吉田Pのオススメふきカエル

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『龍は砂漠に吼え、科学者は火星に独り』

2016年は『スター・ウォーズ フォースの覚醒』の世界的大ヒットと共に幕を開けました。1月の時点で全米での興行収入はあの『アバター』を抜いて史上一位に。全世界でも19億ドルに迫る勢いで『タイタニック』を抜くのも時間の問題です。
もちろん日本でも爆発的なヒットで、興行収入の累計は100億円を突破。何度もリピートする熱狂的なファンに応えて、3DからIMAXまで上映形態の選択肢が多いのもヒットの一因でしょう。そのうちの多くの部分を吹替え版が占めているのも、この業界に関わる者として嬉しい限り。新進気鋭の若者から熟練のベテランまでが揃った声優陣の名演は必聴です。吹替え版を未見の方は、ぜひ劇場へ!

『ドラゴン・ブレイド』

吉田Pのオススメふきカエル

2月12日 全国ロードショー
監督:ダニエル・リー
出演:ジャッキー・チェン ジョン・キューザック
配給:ツイン
公式サイト:
dragon-blade.com

前漢時代のシルクロード。反逆者の汚名を着せられ西の辺境へ送られた警備隊司令官フォ・アンは、祖国から逃れてきたローマ帝国の将軍ルシウスと出会う。ローマでは執政官の息子ティベリウスが父を暗殺して実権を握り、邪魔者であるルシウスの命を狙っていた。国境を越えて友情を育むフォ・アンとルシウスだったが、中国侵略を目論むティベリウスが大軍を率いて間近に迫りつつあった。フォ・アンとルシウスは、強大なローマ帝国軍を阻むため、手を携えて戦うことを決意する…
 

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さて、ここからは新作の御紹介。世に吹替え版は数あれど、この人ほどオリジナルの俳優と吹替え声優が一心同体になっているのは他に例がないでしょう。
ジャッキー・チェン=石丸博也。
ジャッキー・チェンの日本でのデビューとなった『ドランクモンキー/酔拳』から数えて実に35年。「吹替え版が複数バージョンあっても、ジャッキーだけはどれも石丸氏」というのが常識で、延べ100回以上にわたってジャッキーの声を演じてきたのは、まさにギネス級の快挙です。巷の映画ファンにも「普段は字幕派だけどジャッキー映画だけは吹替えで観たい」という声の多いこと多いこと。これほど人口に膾炙した吹替え版というのも唯一無二です。

石丸氏には最近だと『ライジング・ドラゴン』でジャッキー役をお願いしたのですが、さすがにここまで付き合いが長いと「アテレコの最中でも(ジャッキーが)次に何やるか大体予想つくんだよねー」って、そりゃそうですわなー。「俺ももう若くないからアクションシーンが続くと息切れしちゃってさ。ちょっと前にジャッキーが〝これからは年齢相応にアクションばかりでない役も演じたい〟って言ってて、ああこれで少しは楽できるかと思ったら嘘ばっかり(笑)」とも仰ってましたが。

今回の『ドラゴン・ブレイド』吹替え版はその石丸ジャッキーに加え、ジョン・キューザック=家中宏、エイドリアン・ブロディ=宮本充というまさに鉄板のキャスト。さらに浪川大輔、水樹奈々、森川智之、立木文彦に井上喜久子お姉さま(永遠の17歳に向かってお姉さまは失礼か?)まで百花繚乱。「これ、もしかして字幕版は要らなくね?」と言いたくなるほどの豪華版です。必見。
(日本語吹替え版のスタッフ・キャストはこちら)

『オデッセイ』

吉田Pのオススメふきカエル

2月5日 全国ロードショー
監督:リドリー・スコット
出演:マット・デイモン ジェシカ・チャステイン
配給:20世紀FOX映画
公式サイト:
foxmovies-jp.com/odyssey/

火星での有人探査の最中、嵐に巻き込まれてしまった科学者のワトニー。仲間たちは緊急事態を脱するため、死亡したと推測されるワトニーを置いて探査船を発進させ、 火星を去ってしまう。しかしワトニーは奇跡的に死を免れていた。彼は少ない酸素と水、遮断された通信、わずか31日分の食料という絶望的環境の中で、生存のためにあらゆる手段を尽くしていく。次の探査船が火星にやってくるのは4年後。ワトニーはその日まで生き延びることができるのか…?
 

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「マット・デイモンを救うために、過去にハリウッドがいくら費やしてきたか」という面白い試算がありまして。要は今まで作られた〝マット・デイモンを救え〟映画の製作費を合計したものなんですが、まず『プライベート・ライアン』で7000万ドル。次に『インターステラー』で1億6500万ドル。そして今回の『オデッセイ』で1億ドル。計2億3500万ドルもの巨費が、彼ひとりを救うために投じられてきたのです。うわあ。そこまでしてもらえるなんて君は人間国宝か重要無形文化財か。その前にまず迷子になり過ぎだろう。何よりあなたジェイソン・ボーンなんだから、放っといてもそうそう死にそうに見えないんだけどなあ。火星人とか片手でひねり殺せそうだし。

そんな迷子癖のあるマット君が今回取り残されるのは火星。食料はもちろん水も酸素もない過酷な環境で、彼はどうやって生き延びるのか?『エイリアン』や『ブレードランナー』等、数々の名作を手掛けてきた名監督リドリー・スコットが放つSFエンターテインメント。今年のアカデミー賞で、作品賞・主演男優賞ほか多くの部門でノミネートされたのも当然と思える大作です。

日本語吹替え版でマットを演じるのは神奈延年さん。脇を林真里花、郷田ほづみほかの芸達者たちが固める中で、何と言っても嬉しいのは《ショーン・ビーン=磯部勉》!『007 ゴールデンアイ』からTVシリーズの『ミッシング』まで、ショーン・ビーンと言えば磯部さん。しかも、いつも悪役で「だいたい途中で死ぬ(本人談)」ショーンが、今回は何と主人公を救うべく奔走する地上スタッフという役どころ。つまりは『アポロ13』のエド・ハリス的な役回りで、なにそれいい人じゃん!初めキャストの中に彼の名前を見つけて「あ、絶対こいつが事故の原因だな」と予想したのを見事に裏切ってくれました。普段のショーンを磯部さんが吹替えると〝悪さ〟が二倍増しになると個人的には思ってるんですが、まさかの善人役となると、こりゃ今回はどうなるか見逃せません。もしかするとオリジナル版よりちょっと悪い人になってたりして(笑)…乞うご期待。
(日本語吹替え版のスタッフ・キャストはこちら)