飯森盛良のふきカエ考古学

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めくるめく“芸能人ふきカエ”のゴールデンな世界

飯森盛良のふきカエ考古学
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『(吹)トップガン』番組紹介ページ

この春(4月)、当チャンネルの懐かしふきカエ企画「厳選!ふきカエシネマ」で、『トップガン』を放送します。Wikiによると、05年の金曜ロードショー、09年の木曜洋画劇場最終回のバージョンもあるとのこと。ワタクシは未見です。

当年とって40歳のワタクシにとり、ふきカエ『トップガン』と言えば、やっぱり渡辺裕之版、89年ゴールデン洋画劇場バージョンなのであります!

ということで担当者の思い出優先で半私物化しておる企画ですので、4月にやるのは『トップガン』89年渡辺裕之版ゴールデン洋画劇場バージョンに決定しました。そうそう、以前の記事で言及し忘れましたが、「インチ」という、これまたどえらく旧式なテープがありまして、このバージョンはそいつでした。こいつから音声だけ拾ってきて、字幕の入っていないHDテープの絵にのっけて、HDふきカエ版としてお届けしよう、という、当チャンネルの十八番をまた4月にやろうという訳です。

ところで、いわゆる“芸能人ふきカエ”って、ふきカエファンの間で物議をかもすこともありますよね。芸能人にアテレコやらせれば後でマスコミ取材にも稼動してくれるので、記事になったりワイドショーで取り上げられたりするかも。だから芸能人にふきカエやらせたい、というパブリシティ戦略です。それで上手けりゃ誰からも文句は出ないんでしょうが、う〜ん、そうでもないか!?って場合も、けっこうありますよね…。

ピクサーのアニメは芸能人ふきカエでも上手いですなぁ。反対に、サツキとメイの父ちゃんなんかは、あの“普通っぽさ”が味になっていて、逆に味わい深いというパターン。プロの声優さんがプロの技術でやっていたら、あの朴訥で穏やかなキャラは表現できなかったのでは?

と、いちがいに否定したものでもない芸能人ふきカエですが、その芸能人ふきカエを名物にしていたのが、フジテレビのゴールデン洋画劇場だったのであります。

渡辺裕之さんのトム・クルーズ、というかコールサイン“マーベリック”。これが良いんですよ。最近すっかりワタクシもトムといえばCV:帝王で慣れちゃってる訳なんですが(トムってキャラクターなのか!?そりゃ「トム・クルーズ」というキャラですよ!)、素材チェックで四半世紀ぶりぐらいに激レア渡辺裕之トムを聞いてみると、懐かしい!そして、悪くない!というか良い!!

まず、89年当時、トムにFIXが立っていた、という印象がまだあまり無い頃ですよね。だからいろんな人がアテていた。そんな中での渡辺裕之さん起用だったのですが、マーベリックという、若造ながら、負けん気の強い、自信家、というキャラと、渡辺裕之さんの声が、この音源では奇跡のケミストリーを起こしている!声優が専門ではない渡辺さんの声の“素朴さ”が、技巧的に上手い声優さんがアテるよりも、「ったくぅマーベリックったらぁ〜、若造のくせに無理してトンガっちゃって、もぉ〜」感を、絶妙に醸し出している!まさしくケミストリーとしか言い様がない!

これぞ、ゴールデン洋画劇場ケミストリー、ゴールデン洋画劇場マジック、なのであります!リスペクトだぜ!!

ビートたけし版『Mr.Boo!』なんか今やレジェンドですよね。あと、以前、当チャンネルのこのふきカエ企画で、ゴールデン洋画劇場のエリオット・ネスCV:根津甚八版『アンタッチャブル』を入魂放送したことがあるのですが、これもまた実に良いふきカエでした(皆さんちゃんと録画してお手元に残していただけましたか?)。あと、あえて名前は伏せたい、とあるタイムトラベルSF映画三部作の1作目で、Wユージ版という毀誉褒貶あいなかばするゴールデン洋画の珍宝バージョンがあるですが、個人的には大好きでした!今だに麻婆豆腐のCMが流れるたびにDr.エメット・ブラウンの「1.21ジゴワット!」という叫び声が条件反射的に蘇ってくるぐらいです。

余談ですが、「ジゴワット」って何?ということにつきましては、大変面白いこぼれ話がありますので、ご存知ないという方は、各自「ジゴワット」でググってみてください。

と、語れば尽きぬゴールデン洋画劇場の懐かしい思い出。めくるめくケミストリーの数々。リスペクトだぜ!! いゃ〜、芸能人ふきカエって、案っ外いいものですね!(なぜか金曜風) ワタクシどもザ・シネマは、今後も芸能人ふきカエであっても、分け隔てせずに発掘してまいりますぞ。

とはいえ、芸能人さんの方で、黒歴史を恥じて封印しちゃってたりするケースもあるようなので(ゴールデン洋画版に限らず)、やるにはいつも以上に発掘に手間取ったりハードルが高かったりもするんですが…上等じゃあねえか!とりあえず、今度はテイタム・オニールvsクリスティ・マクニコルのロスト・バージン競争を描いた懐かしの『リトル・ダーリング』で、テイタムを柏原芳恵さんがアテたバージョンでもやったろか!と、素材の発掘とHD化準備に乗り出したところであります。続報は、進展ありましたら当チャンネルのふきカエFacebookにてお知らせしていきます。

最後に余談。『トップガン』って、戦闘機パイロットの話だと思ってませんか?あれ空軍ではなくて海軍の話なんですが、海軍の戦闘機乗りは「パイロット」と呼ばずに「アビエーター」と呼ぶんですよ、というトリビアを、以前当チャンネルのブログの方に長々と書いてますので、お目汚しながらお時間ある方はぜひご一読いただければ、長々書いた甲斐もあるというもの、嬉しい限りです。でも本当に長いんだなこれが…すみません。

あ、『トップガン』の中では、実は普通にわかりやすく「パイロット」とも言っちゃってます。日本語翻訳版だけではなくて原語でもそう言っている。でも、バイパー登場時のセリフGentlemen, you are the top 1% of all naval aviators. というセリフではちゃんと「アビエーター」と言っている。ここらへんは、字幕で原音で見てると気づくマニアックなポイントです。たまには字幕もいいもんですなぁ。

それでは、サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ(日曜風)。