『ジュラシック・ワールド』3部作がついにザ・シネマ新録版でコンプリート!ご出演の山寺宏一さん、園崎未恵さん、石見舞菜香さんにお話しを伺いました!
- 2025.7.19
- インタビュー・キングダム
ザ・シネマによる吹き替えファンのための特別企画“ザ・シネマ新録版”。
2025年2月に制作された『ジュラシック・ワールド ザ・シネマ新録版』が好評を得て、主人公オーウェン役(演:クリス・プラット)に“声優界のレジェンド”山寺宏一、ヒロインのクレア役(演:ブライス・ダラス・ハワード)に園崎未恵が続投してザ・シネマ新録版の第10弾となる『~炎の王国』『~新たなる支配者』を制作!
新たに物語に加わるメイジー役(演:イザベラ・サーモン)に石見舞菜香、その他、小野賢章、嶋村侑、加瀬康之、沢田敏子、菅生隆之、大塚芳忠、山像かおり、佐古真弓、大塚明夫、東地宏樹、魏涼子ら豪華声優陣が参加して『ジュラシック・ワールド』3部作がついに新録版でコンプリート!
その放送に先駆けて、山寺宏一さん、園崎未恵さん、石見舞菜香さんに今回の新録版の収録方法や役柄に対する想い等、貴重なお話しをたっぷり伺いました!
2025年2月に制作された『ジュラシック・ワールド ザ・シネマ新録版』が好評を得て、主人公オーウェン役(演:クリス・プラット)に“声優界のレジェンド”山寺宏一、ヒロインのクレア役(演:ブライス・ダラス・ハワード)に園崎未恵が続投してザ・シネマ新録版の第10弾となる『~炎の王国』『~新たなる支配者』を制作!
新たに物語に加わるメイジー役(演:イザベラ・サーモン)に石見舞菜香、その他、小野賢章、嶋村侑、加瀬康之、沢田敏子、菅生隆之、大塚芳忠、山像かおり、佐古真弓、大塚明夫、東地宏樹、魏涼子ら豪華声優陣が参加して『ジュラシック・ワールド』3部作がついに新録版でコンプリート!
その放送に先駆けて、山寺宏一さん、園崎未恵さん、石見舞菜香さんに今回の新録版の収録方法や役柄に対する想い等、貴重なお話しをたっぷり伺いました!
Q:ご自身の役について、どういう思いで演じられましたか?
山寺宏一さん(以下:山寺さん):大好きなシリーズに参加出来てうれしいです。以前にも担当したことがある、クリス・プラットさんが演じているオーウェンという役を演じることが出来たこともうれしいです。
このザ・シネマさんで制作された『ジュラシック・ワールド』の1作目の新録版の評判が良かったので、今回の2作目・3作目に繋がったとお伺いしています。(1作目でも共演した)園崎さんを始めとした皆さんのチームワークといいますか、相互作用の結果だと思いますが、これだけ声優冥利につきることはありません。
本当にうれしいことです。
園崎未恵さん(以下:園崎さん):ブライス・ダラス・ハワードさんを吹き替えいたしました。ブライスさんは彼女が初めて主役を演じた『ヴィレッジ』(2004)という作品のビデオ版の吹き替えを担当してから、その後も何作品かで演じさせていただいていますが、この『ジュラシック・ワールド』という3作品で、クレアというブライスさんが演じる人物の立ち位置や、ブライスさんの女優としてのキャリアが上がっていったりという部分に改めて寄り添うことが出来て本当にうれしかったです。
子供の頃にあった恐竜ブームから続いていて、前シリーズの『ジュラシック・パーク』も大好きでした。そんな気持ちで観ていた映画に自分が関わることが出来て、しかもよくご一緒させていただいている女優さんを演じることが出来て本当にうれしく、光栄でした。
石見舞菜香さん(以下:石見さん):メイジー役を演じさせていただきました石見舞菜香です。
私自身、実写映画の吹き替えのお仕事が初めての作品でした。この『ジュラシック』シリーズには、幼い頃から家族で触れてきた作品で、そのような大作に幅広い観客の皆様に長く愛され続けている作品で、このメイジーという役を演じるというのは、すごくプレッシャーもありました。初めてのことが多くて、(アニメ作品と違う書き方の)台本の読み方も慣れない部分もありました。そこからのスタートでしたが、(今回ご一緒した)素晴らしい先輩方の背中を見せていただきながら、必死に向き合いました。
本当に一生忘れることのない、役になったなと思います。
Q:今作では皆さんご一緒のスタジオで、ご一緒に収録をされたと伺いましたがいかがでしたか?
山寺さん:1作目はほぼ一人で収録しました。2作目はご出演の声優さんがほぼ皆さんいらっしゃいまして一緒に収録を行いました。この3作目が、園崎さん、石見さんと一緒の3作品違う方法での収録でした。
前回の2作目の際に全員が集まったことに「久しぶりだな」という感覚になりました。
作品よって収録方法は様々で、その時代によっても違いがありましたが、吹き替えの仕事を始めた当初の感じを思い出した収録でした。
“ガヤ”といわれる後ろから聴こえる群衆の叫び声等の収録もあったのですが、そこにも参加しました。
コロナ禍を経たことで、忘れていたものを思い出した感覚です。
園崎さん:私たちも一生懸命叫び声を上げましたよ(笑)。
私も今回山寺さんと同じ収録方法でした。コロナ禍以降、1人ずつの収録が主流になりつつありましたが、私も吹き替えの仕事を始めた時は、出演者全員で収録して、頭から最後までを1日か2日を掛けるのが普通でした。その作品に出演者が同じ時を過ごす、ということをやっていたので、2作目のスタジオにキャストが揃っているのは、懐かしさとうれしさもあって楽しかったです。
作品ごとに色々な収録の仕方があるのですが、全員が集まるということのメリットは同じ作品の空気感を共有出来ることだと思います。個別で収録することにもメリットはあって、1人で収録するので、1つのセリフにとことんこだわることが出来ます。ですので、どちらが良いとは一概には言えないな、と思っています。
3作目の山寺さん、石見さん、私の“家族”で収録するということで、劇中の行動も共有することが出来て良かったです。
3作違う収録方法だったことで、シリーズの良さを改めて感じることも出来ました。
石見さん:緊張もすごくありましたが、現場に入り込むことが出来ました。でも1人で練習しているのとは全く違う感覚もありましたし、原音があって、その原音を聴きながら、マイクの位置の確認や、掛け合う相手のセリフも聴きながら収録するというのは、やったことはないのですが車の運転のようでした(笑)。
テンポ感もアニメのアフレコとは違った難しさを感じました。
呼吸についても、キャストの皆さんが、画面の役者さんにあわせて入れられるのですが、その呼吸にも感情を込められるというか、息1つでこんなにも情報量を加えられるということに衝撃を感じ、圧倒されていました。2作目の『~炎の王国』から登場するメイジーという役でしたが、そのような役をいただいているので、きちんと演じなければという気持ちで臨みました。

Q:3人での収録はいかがでしたか?
