楠大典(ドム役)&高橋広樹(ブライアン役)が明かす 『ワイスピ』シリーズの魅力と一気見のポイント!ザ・シネマ「ワイスピ感謝祭 ~シリーズ7作一挙放送~」

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ザ・シネマ『ワイルド・スピード』

『ワイルド・スピード MEGA MAX』© 2011 Universal Studios. All Rights Reserved.

5月はザ・シネマで『ワイスピ』だ! シリーズ累計世界興収約60億ドルという、とてつもない大ヒット・カーアクション・シリーズが、5月の洋画専門CSチャンネル「ザ・シネマ」で字幕版5/1(日)、吹替え版5/21(土)~5/22(日)一挙放送! ラインナップは、主人公ドミニクとブライアンの出会いを描いた第1作『ワイルド・スピード』から、『ワイルド・スピード SKY MISSION』までの全7作品。特設ページではワイスピ関連グッズのプレゼント企画も開催中(5/31締切)。シリーズの魅力、収録時のエピソード、そして一気見の注目ポイントについて、吹替版メイン・キャストのおふたり、ドミニク役(ヴィン・ディーゼル)の楠大典さん、ブライアン役(ポール・ウォーカー)役の高橋広樹さんにたっぷりと語っていただきました。
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──『ワイルド・スピード』シリーズですが、2001年の第1作目から実に20年以上、おふたりが初めてドミニク(ヴィン・ディーゼル)役、ブライアン(ポール・ウォーカー)役として共演された第4作『ワイルド・スピード MAX』からももう13年経つんですけれども、ここまで映画ファンに愛されている、大ヒットしている理由をそれぞれどのように考えていらっしゃいますか?
 
楠大典さん(以下:):もともと私も車が好きでよく箱根とかにドライブ?に行っていたのでストリートレースのカーアクションというジャンルに興味がありました。大排気量のアメリカの車に日本の車スープラとかスカイラインでレースに挑む設定も胸熱でした。『~MAX』からはアクションも派手になり 出てくる車種も増えストーリーも絆をベースにより深く展開されてファン層が広がったのではないでしょうか。
 
高橋広樹さん(以下:高橋):「なぜ受けるのか?」の理由は、シリーズを重ねていくごとにどんどん演出が派手になっていくことがきっとあると思います。元々のファンの皆さんの期待を毎回上回っていく、ド肝を抜かせる部分が、継続していくエンターテインメントとして非常にクオリティが高いと思いますよね。
 
 また、新規ファンの方を多く獲得できているのは、やっぱりこの作品には「ファミリー」というテーマがあると思うんですけど、特に日本では、その「仲間を大切に思う」というコンセプトが受け入れられたんじゃないかなと思っています。  
 
──シリーズがここまで続くと思ってらっしゃいましたか?
 
:最初にこの作品に関わらせて頂いたのが2作目で、次が4作目からなのですが この時点で次もあればいいなとは思っていました。 どこまで続くとかは全く予想してませんでした。 ただこの世界観の面白さが伝わればいいなとは思っていました。
 
高橋:確かにシリーズものではありますけど、自分はその一作品ごと、関わらせていただくたびに「一期一会」だと思ってやらせていただいているので、その作品で演じている瞬間は、続くとも終わるともまったく考えもせずに、とにかくその作品に一球入魂する気持ちでやっていますので、そういう考えはとにかく当時はありませんでした。
 
──ドミニク役、ブライアン役として、おふたりは作品を一緒に重ねて来られたわけですが、劇中の彼らのように、楠さんと高橋さんの絆が深まってきたという感覚はあるのでしょうか?
 
