外にも“続編を自分で監督した作品”は『インディ・ジョーンズ』と本作の二つだけなんですね。それだけ愛着もあり、何より“監督していて楽しい”シリーズなんだろうなあ、と推測します。前作では脇役だった数学者イアン・マルコム博士が今回は主役となり、吹替え版では全編を通して“魅惑の芳忠ボイス”が堪能できるという、ファンには堪らない一作。

 

吉田Pのオススメふきカエル『ジュラシック・パークIII』(1997)

監督:ジョー・ジョンストン
出演:サム・ニール ローラ・ダーン

マイケル・クライトンの原作を離れ、シリーズ初のオリジナル・ストーリーとなった三作目。監督も前二作のスピルバーグはプロデューサーに回り、視覚効果スタッフ出身のジョー・ジョンストンがメガホンを取りました。三作目のテーマはポスター・ビジュアルからも分かる通りの“飛翔感”。冒頭のパラセーリングを楽しんでいた少年が遭難するシーンや、捜索に向かったグラント博士一行に上空から翼竜プテラノドンが襲い掛かる場面といった「高低差のあるアクション」で、『ロケッティア』や『遠い空の向こうに』で見せたジョンストン監督の演出手腕が光ります。吹替え版では遭難した息子を探す父親を演じた納谷六朗さんがさすがの名演ですが、実は納谷さん前二作にも脇で出演されてるんですよね。探してみましょう。

 

吉田Pのオススメふきカエル『ジュラシック・ワールド』(2015)

監督:コリン・トレヴォロウ
出演:クリス・プラット ブライス・ダラス・ハワード

『ジュラシック・パーク』三部作の完結から14年後、『ジュラシック・ワールド』として再起動された新章の一作目。メインキャストも一新され、主役は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のスター・ロードことクリス・プラット(声:玉木宏)に交代しました。この再起動第一作で特筆すべきは、何と言っても14年の月日が生み出したSFX技術の進化。前三部作での恐竜は、実はCGよりも昔ながらの手法であるアニマロトニクス(精巧な模型を作って物理的に動かす)のほうがメインだったのですね。しかし時代は既に21世紀、進化したCGは人間と恐竜を何の違和感もなく同じ画面で共演させています。キャストが若返ったのに伴いスピード感も倍増、『スター・ウォーズ』の新作も手掛けたコリン・トレヴォロウの躍動感溢れる演出で、シリーズは新たなスタートを切りました。

 

吉田Pのオススメふきカエル『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(2018)

監督:J・A・バヨナ
出演:クリス・プラット ブライス・ダラス・ハワード

前作『ジュラシック・ワールド』でパークは再び崩壊。閉ざされた島では折しも火山活動が活発化し、島を壊滅させる大噴火へのカウントダウンが始まる。トレーナーのオーウェンは自分が育てた恐竜たちを救おうと島に戻るが、別の一団もまた違う目的で島へ潜入していた…新シリーズの続編は前作とは趣を変え、閉ざされた空間で展開するゴシック・スリラー。今回登板したA・Jバヨナ監督が『永遠のこどもたち』や『怪物はささやく』で見せたホラー調の画面作りが効果を生んでいます。物語は遺伝子操作で生み出された恐竜をめぐる人間たちの思惑が交錯し、ラストではついに…。このときシリーズは文字通り“パーク”から“ワールド”へと生まれ変わったのでした。そして…

 

吉田Pのオススメふきカエル『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』

監督:コリン・トレヴォロウ
出演:クリス・プラット ブライス・ダラス・ハワード
→ 公式サイト

コリン・トレヴォロウが監督に復帰した最新作にしてシリーズ最終作には、上の写真の通りグラント博士(サム・ニール)、エリー・サトラー(ローラ・ダーン)、イアン・マルコム(ジェフ・ゴールドラム)の旧三部作メインキャストも復帰。新三部作のメンバーも加えたオールスターキャストがシリーズの終幕を飾ります。前作のラストで世界は一変し、人間は恐竜たちと新たな関係を築くことに。それは現実社会で今まさに我々が模索している「コロナ・ウィルスとの共生」というテーマにもつながって見えます。遺伝子テクノロジーの黎明期に誕生したこのシリーズがCGの技術とともに進化と変貌を遂げ、30年の歳月を経て完結する。少々大袈裟に言えば一つの文明の勃興から終焉までを見届けるような心境でもあります。その壮大なフィナーレをぜひ劇場の大画面で見届けてください。
→吹替え版のスタッフ・キャストはこちら

 

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吉田Pのオススメふきカエル
全ての始まり。いま読み返しても古くないどころかまた新しい発見があったりして驚き。