石見さん:ずっと緊張していて、汗が止まらない感じだったんですが、山寺さん、園崎さんのお2方が、私の名前を呼んで話しかけてくださって、温かいお2人とご一緒させていただけたことが、本当にありがたかったです。
山寺さん:本当はもっともっとおしゃべりもしながら収録したら楽しいですが、今回はそんな暇もないくらいスムーズに進みました。
もっと昔は収録方法も含めて、セリフが被ったりするところもよりアバウトなこともありましたが、現在は音質も良くなり、技術的なこともあり、別々に収録することが多いのですが、今回のように一緒にテストでもお互いのセリフを生で聴きながら収録出来るというのはやはりうれしいです。
オリジナルの原音を相手役だと思って演じることも出来るのですが、日本語の共演者の声を聴けるというのはやはり大事です。
園崎さん:実は、山寺さんとは長いお付き合いになっていると思うのですが、今回のようにスタジオでご一緒したのは初めてだったのです(山寺さんも驚く)。
声優養成所(東京俳優生活協同組合)の大先輩でございまして、私の方が一方的に山寺さんというすごいスター声優さんを存じ上げておりました。
1回だけアニメのスタジオでご一緒に入ったのですが、セリフの掛け合いもなく、帰りもバラバラでしたね。
一番初めに吹き替えでキャスト表に山寺さんと私の名前が並んだのが『オースティン・パワーズ:ゴールドメンバー』(2002)でした。劇場で上映される吹替版だったので個別収録をしたのですが、私の前に収録されていたのが山寺さんでした。映画をお好きな方は皆さんご存知だと思いますが『オースティン・パワーズ』のセリフ量ってすごく多いのです。山寺さんはそのセリフ量なのでお一人で2日間で収録となっていたはずでしたが、私がスタジオの前で待っていたら、中からスタッフの方が出て来て、「すみません、山寺さんの収録分が全部録り終わりそうなので、もう少し待ってもらってもいいですか?」って言われたのです。あの分量をこの時間で収録したのかと、ものすごく驚いたことを覚えています。
山寺さん:今回が初めて一緒に収録というのは驚きました。以前に洋画や海外ドラマの吹替版を観ていて、すごく上手い方がいて、あれもこれも園崎未恵さんだ、ということがありました。それで名前を憶えていましたが、なかなか収録現場で一緒になることがありませんでした。そんな時に養成所の師匠である方のお祝いの席があったのですが、その場に園崎さんがいらっしゃったのです。養成所だけでなく、師匠も同じでそこでも驚きました。
園崎さん:(笑)。山寺さんが収録した音声を聴きながら収録ということもあったのですが、スタジオで一緒ということは今回が初めてでした。
Q:園崎さんとの初めてのスタジオ収録はいかがでしたか?
山寺さん:頼もしく、何の心配もいりませんでした。
Q:石見さんとはご共演はありましたか?
山寺さん:アニメ作品のレギュラーでご一緒していましたが、実写映画の吹き替え収録が初めてと伺って驚きました。
石見さん:覚えていてくださってうれしいです(笑)。
Q:このシリーズの見どころ、魅力や好きなシーンがありましたら教えてください
山寺さん:見どころは多すぎて、お伝えするのが大変です。
恐竜の復活を表現した映像、最初の頃は恐竜が1頭出てきただけでも驚きでしたが、その映像の進化も楽しむことが出来ます。6作目となる『~新たなる支配者』へと向かっていくスケールの大きさ、色々な角度から楽しめる、社会的な問題すらも考えさせられる娯楽作で、アクション作品としても楽しめる色々な要素が詰め込まれた最高のエンターテインメントだと思います。
園崎さん:シリーズが公開されたその時々の話題となったニュース、DNAについてやクローンの問題が盛り込まれているのも印象に残っています。
もちろん恐竜が縦横無尽に走っている映像もありますが、登場人物1人1人の価値観の違いや考え方も描かれていて、観客の皆さんはどう思いますかという問いかけもあるのかなと思います。あと個人的な盛り上がりなのですが、この『~新たなる支配者』のタイトルロゴが本編内で回収されるので!その出方に興奮しました!
石見さん:子供が観てもワクワクドキドキすると思いますし、大人の方が観ても実際にある問題についても考えさせられますし、老若男女を問わず多くの方が色々な観方で楽しめるのがジュラシック・シリーズだと感じました。
Q:キャラクターの魅力は?
山寺さん:オーウェンという役はシリーズで初めて恐竜を手懐けたキャラクターで、1作目から登場するレジェンドキャラクターにも知れ渡っている、人と恐竜、動物の絆を完全ではないけれど築き始めた登場人物です。
誰よりもタフで勇気があって、優しさもユーモアも合わせ持っている、演じているクリス・プラットの魅力もプラスされた憧れるキャラクターで、大好きな役です。

園崎さん:クレアという人物が子供や人に対しての接し方がすごく成長する過程が描かれています。1作目では、姉の子供たちに対しての態度を見ても家族を持つことはしないのだろう、と思わせますが、3作目では、人間としても成長して、他人を家族として受け入れるまでに至っていく。そういう部分を少しでも感じ取れるように吹き替えするお芝居も出来たらいいと思って演じていました。
クレア役のブライス・ダラス・ハワードさんも外見もアクション俳優のようになっていって身体を張ったシーンも出て来て、そういうアクションをご自身でやられる女優さんの声を当てることが度々あるので、少し嬉しさのようなものもありました。そんな演技もしていてこの作品にかける情熱も見える部分も、この女優さんの魅力だと思いました。

石見さん:メイジーは初登場の時は子供でしたが、不安を感じる時期であったり、自分自身の存在や生まれた理由を考えるように自身に向き合った際に、1番恐竜側の目線を持っていて、自分と恐竜を重ねているようなシーンがあったのが印象的でした。
自分と同じ境遇に見える存在に優しく出来るというのはとても魅力的に思いますし、だからこそ、放っておけないというか、愛情をもらう存在になっていたのかなと思いました。

Q:スタジオで一緒に収録してみて、すごかったなと感じられたことはありますか?
