飯森盛良のふきカエ考古学

iimori_reviewtop500×150

ホントかよ!? ブルース・ウィリスのアクション映画はゴールデン洋画の村野武範版で見た人が多い仮説、の巻!

まずワタクシとは一切無関係の、ビタイチ金ももらってない件で、宣伝から。昨日ツイッターで知ったんですけど『ジェミニマン』って映画、ウィル・スミスが自分のクローンと戦うって内容らしくて、なんですって?一人二役のウィルスミのふきカエを、山ちゃんと江原さんがやるんですか?

最高かよ!正しい!!!! 目の前で正義が行われるのを目の当たりにできるって、なんて気持ちが良い事なんでしょう!「山寺ウィルvs江原ウィル」なんてコピーのポスターまで作ってるんですよ?これを企画した人、マジで尊敬します!

これ申し訳ないけど、ふきカエのこのキャスティングが無かったら、個人の趣味的には積極的に見る気は起きなかったかもしれない作品ですが、これで俄然見たい秋映画のトップに躍り出ましたね!10月25日から全国公開だそうです。

飯森盛良のふきカエ考古学

『ジェミニマン』
■監督:アン・リー(『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』)
■製作:ジェリー・ブラッカイマー(『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ)
■出演:ウィル・スミス、メアリー・エリザベス・ウィンステッド、クライブ・オーウェン、ベネディクト・ウォン
■配給:東和ピクチャーズ

ウィルスミといえば『フォーカス』という映画では、ウィルスミのポスターを、コスプレしメイクしたさかなクンが、誰もが思わず「ギョギョっ!」と言うしかない完成度で完コピ再現、という、ふきカエとは無関係ながら優れた宣伝が過去にもありました。その画像は著作権の関係でここに載せられないので、各自ご勝手に「フォーカス さかなクン」でググって見てみて。ウィルスミには宣伝マンの善の心と叡智を呼び覚ます何かがある!

興奮と歓喜のあまりの余談はこれぐらいにしましょう。ザ・シネマにて9月にお届けする『ダイ・ハード』についてが今回の本題です。

いや、今年これまでに1から、5こと『ラスト・デイ』まで、すべて樋浦勉バージョンですでにザ・シネマでお届けしてはいるんです。今や樋浦さんはブルース・ウィリスのFIXって印象で固まってきてますよね。内田直哉さんもですが内田さんは「ダイ・ハード」シリーズやられてません、シリーズ全作やられたのは樋浦さんだけなので、これをきちんと揃えてお届けするのは人としてマスト。

ただ、ブルース・ウィリスといえばかつては、テレ朝では故・野沢那智さんが担当されることも多かったですし、フジテレビの方では、ワタクシ個人にとってのブルース・ウィリスといえばこの声!な村野武範さんと決まっていたものです。

でもこれって、もしかしたら「ワタクシ個人」だけの話ではないかもしれません。

“数字持ってる”スターっているんですよ。今だとセガールとかは視聴率を手堅く獲れるスター。だったらセガール映画を多く揃えようかと、TV映画屋をやってれば誰しも考えるもの。TV映画屋の後輩としてワタクシが想像しますに、当時はブルース・ウィリスがその枠だったんじゃないでしょうか。で、手当たり次第にいろんな映画を流すよりも「ウチのチャンネルならブルースの新作をどこよりも早く見られます」みたく一定程度の色は付けたいとも、TV映画屋なら思うもの。その方が視聴者が居着いてくれますんで。

飯森盛良のふきカエ考古学

ブルース・ウィリスのアクション映画って、フジテレビのゴールデン洋画劇場がTV1stで流す率が高かったような気がするんですよ。もしそうだとすれば、それを視聴or録画したってご同輩は少なからずいるはず。2nd放送よりも1stを視聴・録画する傾向って、あるんじゃないでしょうか。「ブルース・ウィリスのアクション映画はCXゴールデン洋画にて村野声で見た人が多い」という仮説を、ここに提唱します!

