飯森盛良のふきカエ考古学

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ふきカエ版、人のふんどしで相撲スペシャル!の巻

まず前回の続報から。例の『愛すれど心さびしく』のふきカエ版放送は、無事実現の運びとなり、7月、ウチのチャンネルでやります!

まずそのご報告からいたしますが、TwitterFacebook上でも追っかけてくださっていた皆様には既報の内容です。この過程、逐一SNSで晒しながら進めていたもので。なので、後半はこの場にて初めてカミングアウトする新しいことも書きます。

さて、『愛すれど心さびしく』のふきカエ版放送のソロバン勘定、不測の事態も起きず無事に想定の範囲内におさまりました。何かでとんでもなくコストが発生しちゃったら無理かも、ってことを前回書いたのですが、それがなくて済んだ。

あと、これは聾唖者が主人公の映画なので、ふきカエ版であるにもかかわらず字幕がかなり入る映画なのですが、昭和51年3月28日の日曜洋画劇場のテープを見てみると、この字幕が手書きで、実に味わいがある書体。普通はこの元素材から音声だけいただいてきてHDもしくはせめてDVD画質ぐらいの綺麗な無字幕版の絵と合体させて、って作業をしてるんですが、今回はこの字幕の味、これもあわせて蘇らせたい!ということも前回は書きました。

で、手書き字幕専門家などこの世にいるのか?何屋さんに発注していいのやら見当もつかない状態だったので、無謀にも、最悪、自分で書くか!?ということを言っていたのですが、なんと後日、ダークボ大先輩がTwitterで助け舟を出してくださったんですね。どこに発注すればいいかご教授いただけたのです。

そうして発注して、無事に出来上がってきた字幕がこれです。はいドン!

飯森盛良のふきカエ考古学

見比べると昭和51年の日曜洋画劇場の字幕に非常に似せてプロの方が書いてくださってるんですが、これは自分では書けんわ!どうです?この筆跡のクセそっくり真似れますか?いやはや、ワタクシには全く無理だった。これを自分でやりかけなくて本当に良かったです。これが本編の絵の上にかぶさってきます。当時のブラウン管TVで見る洋画劇場の雰囲気、温もりまで、余すところなく再現できたんじゃないでしょうか。その雰囲気こそがけっこう重要な映画なんですよね、『愛すれど心さびしく』ってのは。

ダークボ大先輩のお力添えのおかげであります!

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さて、そんなこんなで毎月やっている、この懐かしの昭和ふきカエ発掘ですが、既報のことばかりでなく今後の予定などもここでカミングアウトしておきましょう。

まず8月、ちょっと番宣チックになってしまって恐縮ですが、この月はウチのチャンネル的には、ぶっちゃけ“人のふんどしで相撲スペシャル”とでも申しましょうか。1本目『ミスター・グッドバーを探して』は、これだけは自分達で、奇跡の“ダイアン・キートン=小柳ルミ子”音源というのを発掘してきて、こちらの方でHD化しました。これ、ふきカエだけでなく字幕版のDVDすら出てませんから、超弩級の大ネタでしょ!? と自画自賛。とはいえ、ま、再放送ですし、そもそも音源が昭和59年2月12日放送の日曜洋画劇場版ですんで、その時点で“人のふんどしで相撲とってる”わけなんですが、後の3本はもっとすごい。人のふんどしを二重にはめてるようなものなのです。

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飯森盛良のふきカエ考古学まずは『ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎』。これはどなた様のふんどしかと言うと、大WOWOW様のふんどしであります。WOWOWさんがやられていた「土曜吹替劇場」という、昔の地上波オンエア版ふきカエ音源に追加収録をして流してくれる、という、猛烈に志の高い、そして制作コストもかかりまくってるであろう大偉業があったのですが、それの記念すべき第1回だったやつ。昭和63年ゴールデン洋画劇場のカットされたバージョンに、WOWOWがかつてのキャストに再招集をかけて2013年に追加収録を敢行!それを、3年落ちでウチの方でオンエアしておりまして、これも再放送です。

そして、『夕陽のガンマン』と『続・夕陽のガンマン』は、畏れおおくも“帝王”こと大20世紀フォックス ホーム エンターテイメント様のふんどしであります。FOXホームエンタさんが2009年に出された『夕陽コレクターズBOX〜日本語吹替完声版』です。あちら様のサイトの売り文句をそのままコピペしてくると、

究極のノーカット日本語吹替音声を新収録!『夕陽のガンマン』音声追加尺40分、『続・夕陽のガンマン』音声追加尺57分 ファン念願!「もう字幕には切り替わらない」日本語吹替完声版
TV放送用吹替音声収録当時のベテラン声優陣を可能な限り起用し、全尺オリジナル吹替再現の極限まで挑んだ、ファン待望のノーカット補完・新録版!