園崎さん:私は、個人的に感じたことを申し上げますと、やはりスピーカーを通して聴くよりもずっと熱量を感じましたし、隣にいて、お芝居をなさっている圧力というのは、その場にいられたからこそ、見えるし、感じられたものだなと思いました。
山寺さん:石見さんに関してはメイジー役で2作目と3作目の間が4年あり、オーウェンとクレアの4年に比べると、変化が別人と言えるほどです。
前作と全く違う変化を見せないといけない部分を見事に演じていたと感じました。無理のない感じで、自然に演技をされていたので、そういった意味でもキャスティングされたのだろうと非常に納得しました。
自分と全然違う年齢の役柄というのはアニメに比べると、洋画は何倍も難しいのです。アニメーションでもリアルな表現のキャラクターはいますが、やはりある程度はデフォルメされていることが多く、違和感を感じにくくなっています。
園崎さん:石見さんの『~新たなる支配者』でのメイジーはティーンの微妙さ加減を表現されていてすごいなと思いました。
Q:石見さん、お2人と共演していかがでしたか?
石見さん:そうですね、本当に生まれた時からテレビや、映画館で聴いていたお声だったので、最初はびっくりや現実でないような感覚が多かったというか。生で台本や映像を見ながら、お芝居が吹き込まれていく様を見ることは、なんというか、すごく遠く感じてしまったというか、すごいことだなという風に思っていました。
先ほども言いましたが、呼吸を1つとっても違うし、話し方も、アニメで感じる部分とはまた違うと思いましたし、テストの時も本番の時も、スタジオブースの中で後ろから見ていると、常にもう完成された映像を見ているような気持ちになっていました。園崎さんが、今のお芝居が違うといった感じで、2作目の時にやり直しをされているのを見た時に、何を感じて、何が見えているのだろうかと思ってしまうくらいに、その状況が感動に繋がりました。山寺さんの演じるオーウェンは、息のお芝居がとても多いと思いましたが、その表現の説得力が違いました。言葉にするのは難しいのですが、圧倒されました。
山寺さん:十分褒めていただきました。この作品ではあまり長いセリフを喋ることは少ないので、いつか色々なテクニックを駆使して話す長ゼリフも聴いていただきたいです(笑)。
園崎さんの演技も見ていましたが、とてもきめが細かいです。すごく神経質に演じている感じではなく、普通に演じられて、それがきめ細かく、こんな風に演じようという意図を持って演じられていると思います。僕自身もそうありたいと思っていますので、近いものを勝手に感じています。
(演じる時に)癖がない方がいいと思っていますが、園崎さんにはその癖がないと思います。
色々な俳優を吹き替えしなきゃならないとなった場合、色々な役をやるためには、癖がないけどその演じる俳優の個性をきちんと掴むことが必要で、その個性を掴むことに長けているのだろうと思っています。
園崎さん:そこに関しては、どこかのおばあちゃんが、山寺さんが吹き替えた作品を観て、「この外人さん、日本語上手ね」って言ったんだよっていうお話を聞いて、私もそこを目指しているのです。私は映画が好きですし、字幕には字幕の文化の良さもあるし、でも吹き替えには吹き替えの面白さがあると思っています。私が目指している吹き替えは没入感だと思っていて。字幕を追っている間に面白いシーンを見逃してしまうことが悔しいんですね。ですので作品に集中して欲しいと思っているから、「この人、日本語が上手と思ったら吹替版だった」と思ってもらえるように私はなりたいとずっと思って、それを信念にして演じています。
Q:新録に取り組む難しさ、楽しさはありますか?
山寺さん:私たちは初めての作品でも新録版でも全力でその役にトライします。もちろん精神的なプレッシャーはあります。より多くの方に新録版を良いと思ってもらわなければ、やる意味もなくなってしまいます。最近では新録版の制作は本当に珍しいことになっていますので、そこに参加出来るのは冒頭にも言いました通り、本当にありがたいことです。プレッシャーというか責任もあるかと思いますが、演じる時にはベストを尽くすだけだと思っています。
園崎さん:やはりプレッシャーはもちろんありますし、その作品が話題作で、多くの観客がすでにある吹替版をご覧になっているという状況で、新録版を制作となった時に作品に対してのフィルターの違いをどうやったら楽しんでもらえるかな、という気持ちで臨んでいます。キャスティングが変わって、吹き替えを演出する方も違っていて。翻訳が変わればまた違いがあります。今回は同じ台本でしたが、その演出家さんや担当する声優さんからの修正で変わってきますし、修正がなく台本が全く同じでも、音声は全く違うものが出来上がります。
まずは観てくださる方に、「こんな楽しみ方もあるんだ」という新しい提示が出来たらいいなと考えますが、現場に入ったら担当する作品が新作でも、新録でも、目の前にある作品のいただいた役を全うして、お芝居を貫くということに尽きると思います。
石見さん:私が演じたメイジー役は、前のバージョンの吹き替えを担当されていたのが子役としても活躍されていた住田萌乃さんで、マッチされていたからこそ、私に務まるだろうか、というプレッシャーを感じることもあったのですが、真剣にこの役に向き合うことが出来ました。
Q:今回はスタジオで一緒に収録ということでしたが、これまでご一緒された方でこの方はすごかったという方はいらっしゃいますか?
