飯森盛良のふきカエ考古学

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キミは、人が1秒間に何文字まで読めるかを知っているか!? または、ふきカエ礼讃、の巻!

明けましておめでとうございます、と形だけ言ってサクっと本題に入る。先日ツイッターをやってたところ、ワタクシのツイートが見事4ケタのプチバズりを記録いたしまして(大したことなくてスンマセン…)、それが、字幕のことについてのつぶやきだったので、新春一発目にそのことを綴ります。

どこかの誰かが、映画のパロディ動画みたいなのを作ってツイッターに公開してたんですね。とある有名映画の1シーンに、勝手に全然無関係な字幕をのせてた。絵と字幕は合っているようなんだけど、実際にしゃべるってる英語セリフの内容とはまったく別のことを言わせてる。

なかなか面白いパロディではありました。ちょっと、それをここにリンク貼って晒すことはできないんです。スンマセン。どう考えても映画の権利元の許可をとって加工してる感じじゃないので。

で、その字幕が、⻑すぎだったんですな。ちょっとこの画像を見てくださいよ。こんな感じだったんです。

飯森盛良のふきカエ考古学

これ、動いている映像で見るともっとわかりやすいんですが、でも静止画でだって十分「これは変だわ!」と違和感おぼえるでしょ?字幕長すぎ!セリフの字幕というよりテロップみたく見えます。

で、その動画では、これ級の文字数の字幕が次々と数秒おきに表示されるんですから、強烈な違和感をおぼえたのです。

ワタクシがそれを引用リツイートして指摘したのは、字幕ってのは一般的に「1秒4文字ルール」ってのがありまして、3秒のセリフなら3×4=12文字までしか字幕では表現できない、ということ。それ以上の文字数で無頓着に字幕翻訳してしまうと、読んでいる最中に次のセリフに移っちゃう、という最悪の事態になるからです。

と、いう指摘がプチバズり、「へぇ~知らなかった」とか「なるほどね~」的なリプをたくさんいただいたのですが、逆に興味深かったのが、少数ながら「いや、これぐらい文字量があっても普通に読めるんですけど」「何が問題なの?」という声もあったこと。

動画では、繰り返しますが、3、4秒などでは読みきれない左から右までビッシリ字幕×2行が、次から次へと矢継ぎ早に映し出され続けていったのですが、それでも「全然余裕なんですけど!」と。

実は、一応、読めはするんです。ただ、ものすごく意識を集中して、神経を張り詰めて読めばどうにか読了できる、という話で「それじゃダメじゃん!」なんだと、わかって!その緊張感を2時間の映画のあいだ中ずっと持続しろってのは、無理な話でしょう。洋画の字幕としては失格です。そもそも、字が読めても絵を見る余裕が全然ない。それじゃダメじゃん!本じゃないんだから。映画なんだから!

いや、意識の集中も神経の張り詰めも必要なくて、普通に読めてさらに時間も余って絵も見れる、と強硬に言い張る人はですねぇ…「そりゃお前が天才だからだよ!」としか言いようがない。世の中の全員がアマデウスだと思ってもらっちゃ困る。アマデウスがサリエリにマウンティングしちゃいかんですよ。サリエリ可哀想。

聞くところによると、本など読んでいても、文字を一文字ずつ追うのではなく文章全体が絵として“まとまり”となり目に入ってきて内容把握できちゃう人がいるんだそうです(と書いてても状況が飲み込めてないですが)。その能力を、専門的には「フォース」と呼びます。そういう人は血中のミディ=クロリアン値が20,000を超えていることが医学的に証明されており、学術用語ではThe Chosen Oneと呼びます(嘘)。

話を戻しますと、「1秒4文字ルール」を守りながら、外国語を日本語の短文で再現する…いやはや、字幕翻訳者というのは、ウルトラ専門的なお仕事ですな。ただ英語が得意とか帰国子女ですとかだけではまったく務まらない。ってかむしろ、国語力も重要で、英語では長いセリフなんだけどそれを意味やニュアンスを損なわずにどう日本語でハショって文字で再現できるか!? という勝負なので、俳句とか短歌とかのセンスが必要かもしれませんな。知らんですが。

でも、いくら見事な俳句的翻訳でも、どうしても原語セリフをハショることは避けられないので、アメリカ人が耳で聴いている元の情報量のきっと7割ぐらいとかしか、日本人は字幕からは得られていないはず。映画料金は世界一高いのにね!

諸外国では90年代後半から実質賃金が伸びて物価も上がりましたが(LAとか行くと東京で1000円ぐらいの中身のランチが2000円ぐらいしてビビります)、その“失われた20年”の間に日本では実質賃金が伸び悩み、物価も安いまま。今では日本は「買い物が安いから」と外国人旅行者が来る国になってしまいましたが、そんな貧しい俺らが、物価の高い国よりも高い1800円とか1900円というタイマイをはたて映画見に行って、本国人の7割ぐらいの情報しか得られてない、って、いいのかそれで!?

ではどうすればいいのか?というと、解決策は3つ。①そういうもんだと割り切ってあきらめる。②勉強しまくって英語のヒアリング力をネイティヴ並みまで上げる。そして③は、ここ「ふきカエル大作戦!!」にお集まりの皆様には、みなまで言う必要ありませんよね?ワタクシとしては③を万人にお薦めします

最後に番宣を。いや、宣伝しないと、映画会社さんからお預かりしている映画の写真を使えない決まりなものでして!ということで『ピースメーカー』です。クルーニーは小山力也さんに決まっとりますが、この映画、核テロを防ぐという大義名分のために国家公務員ともあろう者が法律ガン無視で大アクション!しまいにゃ拷問まで!! という、『24』シリーズにやたら似ている安全保障サスペンス・アクションなのです。98年にこの映画のソフト版ふきカエを担当されたご縁で、小山さんがジャック・バウアー役に起用されたのでは!?とワタクシかんぐっておるほど。これ以前に小山さんキーファー・サザーランドをアテられたことありましたっけ?どなたか確実なことご存知ありませんかね?現在、01年3月26日TBS『春の特別ロードショー』版を放送するべく手配中。このTBS版でも小山さんは続投で、ニコマンは田中敦子さんです。お楽しみに!あと、ザ・シネマの ブログ の方では、本作から読み解く90年代時点の国際情勢について書いております。そちらもよろしく!

追伸:聞くところによると、ザ・シネマの方で、『山猫は眠らない』のシリーズふきカエ版一挙放送をしている中で、『1』を小川真司VHS版をやると事前に発表していたのに、実際やったのは青野武テレ東版だった、というミスが発生したそうですな。なんか、ふきカエルさんが告知してくださったツイートまで「間違ってるよ」ととんだトバッチリを受けてしまったようで、誠に申し訳ございません…。そういうことでしたら、ワタクシがお手伝いしている「厳選!吹き替えシネマ」枠の方で、小川真司VHS版、やりましょうかね?ちょっと、これより手続きに入ろうと思います。ただしこれと『ピースメーカー』TBS版は、まだ確定ではありませんからね?乞うご期待、ということで。

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