:僕にとっては、(高橋さんは)元々本当に尊敬できる役者であったので、一緒にできるということは、僕自体は逆に任せてる感じというか、ものすごく安心できるという感覚なんです。出だした頃から、この人すごいなって思ってましたから。だから僕的には一緒にやって仲良くなるという以上に、同じ作品を一緒にできているという喜びがずっとありますよね。
 
高橋:僕は大典さんに初めてお会いしたのは結構前だったんですけど、それから時を経て、色んな作品でお会いするようになって、「ワイルド・スピードの大典さん」ではない大典さんを拝見する機会も色々あったんですが、その中で、年上ですし、ご存知の通り貫禄のある方ですし、非常に頼りがいのある方なのに、後輩に対してすごくフランクに接していただけるんですね。人前では非常にサービス精神旺盛だったり、先輩方の中でも非常に安心感を持って接することができるというか、色々甘えさせていただいている大好きな先輩です。
 
──おふたりが収録されてきたのは劇場公開に向けての吹替版ですが、収録はご一緒だったんですか? それともバラバラだったのでしょうか?
 
:このシリーズの場合は、メインのキャストはほとんど一緒に収録できますね。ですから広樹くんとは最後までずっと一緒でした。
 
高橋:そうですね、ドムとブライアンとミア(園崎未恵さん)、レッティ(甲斐田裕子さん)は一緒でしたね。あと、ホブス(小山力也さん)も結構一緒のことが多かったですね。ただ初参加の『~MAX』のときは僕ひとりだったような思い出があるんですよ。部分部分で抜き録りしたのかもしれないですけど。
 
──シリーズ中でお好きな作品と印象的なシーンを教えてください。
 
高橋:「一番印象に残っている作品」と聞かれてしまうと、(ポール・ウォーカーの遺作となった第7作)『~SKY MISSION』になりますよね。やっぱりそれはしょうがないですね。訃報を聞いてから、次の作品はどうなるんだと思っていたら、弟たちの代役とCGで作りきるという話が飛び込んできて、どういうことになっているんだろうと思いながら、収録するための素材を待っていた記憶があります。そういう節目の作品で車が空を飛ぶことになるってものすごいインパクトでしたし、もうこれ以上の「前作の上回り感」はない、もうこの次は宇宙に行くしかないんじゃないかって感じたのを覚えています。
 
 こういう破天荒さが、『ワイルド・スピード』シリーズの非常に面白い部分なんじゃないですかね。特定のシーンで言うと、戦車がトレーラーの中から吹っ飛んで出てくる『~EURO MISSION』(第6作)のシーンです。戦車がハイウェイでスポーツ・カーとチェイスする、しかもいい勝負をしてるっていうそのとんでもなさがインパクトあったのと、出てくる戦車も速そうなタイプではなく非常に巨大なタンクで、そのギャップが面白くて。なんというか「男気」みたいなものを製作スタッフ・チームから感じたなって(笑)。
 
:どの作品もそれぞれすごく面白いんですけど、このシリーズがすごいのは、必ず次の作品が「前作を超えてくる」ということなんですよね。だから『~MAX』よりも『~MEGA MAX』、『~MEGA MAX』よりも『~EURO MISSION』だったり。じゃあその次はどうなるんだ?と思ったら、『~SKY MISSION』でまたそれを超えてくる。それが毎回ですからね。やっぱり一番新しく撮られた作品が僕は一番すごいなと思っちゃうんですけど、確かに『~SKY MISSION』はすごかったですね。CGが多いのかなと思いきや、メイキングを見ると実際に車を上から落としたり、高級車を猛スピードで走らせてて、これ実際にやってるんだ!って後からも驚かされて、やっぱりすごいなって思いますよね。
 
 『~SKY MISSION』は、僕も観るたびに絶対泣くんですよね。曲もいいし、色んな想いが詰まってきてそうなってしまうんですけど、やっぱりすごくいい作品だったと思います。
 
:それもあると思いますけど、シナリオ的、ストーリー的にもグッときますし、やはりポール・ウォーカーがこの作品のときに亡くなってしまったというのも、心情と重なる部分がありますよね。僕の友達も『ワイルド・スピード』が好きな人がいますけど、本当にあの最後のシーン(ドミニクとブライアンが海沿いのワインディング・ロードで“最後のレース”に挑む)については言われますね、「すごく良かった。あの会話のセリフを言ってくれよ」って……そんなの言えるわけないじゃん!(笑) でもそれだけ本当に観た人みんなに響いてるんだなと思いますね。
 
──ブライアン役の高橋さんにお訊きしたいのですが、ご自分が現在進行形で吹替え役として関わっている俳優が、映画の完成前に突然亡くなってしまうなんて本当に稀有なお話だと思うんです。それを経験してしまったお気持ちや、そのポール・ウォーカーの遺作をいよいよ吹き替えるというときにどんな心境だったのかをお聞かせいただけますか?
 