山寺さん:大勢いらっしゃるので、どの方のお名前を出すかというのは難しいです。新人の頃から、レジェンドの方々とお仕事をご一緒させていただいてきたので、強いて挙げるとすれば、この『ジュラシック・ワールド』の前のシリーズになる『ジュラシック・パーク』にご出演の先輩方でしょうか。1作目では、グラント博士を富山敬さんがご担当されていました(※富山敬さんとの思い出のお話しは、2025年2月の『ジュラシック・ワールド ザ・シネマ新録版』山寺宏一さんインタビューをご覧ください)。3作目『ジュラシック・パークIII』での小川真司さん、『ジュラシック・パーク』と作ったハモンド役では永井一郎さんがご出演されており、大尊敬する先輩方で、いつもすごいなと、感じている皆さんでした。
自分自身は、先ほど園崎さんも言ってくれましたが「外国の方が日本語を話していたら」というところを目指して、息遣いやセリフの出し方も綿密にしているのですが、その世代の先輩方は、おそらく今ほどリハーサルや準備の時間もなかったと思いますし、現場で作品の映像を見て、すぐに収録、ということが多かったはずなので、綿密に(音や口の動きを)拾うことは出来なかったと思うのですが、ご自身のお芝居を持っておられるから、声の質が合っていなくても説得力を感じることが多いです。
今回、過去の作品『ジュラシック・パーク』から吹替版も観直して、先輩方の背中を見ていて感じたそのすごさっていうものを改めて勉強したい、考えたいというきっかけになりました。現在の収録方法に囚われ過ぎてもいけないと思いましたので、今と過去の両方のいいとこ取りを出来ればいいなと思いました。
園崎さん:私は「外国の方が日本語を話していたら」とおっしゃっていた山寺宏一さんという先輩を目指すというスタンスは変わらないです。(山寺さん:ありがとうございます。)
昔は吹替版がテレビ放送のみで、吹き替えの収録方法についても朝に集まって、まずは作品を皆で一緒に観て、テストをして本番収録という流れで作られていましたが、映っているオリジナル版の俳優さんが後ろを向いた途端にアドリブを入れてくるような、そんな瞬発力で制作された作品を観てきて、そういった作品が好きでこの業界に来たので、その世代の先輩方はやはりすごいと思うことが多かったです。
具体的な作品では、海外ドラマの「特攻野郎Aチーム」が好きでした。山寺さんがおっしゃっていた富山敬さん、山寺さんの師匠と伺った羽佐間道夫さんもご出演されていて、改めて観直しても、すごいな、という方ばかりがご出演されています。
テレビ東京で放送されていた「魔法のプリンセス ミンキーモモ」という作品が当時大好きで、その主人公を演じていた小山茉美さんが七変化のように多くの作品でご活躍なさるのを見て・聴いて、初めて声優という職業を意識しました。
いつもスピーカー越しに聴いていた先輩方のお声ですが、スタジオ収録でご一緒すると、数倍、声にツヤと圧があって本当にすごい。そんな現場に多く居合わせることが出来て本当にありがたいと思っています。お1人お1人挙げていったらキリがないのですが、いつか自分も憧れた先輩方のようになれたらいいなと思います。
石見さん:今回の作品で共演した皆さんが見せてくださった背中から、自分自身は何も出来ないような感覚になり、尊敬しますとか、目指しますというような言葉すら言ってはいけないような衝撃を受けた収録になりました。2日間の収録で本当に衝撃を受けた、というのが正直な気持ちです。
Q:石見さんに、今回実写映画の吹き替え初挑戦ということで、お2人と共演されて、今後の糧になったと思うことや、何かを得た感触があれば教えてください
石見さん:最初にお話をいただいた時の気持ちは恐怖に近いものがありました。(山寺さん、園崎さん:(笑))
初めてのことは1歩1歩やっていきたいという気持ちもあったのですが、実写の吹き替えでは、“ガヤ”や“モブキャラ”での参加経験すらありませんでした。今回の初めの1歩がとてつもなく大きすぎて、想像が出来なかった部分も多くありました。
実写映画の吹き替えの現場で長く活躍されている皆様の中に、そこに自分が入ることによって何かマイナスに働いてしまったらどうしようという気持ちももちろんありましたし、演じたことも、経験したこともない現場に行くことも、すごく勇気が必要でした。
現場に来たら、何回も何回も練習したことが何も反映されなくなってしまうような考えることややることが多すぎて衝撃の連続でしたが、こんなにも大きな一歩を踏ませていただけたのはすごく恵まれたことだなと思いました。
共演した皆さんが凄まじすぎて、憧れすら抱けないような感情ではありましたが、自分の肌で感じられたというか、受けられたというか、自分が今までアニメーションの畑でやってきたことと違うお芝居だったり、刺激をすごくいただいて、表現者としては、本当に想像していたよりも、まだまだ遠いところがあるんだなと、今後、何かを表現することに対して衝撃を覚えるぐらいの感覚を得られたことがありました。
そんな衝撃をくださったお2方とも、お芝居にはすごくストイックに向き合っていて、私のような、どこの馬の骨かわからない(山寺さん、園崎さん:(笑)そんなことはありません。)者にもお芝居に対してプラスな言葉を言ってくださるというのは、本当に凄いことだと思いますし、この現場で、この素晴らしい先輩と共演出来たということがこの先の糧になるなと思いました。
Q:山寺さん、園崎さん、先輩からの励ましのお言葉で締めていただければと思います
山寺さん:今、声優というのはすごく注目される職業になっています。でもほとんどの方はアニメーションで演じている声優さんに注目しているんじゃないでしょうか?
