多田野曜平さんインタビュー

多田野さんインタビュー

ワーナー・ブラザースより爆走発売中のブルーレイ『マッドマックス トリロジー スーパーチャージャーエディション』。このブルーレイ用「マッドマックス2」「3」の新録バージョンに参加した多田野曜平さんにお話しを伺いました。

 
───今回、ブルーレイ用に「マッドマックス2」「3」の新録吹替えの収録が実施されましたが、多田野さんの演じたキャラクターについて教えてください。
「2」「3」では、同じ俳優(ブルース・スペンス)なのに違う役柄ということで、2作続けてブルース・スペンスを演じた声優さんはいらっしゃらないと思いますが、それを演じさせていただいたことに感謝します。ブルース・スペンスさんは現在も活躍されているそうですね。
「2」のジャイロ・キャプテンというキャラクターはとても人気がありますよね。日本のアニメにも似たキャラクターが出てきたことがあって、僕、吹替えたことがあるんですよ(2011年制作の『.hack//Quantum(ドットハック クワンタム)』のギーク役)。当時アニメのお仕事は少なかったのですが、突然その役をいただきましてね、その時は山田康雄さん風に演じていますので、そちらもぜひ観てください。
(※多田野さんは、「夕陽のガンマン」「荒野の用心棒」などの追加録音で、クリント・イーストウッドの声を山田康雄さんに近い声で演じています)
 
───今回の収録のご感想をお願いします。
ブルース・スペンスは顔の骨格も似ているので、演じる側としては全く違和感がなかったですね。「2」と「3」ではキャラクターが違いますので(「3」では“グライダーマン”というキャラ)、演じ分けは意識しました。「2」のジャイロ・キャプテンは僕はひとりで収録しましたが、「3」は安原さん以外の方と全員で収録しました。
 

───マックス役の安原義人さんは、事前の別録りでしたが、かけあいのシーンなどでの演技は問題なかったでしょうか。もしくは、難しい点などがありましたでしょうか。
安原さんに関しては、同じ事務所(テアトル・エコー)で公演も一緒にしていて、手に取るようにお互いのことがわかるというか、そんな関係なのでやりにくいことは無かったですね。でも収録が終わった後に「1」を観た時に、(安原さんが)こんなナイーブな話し方をしているんだ、えぇー!と驚きました。
安原さんとは舞台でも多く共演していますが、アフレコと舞台の違いはリアクションだと思いますね。コメディの舞台では、かけあいのリアクションで笑いを取っていくので、常に駆け引きがあります。アフレコは、セリフだけなのでリアクションで何かが起きるというのは少ないですね。そういう意味では、一人で収録しても、あまりやりにくさを感じないことが多いです。
僕は、原音を聞いて演じるクセがついているので、役柄の“間”を大事にしながら、安原さんや同世代の声優さんなら “こう来るかな”と、頭の中で考えて、声をのせています。

 
───羽田野千賀子さんの演出はいかがだったでしょうか。他の演出家との違いなどがあれば教えてください。(※羽田野さんは「怒りのデスロード」の吹替え演出も担当)
羽田野さんとの付き合いは長いですね。脇役ばかりの頃から良い役に抜擢してくれたディレクターさんの一人で、よく知っている仲です。いつも通りでしたけど、今回は多少優しかったかな?厳しいタイプの方ですが、思ったことをテンポ良くおっしゃるから気持ちいいですよね。
他の演出家さんとのエピソードでは、「下手だと思うなら、他の人が1回しか観ない所を100回観てこい」と言われたり、「映画をたくさん字幕で観なさい。吹替えで観るとマネになるから、原音のテンポを意識しなさい」と言われたことがありますね。

 
───今回、多田野さんが演じたキャラクターのここを観て欲しい、新録版のここを聴いてほしい、という点を教えてください。
「2」と「3」を同じ僕でやらせてもらいましたが、演じ分けの部分を観てください。
僕以外だと、安原さんに注目です。マックスを安原さんがどう演じたか、観て聴いてください。

 
マッドマックス予告編はこちら  ※多田野さんインタビューはさらに続きます!