高橋:訃報を最初に聞いたときは唖然としました。信じられなかったですね。当然そういう経験は初めてですし、他の声優の方もそんなに経験されていることではないと思いますけど、「心にぽっかり穴が開いた」ってこういうことを言うのかな?……と思いました。僕はご本人と面識があったわけではないですし、吹替えの担当としての関係でしかないはずなのに、急に大切な人が亡くなってしまった気がしたんですね。子供のころに親戚のおじさんが亡くなったときよりもポカーンとなりましたね。例えが下手ですみませんが、今まで握っていたロープが、なんか急に切れちゃったみたいな。「これで必然的に『ワイルド・スピード』シリーズとのお付き合いは終わりになるな、急だな」というのが、最初に思ったことですね。
 
 そうしたら、「いや、続編にはポール出てくるよ、ブライアン出てくるよ、どうやら弟が代役をやるらしい」という話が出てきて、そんなすごいことがあるのか?と。ヴィン・ディーゼルが何かのインタビューで、「やっぱり俺たちはファミリーなんだ、チームなんだ」というようなことをずっと語っていたんですけど、それがプロデューサーや監督から現場スタッフに至るまで、それこそ全員が「ファミリー」というものを熟成させていて、「ポールは出すんだ、ブライアンは出すんだ、だからポールの弟たちに声を掛けるぞ。金が掛かっても絶対に何とかするんだ!」って、そういう強い気持ちがあったんじゃないかと感じたんです。僕なんか部外者なのに、自分のことのように嬉しくなりましたし、そういう作品に関われていること自体に改めて感謝の気持ちが湧いてきました。すごく幸せな気持ちになったんですよね。
 
 大典さんがおっしゃっていたラスト・シーンは、初めて観たのはいただいた素材を家でチェックするときだったんですけども、色んな想いもありましたが、収録は、その作品をしっかり作るという一期一会の気持ちで集中して終わって、数日経って劇場公開前の試写室に、大典さんと(園崎)未恵さんと3人で行って隣り合って観たんですね。(ラスト・シーンで)ポールが出てきたときには、自分の中では亡くなったことに対する追悼の涙じゃなくて、自分がなにか卒業式を迎えたかのような……そういう感動が生まれてきて、不謹慎なのかもしれないですけど、僕自身がこれで『ワイルド・スピード』を卒業するんだ、寂しいな、でもここからがんばっていかなきゃみたいな……そういう気持ちになってしまったっていうのが正直な話です。ごめんなさい……ちょっと言葉に詰まってしまいました……。
 
──いえ……こちらも、お話を聞いていて、グッときてしまいました。楠さんは……いかがでしたか?
 
:本当に、何が起こったんだろう?というか、信じられないというか。ですから、次の作品を完成させると聞いても本当なの?っていう気持ちがすごく強くて。でも、『~SKY MISSION』を観ると、ちゃんとポールが出てくる。なんて言うんですかね、本当にポール・ウォーカーという役者は亡くなってしまったんですけど、映画の中ではずっと生き続けているというか……うん、ブライアンはもうずっと生きてるんだ!って思えたんです。
 
 最初に(CGを使って構成されたブライアンの出演シーンの)素材を観たときに、これは本当にすごい技術だなと思ったんですが、ちゃんとそのためのシナリオが書かれていて、並んで走っていた2人が二股に分かれているところで“それぞれの道を行く”みたいな形で別れていきますが、じゃあこれでもうブライアンは次からいなくなってるのか?というと、やっぱり(映画の中に)いるんですよね。
 
