飯森盛良のふきカエ考古学

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小原乃梨子版『バーバレラ』エロ話から話題は次第にズレて、クローン大戦でのパルパティーン議長の非常時大権掌握の元ネタはこれだ!の巻

ワタクシの持ち企画で「激レア映画、買い付けてきました」という準レギュラー特集を今ウチで放送してるんですが、4月は『フェイズ IV/戦慄!昆虫パニック』堀勝之祐版と『燃える昆虫軍団』羽佐間道夫版と、あと『バーバレラ』をやります。これ全部ふきカエはソフト未収録ですよね?ちなみに字幕だとその他にも珍品をたくさん放送してるんですが、今回は、その『バーバレラ』から話を起こすことにしましょう。

飯森盛良のふきカエ考古学

バーバレラ』でタイトルロールを演じるジェーン・フォンダ。たまらんですな!彼女って、特に本作だとバレちゃうんですが、スタイルそんなに良くないんですよ(全編水着みたいな衣装なので)。足長くない。6頭身ぐらい。いわゆる「しずかちゃん体型」というやつ。でも、あんまり10頭身とかスタイル良すぎても「アバターか!」って感じでしょう?(3月、東地宏樹&小松由佳ふきカエ版『アバター』やります!) 日本男児の恋心を刺激する「しずかちゃん体型」、逆に良い!お声はもちろん小原乃梨子さん。いや別にそこ強引に関連づけようという意図はないです。

この映画ってお色気SFコメディで、バーバレラが①原始的SEX法とされる普通のSEXを初めて試す、②この未来時代に一般的なテレパシーSEXもする(後に『デモリションマン』がオマージュした。日曜洋画だとスライささきいさお×サンドラ・ブロック松本梨香で)、③快感悶絶拷問マシーンにかけられる、と眼福・耳福エロ珍場面が3箇所あり、全てで小原さん大熱演。いやはや、お疲れ様でした!

この作品以外で、前述の激レア特集で今回豊作なのが、アメリカン・ニューシネマ系です。未公開・未ソフト化作品『おたずね者キッド・ブルー/逃亡!列車強盗』を3月、ランボーの元ネタ『ソルジャー・ボーイ』を4月にお届けするのですが(字幕だけど)、3月30日(金)の『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』ロードショーを記念して、ここからは、それ関連の話に脱線させてください。

1970年前後に流行った「ニューシネマ」というのは、体制に反抗しようとあがく若者たちの物語でした。たいてい主人公は体制側に追われ、最後は虚しく犬死にする。それは当時、ベトナム戦争があって、若い男子だと戦争になんか行きたくないのに徴兵され、戦う理由もよく解らないまま戦死するかも、しかも結構エグい死に方する可能性すら…、という現実を前にして作られた映画の様式。一方で内地では、人種差別と闘う公民権運動が加熱して「長く暑い夏」と呼ばれる事態に先鋭化。平等や反戦を訴える人たちが体制側にボコボコに弾圧されるということも同時並行で起きていましたから、その現実も投影されてます。『おたずね者キッド・ブルー』と『ソルジャー・ボーイ』は、このニューシネマにおけるなかなかの良作・佳作。

で、ジェーン・フォンダに戻る。ニューシネマの代名詞『イージー☆ライダー』(これも絶賛放送中!字幕だが)のピーター・フォンダの姉で、同作の監督兼主演デニス・ホッパーは『おたずね者キッド・ブルー』の主役ということで、ニューシネマ界隈と相関関係の深い女優ですが、何より彼女自身が燃える反戦活動家でもありました。燃える反体制しずかちゃん体型!これに萌えずして誰に萌えろと!?

凄いことに交戦中の敵国・北ベトナムの首都ハノイまで乗り込んで行って、敵兵・敵国人に囲まれながら祖国アメリカを批判するという反戦パフォーマンスまでやった。それで付いたアダ名が「ハノイ・ジェーン」。『バーバレラ』の4年後です。

でもこの時、米軍爆撃機を撃ち落とすための敵の対空機関砲の前でニコニコとポーズをとる、という炎上騒ぎを起こしちゃったんですねぇ…いや、これは無いわ!本人も今となっては反省しきりですが(ココ)。

と、これはやりすぎにせよ、ニューシネマというジャンルが生まれ、セクシー女優が反体制の闘士になるほど当時から不評だったこのベトナム戦争。なんと、最初っから負けることは判りきっていた!そういう分析結果が出ていた!なのにそれを公表しないでメンツのためだけに歴代政権は戦争を継続してきた!と、いうことが記されている機密文書、通称「ペンタゴン・ペーパー」が内部告発でリークされ、とんでもない話だからスクープしようとした新聞社に「掲載したら軍事機密漏洩罪だ!逮捕すんぞゴルァ!!」と国家権力が圧力をかけてきて、さあどうする!?というスピルバーグ映画が、3月30日(金)公開の『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』なのであります。これトランプ時代の今、全員見なきゃダメなやつ!

う~ん、トム・ハンクスなので、何がなんでも“あの人”でふきカエも作ってほしいなぁ。ポリティカル・サスペンスってセリフの情報量多すぎて字幕だと話に絶対ついてけないから!ふきカエ以外に選択の余地ないっしょ!というのがワタクシの持論です。

なお、今作では「初めから負けると判っていたのに戦争を続けたことが問題だ」という一点に焦点を絞って描いているのですが(お話の整理術として大正解)、実はもう一つ大問題があり、今作はその点に一切触れていないので、この場を借りて不肖ワタクシが言及しときましょう。

ベトナム戦争の発端となった「トンキン湾事件」。これは「トンキン湾で北ベトナムの軍艦が米軍艦に攻撃を仕掛けてきたんで米軍艦が反撃した」という武力衝突のこと。怒り狂った米議会は圧倒的多数で「トンキン湾決議」を可決。この決議により時のジョンソン大統領は非常時大権を握り(クローン大戦におけるパルパティーン議長 CV:小林勝彦→稲垣隆史、的な)、これキッカケで米の政策が、親米の南ベトナムへの軍事支援→対北ベトナム直接武力行使へとエスカレート。米はベトナム戦争に本格突入していくことになったのですが、なんとそれが米側による自作自演だった、という驚愕の真相が「ペンタゴン・ペーパー」には記されていたのです!映画だとこのメガトン級の大問題に触れていない。

これは超大問題で、ただでさえ人気の無い、誰も行きたがらない、戦う意味も目的も解らないベトナム戦争でも、少なくとも「向こうが先に手を出したから反撃して戦争になったんだ」というのが話の前提だったはずなのに、それすらデッチ上げだと判明。まさにフェイクニュース!これにより戦争の正当性のカケラさえもが失われ、完全にヲワタ、という豆知識も脳内補完しながら、ぜひ『ペンタゴン・ペーパーズ』は見てください。

この『ペンタゴン・ペーパーズ』、終わり方も「オツなことすんねぇ~」というスマートさ。ちなみにウォーターゲート事件が発覚したのは、ウォーターゲート・ホテルに宿泊していた卓球全米代表フォレス・ガンプ選手(cv:金曜ロード版だと山ちゃん。ウチでも何度か流した)が夜中、「窓の向かいの部屋の懐中電灯がチラチラまぶしくて眠れないんですけど」とフロントにクレーム入れたのが発端だった、という件も思い出した上で見に行ってくださいね。

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