飯森盛良のふきカエ考古学

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ザ・シネマ新録版第6弾発表!今度は『シャザム!』だ!! 裏テーマは『CHUCK』同窓会!!! の巻

ということで界隈の皆さま待望の『シャザム!』でございますよ。作ります。11月ザ・シネマ放送。乞うご期待!!

飯森盛良のふきカエ考古学

一部では、ワタクシが『シャザム!』を作らないんじゃないか!? との風説があったことは承知してます。というのも、ワタクシが過去に『シャザム!』公式版ふきカエを絶賛してたからなんですな。

『シャザム!』自体は公開前にワーナーさんの試写室で拝見しました。面白かったですねぇ、なんせ『CHUCK』視聴者でしたからね(後述)。でその後、菅田将暉さんの公式ふきカエ版(ふきカエ監修は福田雄一氏)が作られると知り、「あ、芸能人ふきカエにするんだ」と思ったんです。

それからしばらくして、家で子供と映画見るのに「お薦めだよ」と『シャザム!』をアマプラだったかネトフリだったか忘れましたが配信で見ることにして、ふきカエで視聴し、そこでビックリした、あまりの上手さに!!

俺の知らぬ間にプロ声優起用版が配信用に新録された?「してやられた!」「先を越された!!」と一瞬、舌打ちしましたね。

が、どうも調べても、新録版が作られたという情報は出てこない。これが菅田将暉版なのか!? いやいや、むっちゃくちゃ上手いじゃないか!! という感想でした。速攻でSNS上でも絶賛し、それで、不詳ワタクシが『シャザム!』新録版は作る気がないのでは?との風説が流れたっぽい。

いや、全然作ります!前回第5弾『ハドソン川の奇跡』の時にも力説したように、そのハリウッドスターのFIX声優さんバージョンが作られていない映画の、FIX声優によるふきカエ版も作っておくべき、という動機でワタクシは作っておりますんで。芸能人ふきカエかどうかは関係ない。

でも、『シャザム!』の主役シャザムを演じた、ザッカリー・リーヴァイ、「誰!?」というのが、日本人一般の正直なところではないでしょうか?まだ「ハリウッドスター」と呼べたり「FIX声優」がどうしたとか言うクラスの俳優さんではない。

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Wikiでは「ディズニー映画『塔の上のラプンツェル』のフリン・ライダー役、DCコミックス原作のスーパーヒーロー映画『シャザム!』の主人公シャザム役で広く知られている」と紹介されてるんですが、いや、ラプンツェルのフリン・ライダーって言われても、しょこたん版の畠中洋さんの声しか思い浮かばんし。

ということで、映画の代表作はこの『シャザム!』1本という、まだまだこれからの俳優さんなんですな。

もし『シャザム!』が無かったら、代表作は海ドラ『CHUCK/チャック』のタイトルロール(役名=作品タイトルになってる主人公のこと)のチャック役だと、今でも紹介されていたはずです。そう、ザッカリー・リーヴァイって、ドラマのスターなんです。

『CHUCK』とは2007〜12年に放送されてたTVシリーズのスパイ・コメディ。ザッカリー・リーヴァイ演じる主人公のチャック君は、家電量販店のIT修理コーナーで働いてる冴えないモテないしがないヲタク青年。実家の子供部屋に住み続けてる典型的な“子供部屋おじさん”。それが、ひょんなことからスパイに機密情報のデータを脳にダウンロードされて“歩く人間国家最高機密”と化してしまう。大人としての責任を背負いきれてない中途半端な青年が、世界最高の頭脳を持ってしまう。で、監視と警護のため超絶美人CIA女スパイと屈強ゴリマッチョNSAエージェントが身辺に付き、日々、敵組織から襲撃されたり、また、脳に有益な知識があるんでミッションの現場に同行させられる、といったコメディドラマでした。

ワタクシ、当時これ毎週、スーパー!ドラマTVさんで楽しく視聴してました。

毎週見てる、って、良い習慣でしたねぇ。今は配信のせいで「イッキ見」なんてことがやたらと持て囃されてますが、毎週決まった曜日に、そのドラマの世界にじっくり浸る。それを何年か続けると、もう、登場人物とマブダチ感覚になっちゃうんですね。ワタクシの世代ですと『ビバリーヒルズ高校/青春白書』ね。なんせアイツらとは、93年度卒業生で完全タメ歳(デビッド坊や以外)ですから!そんなアイツらと毎週土曜の晩にNHKで会い、奴らが高校卒業し、大学入り、大学卒業し、仕事始め、結婚し、子供できて、という人生を共に歩むと、完全に「架空のキャラだと思えない」「他人とは思えない」状態になります。これ、イッキ見だと無理ね。

いかん脱線。話を戻すと、『CHUCK』もそうだ、と言いたかった。

この、冴えないモテないヲタク青年、って存在が、当時は流行ってましてね。スパドラさんでは同じ時期に『ビッグバン☆セオリー』(2007〜19年)もやってて。あの頃は、日本でも「童貞臭い」、「童貞イジリ」なんて悪趣味ワードがしきりと頻発されていた、そんな愉快な時代でした。今は価値観がアップデートされて、あんましそれ言い過ぎるとお叱りを受けるという、お行儀の良い時代になっちゃいましたが…。