 そのことをみんなに話したら「そうだ」と言ってもらえたし、製作陣がそうしてくれていることが本当に嬉しくて、すごくすごく救われたんですね。吹替えをしている立場としては、広樹くんと「次の作品では今度こういうアクションがあるらしいぜ」みたいな会話はもうできないのかな?ってそのときすごく思いました。その寂しさはありましたし、あと僕はまだポールが本当に亡くなったというのが信じられないというか、信じたくないというのがあって、ブライアンは生きてるんだって感じられて、そこで僕は解決してるんです。
 
──ありがとうございます。今回ザ・シネマで放送されるのは『~SKY MISSION』までになりますから、観る方にとっても印象深いものになるだろうなと思います。今回のような一挙放送、一気見するときに注目しておくと面白いポイントやお勧めの見方はありますか?
 
:このシリーズには元々「ファミリー」というテーマがありますから、絆や登場人物の関係性がどうやって深くなっていくのかに注目すると面白いと思います。元々はドムとブライアンだって強盗と警察官という関係なわけだし、敵だった人物がどんどん仲間になったりする。これがどう繋がっていくのかという展開は、本当にうまくできているなと。その人間関係観ていくのもすごく面白いと思いますよね。
 
 あと車も、どんどんクオリティが高い車になっていったり。その中でドムはヴィンテージのものを改造していきますけど、そういう面も面白いですよね。さっきも言いましたけど、1作目より2作目、2作目より3作目って、どんどん面白くなってくのがすごいと思うんです、それを連続して観ることで噛み締めてもらいたいですよね。
 
──スケール感のアップ具合は比較したいところですし、あと「過去作のあそこに出ていた人が、新しい作品のここに出てくる」ということが多いじゃないですか。これは短期間に詰めて観た方が分かりやすいですよね。
 
高橋:一気見の面白さは、まさにそういうことだと思います。伏線の回収じゃないですけど、1本観ただけだと、登場人物の関係性は分かったとしても、その深みというか奥にある部分までは感じられなかったりすることがあるんじゃなかと思うんです。熱心なファンの方は別ですが。そういうところは、ぜひ1作目から追いかけて観ていっていただければ嬉しいです。
 
 カミングアウトしてしまうと(苦笑)、僕は第4作『~MAX』の仕事をするまで以前のシリーズ作を観ていなかったので、ハンが『~X3』であんなに活躍してたとは思ってなかったですから、最初からちゃんと追い掛けることで、新たな関係性の発見があると嬉しいですよね。「どうしてこの人たちは、こんなに“ファミリー”“ファミリー”って言ってるんだろう?」という疑問も、それが“ボッと出”というか、付け足したアイデンティティではなくて、しっかりと繋がっているものなんだよ、時間の流れの中で紡いできた関係性なんだよというのを捉えていただけたらいいなと思います。
 
──収録はご一緒にされてきたということですが、印象に残っているエピソードを教えていただけますか?
 
高橋:『~MAX』が2009年ですから、もう干支がひと回りして13年も経ってるんですね。ハリウッド映画の劇場版で、あんなブライアンのようないい役をやらせていただく機会がまだまだそんなになかった時期で、非常に緊張していたのがありました。それだけに、ちゃんとやんなきゃいけないな、しっかりやろう、ちゃんとがんばろうっていう気持ちが強すぎたんでしょうね。『ワイルド・スピード』シリーズは、基本はカー・チェイス、あるいはカー・アクションの話なので、周りの騒音がすごいんですよね。吹替えのときって、BGMも効果音も全部ありのままで、要は字幕版の映画を観て、そのままの音響に対して日本語の声をアテなくちゃいけないものですから、チェイス中のブライアンの息づかいが全然分からなくて。台本上では「息を吐く」って書いてあるけど、タイヤがキリキリうなりを上げてるだけで何の声も息も聞こえないぞ!?というのを2時間分めちゃくちゃ悩んだ記憶があります。
 