日本でオリジナルのアニメをゼロから制作して、海外にも発信していることは誇らしいし素晴らしいことだと思っています。
声で役を演じるという意味では、アニメと吹き替えが声優の仕事になると思いますので、もっと吹き替えをしている声優さんにも注目して欲しいと感じます。
アニメも吹き替えもお仕事をいただいていますが、例えばアニメでは目立つような役を演じていませんが、洋画吹き替えの世界ではなくてはならない声優さんが大勢いらっしゃいます。そういう方々が注目されるようになるといいなと思いますし、今回のように新録版で、インタビューをしていただけて、紹介いただけることに喜びを感じています。
石見さんに何を伝えたいかというと、“恐怖”を感じることなく、洋画吹き替えを多く演じて欲しい、洋画吹き替えにこだわって欲しいということです。
アニメの声優を目指してこの業界に入ってくる若い方も大勢いると思いますが、吹き替えを目指す方が増えて欲しいと思います。
園崎さん:私も職業を「声優です」と言うと、「何のアニメに出ているのですか?」と返されることが多いので、やはり声優はアニメというイメージなのだと感じていました。
映画は作品があって、その作品で俳優さんの顔が映っていて、やはり前面に出るのはオリジナルの俳優さんなので、そうなるのも仕方ないかなとも思っています。
吹き替えの仕事は影ながら作品を支え、海外の映画と日本の観客を繋ぐ大事な架け橋だとも思っています。
アニメの現場に入ると、吹き替えのお仕事をしたいという若手の方から相談されたりもするのですが、「いつでも君を待っているぞ」というスタンスでお話しを伺っています。
実は私も、初めての実写吹き替えのお仕事が小杉十郎太さんと矢島晶子さんが主演でその次に私の名前があるという現場だったので、石見さんのお話しでも少なからずわかることがありました。
石見さんには、このお仕事をずっと好きでいてくれて、担当する作品に変わらず愛を持って関わっていってもらえたらと思います。逆に私はアニメーションのお仕事はまだまだ難しいなと思うことがたくさんあるので、現場でご一緒したら優しくしてください(笑)。
山寺宏一さん(以下:山寺さん):大好きなシリーズに参加出来てうれしいです。以前にも担当したことがある、クリス・プラットさんが演じているオーウェンという役を演じることが出来たこともうれしいです。
このザ・シネマさんで制作された『ジュラシック・ワールド』の1作目の新録版の評判が良かったので、今回の2作目・3作目に繋がったとお伺いしています。(1作目でも共演した)園崎さんを始めとした皆さんのチームワークといいますか、相互作用の結果だと思いますが、これだけ声優冥利につきることはありません。
本当にうれしいことです。
園崎未恵さん(以下:園崎さん):ブライス・ダラス・ハワードさんを吹き替えいたしました。ブライスさんは彼女が初めて主役を演じた『ヴィレッジ』(2004)という作品のビデオ版の吹き替えを担当してから、その後も何作品かで演じさせていただいていますが、この『ジュラシック・ワールド』という3作品で、クレアというブライスさんが演じる人物の立ち位置や、ブライスさんの女優としてのキャリアが上がっていったりという部分に改めて寄り添うことが出来て本当にうれしかったです。
子供の頃にあった恐竜ブームから続いていて、前シリーズの『ジュラシック・パーク』も大好きでした。そんな気持ちで観ていた映画に自分が関わることが出来て、しかもよくご一緒させていただいている女優さんを演じることが出来て本当にうれしく、光栄でした。
石見舞菜香さん(以下:石見さん):メイジー役を演じさせていただきました石見舞菜香です。
私自身、実写映画の吹き替えのお仕事が初めての作品でした。この『ジュラシック』シリーズには、幼い頃から家族で触れてきた作品で、そのような大作に幅広い観客の皆様に長く愛され続けている作品で、このメイジーという役を演じるというのは、すごくプレッシャーもありました。初めてのことが多くて、(アニメ作品と違う書き方の)台本の読み方も慣れない部分もありました。そこからのスタートでしたが、(今回ご一緒した)素晴らしい先輩方の背中を見せていただきながら、必死に向き合いました。
本当に一生忘れることのない、役になったなと思います。
Q:今作では皆さんご一緒のスタジオで、ご一緒に収録をされたと伺いましたがいかがでしたか?
山寺さん:1作目はほぼ一人で収録しました。2作目はご出演の声優さんがほぼ皆さんいらっしゃいまして一緒に収録を行いました。この3作目が、園崎さん、石見さんと一緒の3作品違う方法での収録でした。
前回の2作目の際に全員が集まったことに「久しぶりだな」という感覚になりました。
作品よって収録方法は様々で、その時代によっても違いがありましたが、吹き替えの仕事を始めた当初の感じを思い出した収録でした。
“ガヤ”といわれる後ろから聴こえる群衆の叫び声等の収録もあったのですが、そこにも参加しました。
コロナ禍を経たことで、忘れていたものを思い出した感覚です。
園崎さん:私たちも一生懸命叫び声を上げましたよ(笑)。
私も今回山寺さんと同じ収録方法でした。コロナ禍以降、1人ずつの収録が主流になりつつありましたが、私も吹き替えの仕事を始めた時は、出演者全員で収録して、頭から最後までを1日か2日を掛けるのが普通でした。その作品に出演者が同じ時を過ごす、ということをやっていたので、2作目のスタジオにキャストが揃っているのは、懐かしさとうれしさもあって楽しかったです。
作品ごとに色々な収録の仕方があるのですが、全員が集まるということのメリットは同じ作品の空気感を共有出来ることだと思います。個別で収録することにもメリットはあって、1人で収録するので、1つのセリフにとことんこだわることが出来ます。ですので、どちらが良いとは一概には言えないな、と思っています。
3作目の山寺さん、石見さん、私の“家族”で収録するということで、劇中の行動も共有することが出来て良かったです。
3作違う収録方法だったことで、シリーズの良さを改めて感じることも出来ました。
石見さん:緊張もすごくありましたが、現場に入り込むことが出来ました。でも1人で練習しているのとは全く違う感覚もありましたし、原音があって、その原音を聴きながら、マイクの位置の確認や、掛け合う相手のセリフも聴きながら収録するというのは、やったことはないのですが車の運転のようでした(笑)。
テンポ感もアニメのアフレコとは違った難しさを感じました。
呼吸についても、キャストの皆さんが、画面の役者さんにあわせて入れられるのですが、その呼吸にも感情を込められるというか、息1つでこんなにも情報量を加えられるということに衝撃を感じ、圧倒されていました。2作目の『~炎の王国』から登場するメイジーという役でしたが、そのような役をいただいているので、きちんと演じなければという気持ちで臨みました。

Q:3人での収録はいかがでしたか?
