花澤香菜さんインタビュー

花澤香菜さん
2011年3月『ブレードランナー』からスタートした、ザ・シネマ新録吹き替え版、ついに第7弾の放送が決定しました!
 
今回の作品は、1985年に制作されたアメリカ映画『セント・エルモス・ファイアー』!
制作当時、アメリカでも日本でも大人気だった“ブラット・パック”と呼ばれたYA(ヤング・アダルト)スターたちが豪華共演、後に日本でこの映画の設定をそのまま引用したドラマが制作されるなど、作られてから37年が経過した現在もその普遍的で共感を呼ぶ物語が多くの映画ファンに愛されている作品です。
 
ザ・シネマではそんな多くのファンを持つ作品の新録吹き替え版を、大活躍中の人気声優の皆さんを起用し制作!
 
80年代の名作青春映画が、吹き替えでどのようによみがえったのか。
新録版に参加のキャストの皆さんにインタビューを行いました!
インタビューのトリを飾っていただくのは、メア・ウィニンガム演じるウェンディ役の花澤香菜さん!
作品について、役作りについて、吹き替えについて、お話しをしていただきましたので、ぜひお読みください!
 
『セント・エルモス・ファイアー【ザ・シネマ新録版】』
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ふきカエルインタビュー:
花澤香菜さん(『セント・エルモス・ファイアー【ザ・シネマ新録版】』ウェンディ役・演:メア・ウィニンガム)
 
Q:作品をご覧になっていかがでしたか?
 
花澤香菜さん:こうしてまた新たに吹替えを作るというくらいですから、きっと皆さんから愛されている名作なんだろうなと思って、観るのを楽しみにしていました。私も大学に通っていましたが、大学時代のあの楽しかった感じと、卒業後の“私は何者になるんだろう……”というモヤモヤした感じがすごく共感できて、心がきゅーっとしました。でも、彼女たちがすごくパワフルで、楽しそうに描かれていますから、ノスタルジーに浸りながらも楽しく観られましたね。
 
Q:結婚しているのに遊び回っているビリーだったり、将来を考えている彼女がいるのに浮気ばかりのアレックだったり……今観ると、結構、え!?と思ってしまいますよね。
 
大分そうですよね、性に奔放すぎませんか?って(笑)。普通に薬物も出てきますし、タバコ吸いまくり、お酒飲みまくりの、今だったら考えられない感じのバーのあの雰囲気ですとか。でもあの時代はあの時代で、きっとああいう雰囲気が楽しかったんでしょうね。自分は(世代的に)触れたことがないので、そのカルチャー・ショックはありました。
 
Q:ウェンディ役を演じるに当たって、事前に気をつけたことやこだわったことを教えてください。
 
どういう感じで演じようかなって、家ですごく迷ったんです。彼女はそんなにビシバシものを言うタイプではないんですよね。内にこもった感じで演じることもできますし、普段の自分にも近い自然な声色を使うこともできますし。一番求められているはどこなのか分からないな、難しいな、と。やっぱり彼女は将来のことも含めて、目の前にあることと向き合って、自分でちゃんと選択していくんですよね。その芯の強さみたいなものを、“生”っぽく表現した方が説得力があるだろうなと思いました。なので、声としてはあまり作り込まない方がいいんじゃないかとやってみたら、ディレクターさんから「いい感じですね」と言われたので、方向性が合ってすごくよかったと思います。
そこまで感情の起伏が激しい子じゃないんですけど、何か言われたら、そのことに対してちゃんと思うことがある、それがちゃんと伝わるといいなと。ちょっとした“振れ幅”みたいなものは気にしつつやらせていただきました。
 
Q:事前にキャラクターをつかんでいって、それが現場でハマったときはどんなお気持ちですか?
 
それはもう、やったぜ!って感じですね(爆笑)。
ただ、本当に良くて何も言われないのか、言っても無駄だと思われてて何も言われないのか、その不安感はありますから、その辺は「ほんとに大丈夫ですか!?」って(笑)。でも、この『セント・エルモス・ファイアー』に関しては、イメージしていた通りでしたので、「良い」と言っていただけてよかったです。
 
Q:聴きどころですね。
 
そうですね、ウェンディちゃんには共感する女性が多いんじゃないかなと思います。彼女が一枚ずつ殻を破っていく感じは、ぜひ観ていただきたいなと思いますね。
 
Q:親の言うことを聞いている良い子でありながら、それとは別の想いがあって……でも、それをなかなか言い出せないという難しいキャラクターですよね。
 
家族も全然悪い人たちじゃないんですけどね。でも、悪気のない言葉に傷つけられるってあるじゃないですか。家族だからこそ言えないことも多いけど、そこを譲らずに、ちゃんと自分の想いを伝えられた彼女は偉いなと思います。
 
Q:先の金曜ロードショーでの『ローマの休日』もそうですが、往年の名作を現在活躍されている若手キャストで吹替えを新録するというのが旬ですが、こうした試みについてはどう感じられていますか?
 