 最終的には、どうしても分からないから、タイヤの音だろうがブレーキ音だろうが、エンジン音だろうが、排気音だろうが、とにかく自分の顔が顔を映ってるときに聞こえてる音には何かしらやっておこうという意識が働いてですね。最初に話した通り、ディレクターさんと1対1で録った記憶があるんですが、他の人を邪魔する心配がなかったですから、ひたすらアドリブをやりまくった思い出があります。
 
:(爆笑)
 
高橋:収録するときは、台本に書かれていなくても「あそこにちょっとブライアンの息づかいがあるから、高橋くんやっておいて」と言われたらやるんですね。実は向こうの原音にはそんな息づかいは入ってないのに僕が何かやっちゃったときには、特に何も言われずに、公開のときにいつの間にかカットされることになるんですが、大は小を兼ねるじゃないですけど、足りないよりは多めにやっとく方がいいって意識が働いて、そうしておけばとりあえず怒られないだろう、真面目にやってる感じが出るだろうってアドリブをやりまくりましたね。
 
 アドリブは恐らくほとんど使われていないと思いますけど、本当にブレーキ音に混ざっちゃうぐらいの息づかいでも、これやっても聞こえないだろうなあという、ほんのちょっとだけ鼻をすすることなんかもアテレコではやらないといけない場合があるんですよ。
 
──その感覚は、徐々に慣れていかれたのですか?
 
高橋:そうなりましたね。僕の場合は、当時は外画アテレコ自体の経験がそんなになかったので、経験値が上がっていくに従ってできるようになっていったということなんですけど。足りないよりは多い方がいいだろうというのは安直な考えですけど、そんな時期にやらせていただいた作品でしたよね(笑)。
 
:『ワイルド・スピード』って、吹替えの声優陣は、みんなやっぱりアドリブを全部一生懸命入れるんですよ。言っていいのか言ってはいけないのか分からないですけど、そのほとんどは使われていないですけど、みんなやってますよ。
 
──吹替版でも、「ウッ」とか「アッ」っていううなり声やうめき声は演じる俳優本人たちの原音を使っていますね。あそこも全部、楠さんたちが演じている声を入れてくれればいいのに。
 
高橋:たとえ使われないアドリブであろうと、次のセリフへのテンションに繋げるために乗っかったりとかもありますから、決して不要なものでもないんです。ですから、「吹替えあるある」だと思っていただければ(笑)。
 
:使って欲しいなって、毎回思ってます(笑)。
 
──おふたりにとって『ワイルド・スピード』シリーズはどういう意味を持つものですか?
 
:これだけ長くやっていると、やっぱり本当に、僕も映画に出てるくらいに感じる「ファミリー」感なんですよ。2年に1回来るっていうか、オリンピックじゃないですけど、季節ごとに毎回それが来るのが当たり前のような。もう9作にまで行っていて、自分の生活の一部ぐらいになっているものですよね。
 
 声優さんは、みんな多分そうだと思うんですけど、吹替えをしている役者や作品、演じているアニメのキャラクターのことをすごく愛するものなんですよ。それに関する情報をすごく集めたりですとか、ファンの人たちにどういう風に思われてるんだろうとかすごく気になると思いますし、そういうことも含めて身体の一部になっていると思うんですよね。
 
 僕はヴィン・ディーゼルのドムが首に掛けているネックレスを普段からずっーとしてるんですけど(※首に掛けた劇中と同じクロスのネックレスを見せてくださる)、僕のマンションの地下駐車場の隣の人が、スカイラインのものすごいバリバリのGT-Rに乗ってるんですよ。彼もやっぱり『ワイルド・スピード』が大好きで、僕のネックレスを見つけて「おぉっ」って。外国の方なので、「僕はドムやってるんです」って言っても、どこまで信じてるか分からないけど(笑)。自分の車にステッカーを貼ってみたりですとか、やっぱりそれくらいこの作品に関しては、生活の一部になってきてるのかなという気持ちはありますね。
 
