『マッドマックス 怒りのデス・ロード[ザ・シネマ新録版]』 宮内敦士インタビュー&本田貴子コメント

こだわりの吹替版放送に力を入れて注目を集める洋画専門CSチャンネル「ザ・シネマ」が、『ブレードランナー ファイナル・カット』『プロメテウス』『LIFE!/ライフ』に続いて、大人気バイオレンス・アクション超大作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の吹替版新規録音を敢行!「ザ・シネマ新録版」が7月27日(土)および8月に放送されることが決定しました。

今回のふきカエルインタビューでは、収録を終えたばかりのマックス(トム・ハーディ)役・宮内敦士さん、イモータン・ジョー(ヒュー・キース=バーン)役・安原義人さんのインタビューに加え、フュリオサ(シャーリーズ・セロン)役・本田貴子さんのコメントを2回に分けてお届けします。なんて日だ! なんて最高の日なんだ!!

⇒安原義人さんインタビューはこちら
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●宮内敦士「新たなキャスティングと翻訳による新録で、劇場版とはひと味違う!」
宮内敦士インタビュー

──収録お疲れさまでした。宮内さんは『ダンケルク』や『チャイルド44 森に消えた子供たち』等の作品でトム・ハーディの吹替えを担当されてきましたが、今回の新録の話を聞いて、どのような感想を持たれましたか? また今回のハーディは、これまでとは違ったイメージだと思います。役作りについても教えてください。

嬉しかったですよね。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が公開されたときに、「もしかしたら僕に役が回ってくるかも?」という期待があったんですが、そうじゃない形になって、縁がなかったとがっかりしていたんです。それが4年経って、こういう新録というお話になって、やっぱり縁はあったんだ、これはがんばらないといけない、そう感じてやらせていただきましたね。

トム・ハーディは“カメレオン俳優”なんです。作品ごとに雰囲気がガラッと変わりますから、その作品ごとに、細かく言えばそのシーンごとに伝わってくるものが違いますし、それを受けて、こっちも繊細に芝居をしなきゃと思って、リハーサルをして臨みました。現場ではディレクターの木村絵理子さんの演出に非常に納得させられて……本当に助かりましたね。

──ディレクターさんとは、かなり入念に話し込まれて、演技の調整をされていましたね。

「セリフをしゃべる」と構えてしまうと、マックスが持っている粗さや孤独感、野蛮なところが削られてしまうんです、本当に。本能的に生きていて、誰も受け入れない、近づけないということを、最初に意識して芝居を組み立てていきました。声優はセリフでしか表現できないですから、矛盾するようですけど、セリフじゃないところの心の作り方が、この作品、この役者は特に難しいなと痛感しましたね(苦笑)。

──マーク・ラファロやカール・アーバンなど、宮内さんが演じてきた他の俳優と比べても、ハーディは難しいですか?

ええ、すごく演じにくいですよ。本当にリスペクトしている俳優なので、彼の芝居や心情を理解して、それが自然に声に乗ったらいいなと思って現場に臨んでいるんですが、本当に細かいところまで見て詰めておかないと、表現できない。その表現できる器が自分にあるかどうかも不安になるくらいです。

今回の作品で言えば、彼のセリフをよく聞かないとダメですね。ボソボソッと話しているのに、なにかすごく微妙に……優しいですとか、微妙に……怒っている、ですとか。現場に来てから気がついたこともありましたから、慌てました(笑)。

──メル・ギブソン主演の人気シリーズが30年ぶりに復活し、映画ファンを熱狂させた映画ですが、新たな『マッドマックス』の魅力は何だと思われますか?

トム・ハーディ主演になって、よりリアルになりましたよね。これまでの作品と違って、マックスがメインに出過ぎていない感じというか。ハーディが持っている佇まいが独特で、そのせいで周りの世界が映えるという印象を持ちました。メル・ギブソンの作品もよかったですけど、別物ではないけど、ひと味変わって世界観がワンランク上がったというか。それにジョージ・ミラー監督は、コマ落としが本当に上手ですよね。今回もふんだんに使っていて、あのスピード感がたまらないです。

自分が顔出しの役者として現場にいて演じるとしたら、「これどうやってるんだ!?」というワクワクするシーンばっかり。面白いなと思いました。

──最近はCSやBSチャンネルでの吹替版新録や追加録音が多いですが、どういう印象をお持ちですか?