05年の『40歳の童貞男』(スティーヴ・カレル CV:島田敏)やら、07年の『スーパーバッド 童貞ウォーズ』(ジョナ・ヒル CV:桜井敏治、マイケル・セラ CV:日野聡、クリストファー・ミンツ=プラッセ CV:阪口大助)あたりから始まったトレンドでした。90年代にも『アメリカン・パイ』シリーズや、さらにそれ以前には80年代の『ポーキーズ』シリーズや『グローイング・アップ』シリーズなんてな“モテない男子の初体験”系SEXコメディの系譜ってやつは存在しましたが、そこから派生し、単にモテないだけでなく、ゼロ年代には「ヲタク」という観点も組み入れ、そのライフスタイルや独特な内面も丹念に描き込んでいったんですな。で、いつしか“モテない男子の初体験”よりも“ヲタク男子の恋愛”を描くようになっていった。なんせ『ビッグバン☆セオリー』の邦題サブタイトルが「ギークなボクらの恋愛法則」でしたからね。チャックが勤める家電量販店でチャックが担当するITサービスカウンターの名はNerd Herdでしたが、英語だとギークとかナードとか呼ばれる「ヲタク」って存在が、ゼロ年代後半には旬だったんです。

あ、そういえば80年代には『ナーズの復讐』(ナーズはナードの複数形)という最高のヲタク映画シリーズもありましたっけ。シリーズ初期のVHSではナードの字幕に「ガリ勉」と当てており、まだヲタクという概念と用語が定着しておらず、「ガリ勉」と呼ぶしかなかった時代の映画です。このシリーズ、前職の頃にワタクシが発掘して日本に輸入しました。その視聴チャンスを逃したら今やなかなか見づらいとは思いますが、もし機会あれば是非!当時のサイトは ココ に残ってます。もう放送はしてませんよ?ただ、アメリカン・コメディ史のある系譜の起点となる重要作品なので、存在と題名は覚えといて損はないです。

いかんいかん、脱線を軌道修正しようとしてまた脱線してた。文章だけでなく会話しててもいつもこうなる病気なんです、ワタクシ。

とにかく『CHUCK』の話が本論。『CHUCK』を知ってて、チャック君が大人になりきれない子供部屋オジサンの役だと知ってると、『シャザム!』で子供が変身した大人の体のスーパーヒーロー(精神年齢はガキのまま)、スーパーパワーにはしゃぎまくり調子コキまくる主人公、大いなる力に大いなる幼児性が伴っちゃった、という役に、ザッカリー・リーヴァイが起用されたことには、とてもとても納得がいくのです。

もちろん『CHUCK』はワタクシ、ふきカエで見ておりました。これが本題。今回これを語りたかった。チャックと言えば、ザッカリー・リーヴァイと言えば、『CHUCK』見ていたファンにとっては、声は草尾毅さんなんですよ!映画俳優としてザッカリー・リーヴァイはまだまだ無名とか、まだFIXが固まってないとか、んなこた関係ない!! もう、ディラン・マッケイ=小杉十郎太、シェルドン・クーパー博士=安達貴英状態で、イッキ見ではなく毎週見て、一方的にマブダチ気分を抱いちゃってたドラマ視聴者にとっては、イコール草尾毅なんです!

だから、『シャザム!』新録版は、作りたかったのです。

せっかくだから『CHUCK』同窓会にしよう、だってザッカリー・リーヴァイ自身が代表作はまだ『CHUCK』しかなく、チャック役のイメージで『シャザム!』もキャスティング決まったとしか思えないから、『シャザム!』って『CHUCK』っぽくするのが正解なんでしょ!? ということで、今回『CHUCK』同窓会を目指します。CIA超絶美女スパイ役だった魏涼子さん、屈強ゴリマッチョNSAエージェント役だった山野井仁さん、チャックのダチでNerd Herdの変人キモオタ従業員役だった粟野志門さんをお招きして、何らかの役をお願いし、その配役を考える演出家にも『CHUCK』の早川陽一さんを起用、というリユニオンっぷり。海ドラ『CHUCK』を見てきた人のための『シャザム!』新録版。そう、これってつまり、アメリカ人観客・視聴者と同じ、本国感覚で楽しめる新録版、ってことですよね。

あと、ヴィランを務めるマーク・ストロングは加藤亮夫さんにお願いします。マーク・ストロングはFIXが固まっていない英国人ハリウッドスターですが、『裏切りのサーカス』と『キングスマン』シリーズで個人的に加藤さんのイメージを抱いてしまってますから。

飯森盛良のふきカエ考古学

と、ここまでが不肖ワタクシの構想でして、ここから先は早川ディレクター以下、ふきカエ制作のプロフェッショナル達に全てを委ね、ワタクシもいちファンとして出来上がりを楽しみに待つ、という、いつものいわゆる“丸投げ”な立場です。皆さんも、楽しみに待っててください!!

…と自信たっぷりに言いたいのは山々ですが、コロナ禍ですからねぇ…。何がどうなるか一寸先も見えないので、今の世の中もう100%断言は何もできません。くわばらくわばら…。感染症対策だけは徹底して収録に臨む所存でおります!

『シャザム!』© 2019 Warner Bros. Entertainment Inc. SHAZAM! and all related characters and elements are trademarks of and c DC Comics.

ザ・シネマ新録版『シャザム!』
→ ザ・シネマ 秋の吹き替え祭り特設ページ
プロデューサー:飯森盛良
翻訳:小寺陽子、演出:早川陽一
声の出演:草尾毅、加藤亮夫、魏涼子、山野井仁、粟野志門
放送予定日:2021年11月7日(日)夜9時~ほか