石見さん:ずっと緊張していて、汗が止まらない感じだったんですが、山寺さん、園崎さんのお2方が、私の名前を呼んで話しかけてくださって、温かいお2人とご一緒させていただけたことが、本当にありがたかったです。
山寺さん:本当はもっともっとおしゃべりもしながら収録したら楽しいですが、今回はそんな暇もないくらいスムーズに進みました。
もっと昔は収録方法も含めて、セリフが被ったりするところもよりアバウトなこともありましたが、現在は音質も良くなり、技術的なこともあり、別々に収録することが多いのですが、今回のように一緒にテストでもお互いのセリフを生で聴きながら収録出来るというのはやはりうれしいです。
オリジナルの原音を相手役だと思って演じることも出来るのですが、日本語の共演者の声を聴けるというのはやはり大事です。
園崎さん:実は、山寺さんとは長いお付き合いになっていると思うのですが、今回のようにスタジオでご一緒したのは初めてだったのです(山寺さんも驚く)。
声優養成所(東京俳優生活協同組合)の大先輩でございまして、私の方が一方的に山寺さんというすごいスター声優さんを存じ上げておりました。
1回だけアニメのスタジオでご一緒に入ったのですが、セリフの掛け合いもなく、帰りもバラバラでしたね。
一番初めに吹き替えでキャスト表に山寺さんと私の名前が並んだのが『オースティン・パワーズ:ゴールドメンバー』(2002)でした。劇場で上映される吹替版だったので個別収録をしたのですが、私の前に収録されていたのが山寺さんでした。映画をお好きな方は皆さんご存知だと思いますが『オースティン・パワーズ』のセリフ量ってすごく多いのです。山寺さんはそのセリフ量なのでお一人で2日間で収録となっていたはずでしたが、私がスタジオの前で待っていたら、中からスタッフの方が出て来て、「すみません、山寺さんの収録分が全部録り終わりそうなので、もう少し待ってもらってもいいですか?」って言われたのです。あの分量をこの時間で収録したのかと、ものすごく驚いたことを覚えています。
山寺さん:今回が初めて一緒に収録というのは驚きました。以前に洋画や海外ドラマの吹替版を観ていて、すごく上手い方がいて、あれもこれも園崎未恵さんだ、ということがありました。それで名前を憶えていましたが、なかなか収録現場で一緒になることがありませんでした。そんな時に養成所の師匠である方のお祝いの席があったのですが、その場に園崎さんがいらっしゃったのです。養成所だけでなく、師匠も同じでそこでも驚きました。
園崎さん:(笑)。山寺さんが収録した音声を聴きながら収録ということもあったのですが、スタジオで一緒ということは今回が初めてでした。
Q:園崎さんとの初めてのスタジオ収録はいかがでしたか?
山寺さん:頼もしく、何の心配もいりませんでした。
Q:石見さんとはご共演はありましたか?
山寺さん:アニメ作品のレギュラーでご一緒していましたが、実写映画の吹き替え収録が初めてと伺って驚きました。
石見さん:覚えていてくださってうれしいです(笑)。
Q:このシリーズの見どころ、魅力や好きなシーンがありましたら教えてください
山寺さん:見どころは多すぎて、お伝えするのが大変です。
恐竜の復活を表現した映像、最初の頃は恐竜が1頭出てきただけでも驚きでしたが、その映像の進化も楽しむことが出来ます。6作目となる『~新たなる支配者』へと向かっていくスケールの大きさ、色々な角度から楽しめる、社会的な問題すらも考えさせられる娯楽作で、アクション作品としても楽しめる色々な要素が詰め込まれた最高のエンターテインメントだと思います。
園崎さん:シリーズが公開されたその時々の話題となったニュース、DNAについてやクローンの問題が盛り込まれているのも印象に残っています。
もちろん恐竜が縦横無尽に走っている映像もありますが、登場人物1人1人の価値観の違いや考え方も描かれていて、観客の皆さんはどう思いますかという問いかけもあるのかなと思います。あと個人的な盛り上がりなのですが、この『~新たなる支配者』のタイトルロゴが本編内で回収されるので!その出方に興奮しました!
石見さん:子供が観てもワクワクドキドキすると思いますし、大人の方が観ても実際にある問題についても考えさせられますし、老若男女を問わず多くの方が色々な観方で楽しめるのがジュラシック・シリーズだと感じました。
Q:キャラクターの魅力は?
山寺さん:オーウェンという役はシリーズで初めて恐竜を手懐けたキャラクターで、1作目から登場するレジェンドキャラクターにも知れ渡っている、人と恐竜、動物の絆を完全ではないけれど築き始めた登場人物です。
誰よりもタフで勇気があって、優しさもユーモアも合わせ持っている、演じているクリス・プラットの魅力もプラスされた憧れるキャラクターで、大好きな役です。

園崎さん:クレアという人物が子供や人に対しての接し方がすごく成長する過程が描かれています。1作目では、姉の子供たちに対しての態度を見ても家族を持つことはしないのだろう、と思わせますが、3作目では、人間としても成長して、他人を家族として受け入れるまでに至っていく。そういう部分を少しでも感じ取れるように吹き替えするお芝居も出来たらいいと思って演じていました。
クレア役のブライス・ダラス・ハワードさんも外見もアクション俳優のようになっていって身体を張ったシーンも出て来て、そういうアクションをご自身でやられる女優さんの声を当てることが度々あるので、少し嬉しさのようなものもありました。そんな演技もしていてこの作品にかける情熱も見える部分も、この女優さんの魅力だと思いました。

石見さん:メイジーは初登場の時は子供でしたが、不安を感じる時期であったり、自分自身の存在や生まれた理由を考えるように自身に向き合った際に、1番恐竜側の目線を持っていて、自分と恐竜を重ねているようなシーンがあったのが印象的でした。
自分と同じ境遇に見える存在に優しく出来るというのはとても魅力的に思いますし、だからこそ、放っておけないというか、愛情をもらう存在になっていたのかなと思いました。

Q:スタジオで一緒に収録してみて、すごかったなと感じられたことはありますか?
園崎さん:私は、個人的に感じたことを申し上げますと、やはりスピーカーを通して聴くよりもずっと熱量を感じましたし、隣にいて、お芝居をなさっている圧力というのは、その場にいられたからこそ、見えるし、感じられたものだなと思いました。
山寺さん:石見さんに関してはメイジー役で2作目と3作目の間が4年あり、オーウェンとクレアの4年に比べると、変化が別人と言えるほどです。
前作と全く違う変化を見せないといけない部分を見事に演じていたと感じました。無理のない感じで、自然に演技をされていたので、そういった意味でもキャスティングされたのだろうと非常に納得しました。
自分と全然違う年齢の役柄というのはアニメに比べると、洋画は何倍も難しいのです。アニメーションでもリアルな表現のキャラクターはいますが、やはりある程度はデフォルメされていることが多く、違和感を感じにくくなっています。
園崎さん:石見さんの『~新たなる支配者』でのメイジーはティーンの微妙さ加減を表現されていてすごいなと思いました。
Q:石見さん、お2人と共演していかがでしたか?