 
───それでは、多田野さんの経歴についてお伺いいたします。まず、ご出身、ご生年と、お芝居の世界に入ったきっかけを教えてください。
福岡県出身で1962年3月10日生まれ。松田聖子さんと全く一緒です(笑)。芝居をめざすようになったのは、母親のせいです(笑)。「俳優はええよね、何回も結婚出来て」というのを聞いて。小学生の頃から、なんとなく漠然と思っていました。
その後、高校を卒業して、日活の養成所に入ったんですよ。面接の時に、「俳優になりたい」というのがどうしても言えなくて「監督になりたい」とウソをついたら、監督コースに入っちゃったんです(笑)。
でもやっぱり芝居をやりたくて、もったいなかったんですけど辞めてしまいました。
その後、琉球大学に入りまして沖縄に住むことになりました。当時の渋谷に小劇場でジァン・ジァンというのがありまして、支店の沖縄ジァン・ジァンが国際通りにあったんです。そこの劇団員募集を新聞で見たのがきっかけで、劇団に入って芝居を始めました。大学時代4年間、沖縄にいるのに地下の劇場で舞台にいて、ずーっと芝居をしていました。
でも、親には俳優になるとは言えなくて、トヨタに就職してセールスマンをしていました。だけど、どうしても俳優への道を諦められず……。あるとき、長崎ちゃんぽんのリンガーハットが東京で働く人を募集しているのを新聞で見まして、そっちに転職して東京勤務になったんです。東京に行って半年で、「俳優になりたいから仕事を辞める」と言ったら、親に殴られましたね(笑)。「お前、最初からそのつもりやったとやろがー」って、福岡なまりで(笑)。
リンガーハットの寮に住んでいましたが、辞めたら当然そこを出ることになりまして、劇団のオーディションもなかなか受からなかったこともあって、しばらくは車で寝泊まりしていましたね。環七をグルグル回ったりしながら。
友人にテアトル・エコーを薦められて、1988年に入って、1990年に正式に劇団員になりました。最初は声優になるつもりはなくて、映画に出るような俳優を目指していました。
ところが、劇団の新人紹介で舞台に上がったら、司会がヒッチコック(熊倉一雄さん)だったんですよ。こっちを見たらジョン・ウェイン(納谷悟朗さん)もいるし、あっちにはイーストウッド(山田康雄さん)もいて。僕はテレビで吹替えの洋画劇場を観て育ったので、“この人たちの声、みんな聞いたことある!”と、すごく驚きましたね。皆さん、すばらしい声で、くまのプーさん(八代駿さん)にひみつのアッコちゃん(太田淑子さん)、レレレのおじさん(槐柳二さん)までいらっしゃって、感激しました。
 
───最初に参加した吹替作品は覚えていらっしゃいますか?
声の仕事は『聖者の眠る街』(1993年制作、マット・ディロン主演)が最初でしたね。でもその年はそれ1本だけで、翌年が2本、3年目が4本で、“倍になったね”と冗談を言ってました。それが4年目には8本になって(笑)。
その後、コスモプロモーションという制作会社が、ビデオ用のB級映画やZ級映画の吹替えを制作していた時期がありまして、多部博之さんという演出家さんのもとで多くの作品に参加させていただきました。青山穣さん、山野井仁さん、遠藤純一さん、桐本琢也さん、先日亡くなった檀臣幸さんなど、そこで一緒に収録していた方たちと、Z級映画の吹替え集団という意味で“ゼッターズ”なんて名前をつけて、ワイワイと楽しく演じていました。そんなこともあって今に至りますね。
その頃の収録作品で印象に残っているのは、スペインのコメディで『モルタデロとフィレモン』。それから『マーダー・ライド・ショー』『悪魔の毒々モンスター/新世紀絶叫バトル』『アウトバーン・スピード』などですね(笑)。
 
───ご自身の吹替えた作品で気に入ったものがあれば教えてください。
『フィニアスとファーブ』(ハインツ・ドゥーフェンシュマーツ博士)、『シュガー・ラッシュ』(キャンディ大王/ターボ)、『ホワイトカラー』(モジー)、『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』(“マードック”)、『インターステラー』(TARS“ターズ”)などですね。
 
───多田野さんの考える「吹替版の魅力」を教えてください。(メリットについても)。
色々ありますが、声優さんの魅力だと思いますね。それに尽きるかなぁ。演じてる声優さんの魅力、そこに芸がある、という所が吹替えの良い所ですね。あとは、翻訳ですね。翻訳の妙というのも堪能して欲しいです。
 
───「いつも字幕で観ている」という方に、吹替版のアピールをお願いします。
声優さんがきっかけでも良いと思いますね。誰か好きな声優さんの吹替え作品を観て欲しいです。吹替版には、まず誰もがわかるように噛み砕いた翻訳があるので、説明が不足している字幕のせいで映画の内容に追いつけなかった、ということがありません。そういうことをしないのが吹替えのいい所だと思います。説明はいらない、字幕でいい、という人にも、さっきも言いましたが、声優さんの“芸”を観るという観点で楽しんで欲しいですね。僕も、もっと芸を磨いて、あの人の声をここで聴きたいという、そんな俳優になりたいです。
 
───今後声をアテてみたい海外の俳優さんはいますか?
とにかく主役がやりたいです! WOWOWさんで放送されている『ボードウォーク・エンパイア 欲望の街』(2010年から放送のドラマ)では主演のスティーブ・ブシェミを吹替えているのですが、DVD化されていないのが残念です!
 
───「ふきカエル大作戦」サイトは声優志望の方にも多くご覧いただいていますが、そういう方たちへの一言をお願いいたします。
気合い入れて頑張って下さい。但し,チビハゲ小動物エイリアン系の仕事は取らないでね(笑)

多田野さんインタビュー

 
───今日のTシャツについて。
ファンクラブの方にいただいたものです。これで電車に乗るのすごく勇気がいるんですよ!(爆笑)
 

 
 
 
 
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