ということで、イーストウッド山田康雄さん(追録:多田野曜平さん)、リー・ヴァン・クリーフ納谷悟朗さんご本人、ジャン・マリア・ヴォロンテ小林清志さんご本人、イーライ・ウォラック大塚周夫さんご本人と、凄い!凄い!凄い!凄い!凄い!凄い!凄い!凄すぎる!!! 漢だったら涙を流すべき状況だねこれは!と、もはや相田ケンスケばりに叫ぶしかない問答無用のキャストなのであります。

このふんどしも追加収録から7年落ちでお借りしてきて相撲とっちゃおうという(これはザ・シネマ初登場です)、この、手前どもの「他人のふんどし商法」。別名「ハイエナ商法」。まぁ、とにかく安い、価格破壊的に安いですから、手前どものこと、ふきカエ愛好家の諸兄諸姉におかれましては、どうか是非とも便利に使い倒してやっておくんなさい。ワタクシどもTV映画業界のファストフードかファストファッション的なポジションを目指しております。良い物を安く!

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とはいえハイエナ商法で人のふんどしでばかり相撲とってるのもナンですから、自分たちでも鋭意、貴重な音源の発掘に努めておりますぞ。ということで、ここから先は今、やっている、自分のふんどしの話。

で、それが、1976年製作のイギリス映画『さすらいの航海』です。

例によって、まだ決着していない、現在進行中の進捗状況などもこの場では包み隠さずカミングアウトしちゃいますので、書くだけ書いて放送実現せず、となっちゃう可能性もゼロではありませんが、悪しからずご了承ください。

これ、オールスター・キャストの歴史大作です。時は戦前。ドイツでユダヤ人迫害がエスカレートし、1,000人ほどのユダヤ人たちが豪華客船セントルイス号に乗って中米キューバに向けて脱出しますが、キューバが突然ユダヤ人入国お断りを表明したために、受け入れ先を失って“さすらいの航海”を続ける羽目に、というヘヴィーなお話。

世界には難民って人たちがいますよね。異国の地で一旗揚げたいとか、新しい可能性を求めて新天地を目指すとか。それで現地に帰化した人は、それは「移民」ですって。難民ってのは移民とは違います。そこにそのままとどまったら虐殺されるかもしれない、強姦されるかもしれない、奴隷にされるかもしれない、ってことで、戦火を逃れるとかの差し迫った事情で逃げてきた人たちが「難民」なのです。その受け入れを拒否するってのは、一体どういうことなのか? そうした問題は、このナチスによるユダヤ人迫害の当時にもありましたし、残念ながら今また、まさにアクチュアルな問題として、再燃してしまっているところであります。寒い時代だと思わんか?そんな2016年だからこそ、この作品は、見なきゃだめですぞ!

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飯森盛良のふきカエ考古学で、これのふきカエのテープ、大昔の「インチ」という形式で今では普通にかけることもできないほど旧式のテープが、どうやらあるらしい。台本だけはゲットして今、手元にあって見てますが、テレビ朝日「ホリデー洋画劇場」なる枠で、放送日「昭和60年5月3日(金)」とのこと。は? ホリデー洋画劇場? しかもテレ朝で金曜に? 謎だらけです。ゴールデン・ウィークの特別枠なのか、レギュラー枠なのか、よく判りません。こういう場合、はい、図書館に行って当時の新聞の縮刷版でラテ欄を調べれば一発で判るのですが、今回、現時点でこの原稿の〆切を2日オーバーしている夕方でございまして、ちょっと図書館行って調べ物するヒマがない…いやぁお恥ずかしいかぎり。一体どんな枠だったんでしょうねぇ。

キャストですが、フェイ・ダナウェイに小沢寿美恵さん、オスカー・ウェルナー田中信夫さん、マックス・フォン・シドー内藤武敏さん、マルコム・マクダウェル富山敬さん、キャサリン・ロス小宮和枝さん、オーソン・ウェルズ富田耕生さんと、外国人スター、日本人声優ともに、これぞまさしくオールスター・キャスト!この調子で書いていったら枚挙にいとまがないというぐらい、まだまだ有名どこが名を連ねています。またしても相田ケンスケ風に叫ぼうか。

これの古いテープがあるっていうので、いつもの通り、音をいただいてきて、それをHDの無字幕の映像に乗せてHDふきカエ版を作る、ってことができそうなんですが、現時点で、テープがあると記録上残っているがその記録は本当か?残っているとして状態は再生可能レベルか?(古すぎるんでビリビリで再生不可能であっても何も不思議じゃない) コストは総額でいかほどか?等々、未確定要因が多くて「放送決定」とこの場で安請け合いはまだまだできない状況です。

まぁ、少なくとも字幕版は9月にはやりますので、ふきカエができるか、できるとして、いつできるか、ということは、次回のこの場か、あるいは例によってウチのFacebookTwitterで逐一リアルタイムに開示してまいる所存であります。