石見さん:そうですね、本当に生まれた時からテレビや、映画館で聴いていたお声だったので、最初はびっくりや現実でないような感覚が多かったというか。生で台本や映像を見ながら、お芝居が吹き込まれていく様を見ることは、なんというか、すごく遠く感じてしまったというか、すごいことだなという風に思っていました。
先ほども言いましたが、呼吸を1つとっても違うし、話し方も、アニメで感じる部分とはまた違うと思いましたし、テストの時も本番の時も、スタジオブースの中で後ろから見ていると、常にもう完成された映像を見ているような気持ちになっていました。園崎さんが、今のお芝居が違うといった感じで、2作目の時にやり直しをされているのを見た時に、何を感じて、何が見えているのだろうかと思ってしまうくらいに、その状況が感動に繋がりました。山寺さんの演じるオーウェンは、息のお芝居がとても多いと思いましたが、その表現の説得力が違いました。言葉にするのは難しいのですが、圧倒されました。
山寺さん:十分褒めていただきました。この作品ではあまり長いセリフを喋ることは少ないので、いつか色々なテクニックを駆使して話す長ゼリフも聴いていただきたいです(笑)。
園崎さんの演技も見ていましたが、とてもきめが細かいです。すごく神経質に演じている感じではなく、普通に演じられて、それがきめ細かく、こんな風に演じようという意図を持って演じられていると思います。僕自身もそうありたいと思っていますので、近いものを勝手に感じています。
(演じる時に)癖がない方がいいと思っていますが、園崎さんにはその癖がないと思います。
色々な俳優を吹き替えしなきゃならないとなった場合、色々な役をやるためには、癖がないけどその演じる俳優の個性をきちんと掴むことが必要で、その個性を掴むことに長けているのだろうと思っています。
園崎さん:そこに関しては、どこかのおばあちゃんが、山寺さんが吹き替えた作品を観て、「この外人さん、日本語上手ね」って言ったんだよっていうお話を聞いて、私もそこを目指しているのです。私は映画が好きですし、字幕には字幕の文化の良さもあるし、でも吹き替えには吹き替えの面白さがあると思っています。私が目指している吹き替えは没入感だと思っていて。字幕を追っている間に面白いシーンを見逃してしまうことが悔しいんですね。ですので作品に集中して欲しいと思っているから、「この人、日本語が上手と思ったら吹替版だった」と思ってもらえるように私はなりたいとずっと思って、それを信念にして演じています。
Q:新録に取り組む難しさ、楽しさはありますか?
山寺さん:私たちは初めての作品でも新録版でも全力でその役にトライします。もちろん精神的なプレッシャーはあります。より多くの方に新録版を良いと思ってもらわなければ、やる意味もなくなってしまいます。最近では新録版の制作は本当に珍しいことになっていますので、そこに参加出来るのは冒頭にも言いました通り、本当にありがたいことです。プレッシャーというか責任もあるかと思いますが、演じる時にはベストを尽くすだけだと思っています。
園崎さん:やはりプレッシャーはもちろんありますし、その作品が話題作で、多くの観客がすでにある吹替版をご覧になっているという状況で、新録版を制作となった時に作品に対してのフィルターの違いをどうやったら楽しんでもらえるかな、という気持ちで臨んでいます。キャスティングが変わって、吹き替えを演出する方も違っていて。翻訳が変わればまた違いがあります。今回は同じ台本でしたが、その演出家さんや担当する声優さんからの修正で変わってきますし、修正がなく台本が全く同じでも、音声は全く違うものが出来上がります。
まずは観てくださる方に、「こんな楽しみ方もあるんだ」という新しい提示が出来たらいいなと考えますが、現場に入ったら担当する作品が新作でも、新録でも、目の前にある作品のいただいた役を全うして、お芝居を貫くということに尽きると思います。
石見さん:私が演じたメイジー役は、前のバージョンの吹き替えを担当されていたのが子役としても活躍されていた住田萌乃さんで、マッチされていたからこそ、私に務まるだろうか、というプレッシャーを感じることもあったのですが、真剣にこの役に向き合うことが出来ました。
Q:今回はスタジオで一緒に収録ということでしたが、これまでご一緒された方でこの方はすごかったという方はいらっしゃいますか?
山寺さん:大勢いらっしゃるので、どの方のお名前を出すかというのは難しいです。新人の頃から、レジェンドの方々とお仕事をご一緒させていただいてきたので、強いて挙げるとすれば、この『ジュラシック・ワールド』の前のシリーズになる『ジュラシック・パーク』にご出演の先輩方でしょうか。1作目では、グラント博士を富山敬さんがご担当されていました(※富山敬さんとの思い出のお話しは、2025年2月の『ジュラシック・ワールド ザ・シネマ新録版』山寺宏一さんインタビューをご覧ください)。3作目『ジュラシック・パークIII』での小川真司さん、『ジュラシック・パーク』と作ったハモンド役では永井一郎さんがご出演されており、大尊敬する先輩方で、いつもすごいなと、感じている皆さんでした。
自分自身は、先ほど園崎さんも言ってくれましたが「外国の方が日本語を話していたら」というところを目指して、息遣いやセリフの出し方も綿密にしているのですが、その世代の先輩方は、おそらく今ほどリハーサルや準備の時間もなかったと思いますし、現場で作品の映像を見て、すぐに収録、ということが多かったはずなので、綿密に(音や口の動きを)拾うことは出来なかったと思うのですが、ご自身のお芝居を持っておられるから、声の質が合っていなくても説得力を感じることが多いです。
今回、過去の作品『ジュラシック・パーク』から吹替版も観直して、先輩方の背中を見ていて感じたそのすごさっていうものを改めて勉強したい、考えたいというきっかけになりました。現在の収録方法に囚われ過ぎてもいけないと思いましたので、今と過去の両方のいいとこ取りを出来ればいいなと思いました。
園崎さん:私は「外国の方が日本語を話していたら」とおっしゃっていた山寺宏一さんという先輩を目指すというスタンスは変わらないです。(山寺さん:ありがとうございます。)
昔は吹替版がテレビ放送のみで、吹き替えの収録方法についても朝に集まって、まずは作品を皆で一緒に観て、テストをして本番収録という流れで作られていましたが、映っているオリジナル版の俳優さんが後ろを向いた途端にアドリブを入れてくるような、そんな瞬発力で制作された作品を観てきて、そういった作品が好きでこの業界に来たので、その世代の先輩方はやはりすごいと思うことが多かったです。