大歓迎ですね。劇場版とは違う演出家とキャスティングで、本当にこだわった吹替版としてお届けできれば、観ている方にも楽しんでいただけると思いますし、こちらも「こっちがホンモノだ!」という意気込みでやれる場が増えるとありがたいですね。

──昔は、各放送局で吹替版のキャストが違うのが当たり前でしたね。キャストが違うと言えば、トム・ハーディも演じる方が多い“競争率が高い”俳優じゃないですか。そのことに対しての決意表明などいただければ。

決意表明ですか!?(笑) 基本的には、作品ごとに違う人が吹替えをやっていいと思うんです。同じハーディでも、役が違えば印象も違いますから、その作品に合った声優がアテればいい。でも、演じたことがある人間からしたら(違う声優がキャスティングされて)悔しいので、「俺だったらこうしたのに!」みたいな嫉妬はありますよね。

できれば、彼が演じる役は全部担当するようになりたいですけど、それにはやっぱり結果を出さないといけませんから。ひとつひとつの積み重ねであり、お話をいただいたら逃さない、次に繋げるんだという想いでやるしかないです。

──放送を楽しみに待たれている皆さんに、お薦めのシーンを教えてください。

最後のフュリオサを介抱するところですね。マックスが彼女に初めて心を開くシーン。心の変わり目がね……難しかったです(苦笑)。でも、やりがいがありました。ボソボソ言っているだけで、原音がほとんど聞こえないんです。「演技を寄せる」というよりは、「気持ちをそこに持っていく」という感じですかね。よく考えられた台本だなと思いますし、そこはディレクションしていただいてよかったなと思います。

新たなキャスティングと翻訳による新録で、劇場版とはひと味違ったものになっていると思います。新しい『マッドマックス』をぜひ楽しんでいただけたらと思います。


●本田貴子コメント「この作品の中の女性たちは皆、こちらの想像を上回る行動力と精神力を見せてくれます。」
マッドマックス 怒りのデス・ロード

今回お話をいただいた時「あの旅をもう一度するのかぁ…………..」と思いました(笑)。
何でしょう、劇場版の収録で、あの世紀末の世界に精神的にも追い詰められたのかもしれませんね。
7000日数えて、そこで何かをあきらめたのか、どんな目にあっても前を向くと決めたのか。
今回の新録版ではフュリオサがより男らしく描かれていたように感じます。この作品の中の女性たちは皆、こちらの想像を上回る行動力と精神力を見せてくれます。自分の役割を瞬時に理解し、今自分がすべきことを的確にこなします。
こうありたいと思います。物語の軸でもある、フュリオサの目的に向かう彼女の強さが、フュリオサの今回の男らしい台詞に表れていたのかなと思いました。
翻訳や監督が変わると作品の色も変わって、収録はとても楽しかったです。
木村絵理子さんの演出はとにかく楽しいです!この作品は面白くなる!といつも確信してしまいます。
そう感じるだけに、自分が木村さんの作品の歯車のひとつとしてちゃんと機能することができるか、緊張して臨んでいます。
また新しいマッドマックスを、みなさま是非ご覧ください。

マッドマックス 怒りのデス・ロード[ザ・シネマ新録版]

※番組の放送は終了しました。
thecinema.jp

マッドマックス 怒りのデス・ロード[ザ・シネマ新録版]宮内敦士プロフィール
マックス(トム・ハーディ)役

トム・ハーディやジェラルド・バトラーの吹き替えを数多く担当。リブート版『スター・トレック(2009)』シリーズのDr.マッコイも持ち役。『欲望のバージニア』、『チャイルド44 森に消えた子供たち』、『ダンケルク』 ほか。
 


マッドマックス 怒りのデス・ロード[ザ・シネマ新録版]本田貴子プロフィール
フュリオサ(シャーリーズ・セロン)役

シャーリーズ・セロンをはじめ、ハル・ベリー、ヒラリー・スワンク、ミラ・ジョヴォヴィッチの代表作に数多く出演。『プロメテウス[ザ・シネマ新録版]』、『アトミック・ブロンド』、『タリーと私の秘密の時間』 ほか。