高橋:うまい言い方が見つからなくて申し訳ないですけど……僕の中では、「履歴書の中の卒業校のひとつ」みたいな存在ですね。『~SKY MISSION』の質問でも話しましたが、劇場で公開されるようなハリウッドの大作映画で、レギュラーものは後にも先にも『ワイルド・スピード』しかないんです。自分の経歴の中でもかなり大きな位置を占めるものですし、やっぱり『ワイスピ』をやらせていただいてきた中で、大典さんとのお付き合いであったり、園崎未恵さんや甲斐田裕子さんや(小山)力也さんほか色々な方と触れ合いがあって、僕も成長させていただいているという風に思っていますし、10年近くの時間を『ワイスピ』とともに過ごさせていただいて、そして華々しく卒業式まで迎えさせていただいたという、本当に感謝の気持ちでいっぱいの僕の母校だと思っているんです。そのときの気持ちのまま、初心に近い気持ちを忘れずに、アテレコのお仕事にこれからも向かっていきたい。そう思える自分の礎に近いものだと思っています。
 
──最後に、この一挙放送を楽しみにしてらっしゃる皆さんへのメッセージをお願いします。
 
:厳密に言うと、途中で時系列が前後していたりするんですが、初めて観る人はもちろん、観たことがある人でも、続けて観るということで新たな発見もすると思います。キャラクターたちがどう成長していくのか、演じる役者の変化に合わせて僕ら声優の吹替えの演技がどう変わっていっているとか、ちょっと違った見方も面白いのかなと思います。
 
 もちろんストーリー的にもどんどん豪華になったり、次の作品がより面白くなって面白くなってさらに面白くなっていくというのは、シリーズものでもかなり珍しいと思うんですよ。この『ワイルド・スピード』はやっぱりそういう作品だと僕は思っていますから、それを観て、体感して欲しいと思います。
 
高橋:楽しみにしてくださってるファンの皆さま、この機会にぜひもう一度『ワイルド・スピード』のすべてを改めて味わい尽くしていただきたいと思います。そしてこれを機会に初めて『ワイルド・スピード』に触れるという方、かなり派手なアクションもありますから、疲れます(笑)。非常に疲れる映画だと思いますが、その映画の中に流れているひと筋の「ファミリー」というものを、しっかり強く感じてもらえる映画だと思います。ぜひ吹替版でご覧にいただきますと、それがより日常的な言葉として自然に耳に入ってきて、心地よく観られるのかと思いますので、ファンの方はぜひ原音のヴィン・ディーゼルの声、ポール・ウォーカーの声を懐かしんでいただいて、そして、これから初めて観る方は吹替版でストーリーに没入していただければ嬉しいなと思います。
 
 楽しい映画ですので、ぜひ最後までゆっくりと、ときどき力の入った肩をほぐしながら……って、僕、ネガティブなことばっか言ってますね(苦笑)。肩の力を抜いて、ゆっくりとご覧いただければと思います。  

 

(取材・構成:村上健一)

 

ザ・シネマ『ワイルド・スピード』【楠 大典 プロフィール】
1967年生まれ/東京都出身。アミュレート所属。ヴィン・ディーゼルを筆頭に、ドウェイン・ジョンソン、ジェイミー・フォックス、イドリス・エルバ、コリン・ファレルなど数多くの吹替えを担当している。アニメの代表作は「TIGER & BUNNY」(ロックバイソン/アントニオ・ロペス役)、「テニスの王子様」(真田弦一郎役)ほか。
  

ザ・シネマ『ワイルド・スピード』【高橋広樹 プロフィール】
1974年生まれ/東京都出身。マック・ミック所属。1994年に「マクロス7」でデビュー。99年の「HUNTER×HUNTER」のヒソカ役などアニメ作品で注目を集め、2000年代から洋画吹替えへも活動の場を広げる。ポール・ウォーカー、ジェイク・ギレンホールらの吹替えを担当するほか、『ギャング・オブ・ニューヨーク』(日本テレビ版)のレオナルド・ディカプリオ、『トップガン』(日本テレビ版)のトム・クルーズ、『バットマン ビギンズ』(フジテレビ版)のクリスチャン・ベール役も務めている。