具体的な作品では、海外ドラマの「特攻野郎Aチーム」が好きでした。山寺さんがおっしゃっていた富山敬さん、山寺さんの師匠と伺った羽佐間道夫さんもご出演されていて、改めて観直しても、すごいな、という方ばかりがご出演されています。
テレビ東京で放送されていた「魔法のプリンセス ミンキーモモ」という作品が当時大好きで、その主人公を演じていた小山茉美さんが七変化のように多くの作品でご活躍なさるのを見て・聴いて、初めて声優という職業を意識しました。
いつもスピーカー越しに聴いていた先輩方のお声ですが、スタジオ収録でご一緒すると、数倍、声にツヤと圧があって本当にすごい。そんな現場に多く居合わせることが出来て本当にありがたいと思っています。お1人お1人挙げていったらキリがないのですが、いつか自分も憧れた先輩方のようになれたらいいなと思います。
石見さん:今回の作品で共演した皆さんが見せてくださった背中から、自分自身は何も出来ないような感覚になり、尊敬しますとか、目指しますというような言葉すら言ってはいけないような衝撃を受けた収録になりました。2日間の収録で本当に衝撃を受けた、というのが正直な気持ちです。
Q:石見さんに、今回実写映画の吹き替え初挑戦ということで、お2人と共演されて、今後の糧になったと思うことや、何かを得た感触があれば教えてください
石見さん:最初にお話をいただいた時の気持ちは恐怖に近いものがありました。(山寺さん、園崎さん:(笑))
初めてのことは1歩1歩やっていきたいという気持ちもあったのですが、実写の吹き替えでは、“ガヤ”や“モブキャラ”での参加経験すらありませんでした。今回の初めの1歩がとてつもなく大きすぎて、想像が出来なかった部分も多くありました。
実写映画の吹き替えの現場で長く活躍されている皆様の中に、そこに自分が入ることによって何かマイナスに働いてしまったらどうしようという気持ちももちろんありましたし、演じたことも、経験したこともない現場に行くことも、すごく勇気が必要でした。
現場に来たら、何回も何回も練習したことが何も反映されなくなってしまうような考えることややることが多すぎて衝撃の連続でしたが、こんなにも大きな一歩を踏ませていただけたのはすごく恵まれたことだなと思いました。
共演した皆さんが凄まじすぎて、憧れすら抱けないような感情ではありましたが、自分の肌で感じられたというか、受けられたというか、自分が今までアニメーションの畑でやってきたことと違うお芝居だったり、刺激をすごくいただいて、表現者としては、本当に想像していたよりも、まだまだ遠いところがあるんだなと、今後、何かを表現することに対して衝撃を覚えるぐらいの感覚を得られたことがありました。
そんな衝撃をくださったお2方とも、お芝居にはすごくストイックに向き合っていて、私のような、どこの馬の骨かわからない(山寺さん、園崎さん:(笑)そんなことはありません。)者にもお芝居に対してプラスな言葉を言ってくださるというのは、本当に凄いことだと思いますし、この現場で、この素晴らしい先輩と共演出来たということがこの先の糧になるなと思いました。
Q:山寺さん、園崎さん、先輩からの励ましのお言葉で締めていただければと思います
山寺さん:今、声優というのはすごく注目される職業になっています。でもほとんどの方はアニメーションで演じている声優さんに注目しているんじゃないでしょうか?
日本でオリジナルのアニメをゼロから制作して、海外にも発信していることは誇らしいし素晴らしいことだと思っています。
声で役を演じるという意味では、アニメと吹き替えが声優の仕事になると思いますので、もっと吹き替えをしている声優さんにも注目して欲しいと感じます。
アニメも吹き替えもお仕事をいただいていますが、例えばアニメでは目立つような役を演じていませんが、洋画吹き替えの世界ではなくてはならない声優さんが大勢いらっしゃいます。そういう方々が注目されるようになるといいなと思いますし、今回のように新録版で、インタビューをしていただけて、紹介いただけることに喜びを感じています。
石見さんに何を伝えたいかというと、“恐怖”を感じることなく、洋画吹き替えを多く演じて欲しい、洋画吹き替えにこだわって欲しいということです。
アニメの声優を目指してこの業界に入ってくる若い方も大勢いると思いますが、吹き替えを目指す方が増えて欲しいと思います。
園崎さん:私も職業を「声優です」と言うと、「何のアニメに出ているのですか?」と返されることが多いので、やはり声優はアニメというイメージなのだと感じていました。
映画は作品があって、その作品で俳優さんの顔が映っていて、やはり前面に出るのはオリジナルの俳優さんなので、そうなるのも仕方ないかなとも思っています。
吹き替えの仕事は影ながら作品を支え、海外の映画と日本の観客を繋ぐ大事な架け橋だとも思っています。
アニメの現場に入ると、吹き替えのお仕事をしたいという若手の方から相談されたりもするのですが、「いつでも君を待っているぞ」というスタンスでお話しを伺っています。
実は私も、初めての実写吹き替えのお仕事が小杉十郎太さんと矢島晶子さんが主演でその次に私の名前があるという現場だったので、石見さんのお話しでも少なからずわかることがありました。
石見さんには、このお仕事をずっと好きでいてくれて、担当する作品に変わらず愛を持って関わっていってもらえたらと思います。逆に私はアニメーションのお仕事はまだまだ難しいなと思うことがたくさんあるので、現場でご一緒したら優しくしてください(笑)。
洋画専門チャンネル ザ・シネマ
『ジュラシック・ワールド【ザ・シネマ新録版】』

これからの放送予定:2025年
7/21(月・祝)夕方4:15~
7/25(金)夜6:45~
8/6(水)夜6:45~
8/17(日)夕方4:15~
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『ジュラシック・ワールド/炎の王国【ザ・シネマ新録版】』
これからの放送予定:2025年
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7/26(土)夜6:30~
8/7(木)夜6:30~
8/17(日)夜6:30~
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『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者【ザ・シネマ新録版】』
これからの放送予定:2025年
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