『ダイ・ハード1』こそ日曜洋画が先で、ワタクシもこれは野沢那智バージョンをVHS録画し繰り返し見ましたが、前述の通りやはり1st放送がより視聴率を獲れるようでして、Wiki情報によると90年10月7日の1st放送テレ朝野沢版が29.0%と驚異的な数字で、2ndの92年4月4日フジ村野版は22.6%とのことです(それでも凄まじい視聴率ですが)。

これ以降は、フジのゴールデン洋画がブルース・ウィリスのアクション映画を村野武範さんのふきカエでTV1stで流すケースが多くなります。

1992年10月3日『ダイ・ハード2』
1995年7月22日『ラスト・ボーイスカウト』
1996年5月25日『ハドソン・ホーク』
1997年3月1日『スリー・リバーズ』
1998年4月4日『ダイ・ハード3』

1998年11月15日放送の『ラストマン・スタンディング』はテレ朝が1stとなり、もちろん野沢版で、これは淀長翁最期の解説ともなりました。

その後も2000年7月15日『12モンキーズ』、2002年6月15日『アルマゲドン』とフジ村野版は作られましたが、この頃から民放各局が同じ映画の自局バージョンふきカエをそれぞれ作るケースが減り、時おなじくして03年、かつてのゴールデン洋画は、映画だけを専門に流すわけではない柔軟な番組枠へと生まれ変わり(それが今日の『土曜プレミアム』へと続く)、フジ村野版はご無沙汰となっていきます…。

余談ながら、民放各局の慣習で、改編期には「合本(がっぽん)」という、期末の特番と期首の新番組のプレスリリースをぜんぶ合体させて一冊に綴じた広報冊子が、広報部とか宣伝部によって作られ、記者たちに配られました(今もあるのか?)。当時ワタクシもTV記者の端くれで、03年秋の改編期にフジテレビ広報さんでこの合本を貰い、めくってみると、土曜21時の映画枠を改め、映画含む何でもアリ枠にする、と書いてあるのを見つけ(お台場フジテレビの社屋を消すグランドイリュージョンの特番やる、とか書いてあったな)、ゆりかもめの中で青春の終わりをしみじみ感じ、軽くショックでした。

閑話休題。90年代、ブルース・ウィリスのアクション映画は、まずCXゴールデン洋画で、村野版で触れていた。地上波で20%も数字獲ったら、どんだけの人がお茶の間でそれを見てたことか!映画館やレンタルビデオの比ではありません、ケタが違う!ここ“字幕原理主義者”や“劇場体験サイコー学派”が見落としがちな大事なポイント。すいませんがワタクシ、異端の“TV洋画劇場至上論者”なもんで。TV普及前は話がまた違ってきますが、TVが家庭に普及してからは、日本人は、映画を、主に民放のTV洋画劇場で、ふきカエで見ていたのです。民放各局にTV洋画劇場があって15%とか獲ってた頃には。多くの洋画は、ふきカエの声と、解説者の名調子と、さらには当時のCMもセットで、日本人の思い出の中に残っているのです。

それを懐かしいっていう人、山ほどいますよね?その世代の者は、村野武範の声でしゃべるブルース・ウィリスを見ると、今でも一気にタイムスリップしちゃうんです。90年代のとある土曜の夜9時に。バブル真っ只中か、バブル崩壊後だとしても今より遥かに豊かで心配事の少なかった、あの頃に。当時はCMまでムっチャクチャ凝ってて豪華でした。アイレディース化粧品のCMまで、自動で脳内再生されちゃいます。

と、いうことで、お送りしようじゃありませんか!90年代に戻っていただこうじゃありませんか!「ダイ・ハード」シリーズ、CXゴールデン洋画村野版、1~3しか作られませんでしたのでその3本だけですが、9月、お届けしたいと思います。

放送は、9月17、18、19日の朝と、同じく9月の日曜日8、15、22日の晩です(すいませんね、土曜の晩にやりたかったのはやまやまなんですが、この懐かしふきカエ常設枠が日曜の夜なものでね)。

さあ、あの頃のサタデーナイトへ、Back to the 90’s!

そして、高島忠夫Forever! イエ~イ!(とはゴールデン洋画では言わなかったが)

© 1988 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

ザ・シネマ:作品詳細ページ
⇒『ダイ・ハード[ゴールデン洋画劇場版]』
⇒『ダイ・ハード2[ゴールデン洋画劇場版]』
⇒『ダイ・ハード3[ゴールデン洋画劇場版]』