普段のお仕事は新しい作品がほとんどですから、過去の名作をまた吹替える機会をいただけるのはありがたいなと思います。名作と言われるだけあって観てこられた人たちや、きっと自分の中で決まった声の人を想定してる方もいらっしゃると思うんですね。そういう人たちにも、「いいじゃん」と思ってもらえるような吹替えにしなければ、と臨んでいます。だから、ちょっと恐い気持ちもあります(笑)。
 
Q:この作品の出演者は80年代当時“YAスター”と呼ばれた若手人気実力派の面々で、仲が良かったのはもちろん、ライバル視したりもして切磋琢磨していたそうです。花澤さんたちの世代の声優さんの間でも、そうした関係性はあるのでしょうか?
 
昔から一緒に仕事をしてきている“戦友”みたいな人たちはいっぱいいますね。オーディションって、本当に宝くじに当たるようなもので、落ちるのは当たり前と思っていますから、自分が決まらなかったことはすごく悲しいですけど、だからといって「あの子が決まったの!?」となったりはしないですよ。それこそ一緒に吹替えしている方たちは本当に素敵な演技をされるな……と思いますし、ご一緒すると私もどんどん変わっていかないと、成長しないと、と思いますね。
 
Q:アニメ作品へのご出演が多いですが、洋画の仕事に向き合う場合でアニメと異なっている点を教えていただけますか?
 
吹替えの場合は、演じている役者さんと息づかいを合わせるというところが、アニメとはすごく違うところだと思います。アニメはセリフの尺(という制約)はありますけど、自分で想像するところもたくさんあったりするので。それに対して吹替えは……私はチェックにすごく時間が掛かるんですけど(苦笑)、ひとつ呼吸がズレちゃうと、そのままどんどんズレていっちゃって。でも、(役と)自然と気持ちが合っていくと、一緒に集中できたりして、そこが合うとやったー!という感じになります。
やっぱり生身の人間が演じているというところで、個人的に共感しやすかったりですとか、そこまで気持ちを自己発電しなくても、役が引っ張ってくれて溶け込んでいけたりするのはありますね。あと、私は日本人なので、ああいう身振り手振りや表情が豊かだったりする海外の役者さんに、普段のボソボソした感じの自分のしゃべりが合わないことが多くて、そこを違和感なく合わせていくことが最初はすごく難しいと思いました。

NHK教育テレビで放送されたシットコム「ゲームシェイカーズ」をやらせていただいた際に「ここまでやっていいんだ」と見えたときがあって、そこからは割とさじ加減が分かってきた感じですね。
 
Q:吹替版で映画を観る良さ、魅力は何だと思われますか?
 
ちっちゃい頃からテレビで吹替えの「フルハウス」なんかを観ながら育ってきたんですけど、例えば、画面を観てなくても吹替版って全然面白いんですよね(笑)。それってほんとにすごい技術だなと思います。そういう先輩たちとアニメの現場でお会いすると、キャラクターの輪郭がしっかりしていると感じるんです。字幕で観て、その作品自体を楽しむのと、吹替版で日本語の声のお芝居を楽しむ。その2種類の楽しみ方ができるのはすごいことだと思います。私は吹替えを聞くのが大好きだなあ……って、自分で思いますね。
 
Q:放送を楽しみにされている方に向けてメッセージをお願いします。
 
あの頃の年齢の、自分で色んなことを選択していかないといけなくて、それで未来が決まっちゃうかもしれないという不安が渦巻いているあの時期のことを思い出す作品だなとすごく思いました。みんなそれぞれ自分の問題に向き合って、ちゃんと前に進んでいく爽やかな物語になっていますから、観たことのない人も、どの世代の方でもきっと楽しめる作品だと思います。この作品が大好きな方も、新たな吹替えで楽しんでいただけたらと思います。

 

取材・文:村上健一

 
花澤香菜 プロフィール
2月25日生まれ、東京都出身。声優、女優、歌手として幅広く活躍。主なアニメ出演作品は『PSYCHO-PASS』シリーズの常守朱役、『鬼滅の刃』甘露寺蜜璃役、『化物語』千石撫子役など。吹き替えでは『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』カサンドラ役(エラ・ジェイ・バスコ)、『ランボー ラスト・ブラッド』ガブリエラ役(イヴェット・モンリール)などを担当。第9回(2014年度)声優アワード助演女優賞受賞。
 


 
ザ・シネマ
『セント・エルモス・ファイアー【ザ・シネマ新録版】』
声の出演:新祐樹、武内駿輔、畠中祐、ファイルーズあい、石川界人、早見沙織、花澤香菜

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