BS10スターチャンネル オリジナル新録吹替版プロデューサー上原行成さんにインタビュー!6月は『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』新録版放送!

BS10スターチャンネルでは、2025年1月からほぼ毎月のペースで、オリジナル吹替版を1作品制作して新たな吹替版を誕生させる企画を実施中!
今月6月にお届けするBS10スターチャンネルのオリジナル新録吹替版は、トム・クルーズ&ブラッド・ピットの2大スーパースター共演の、美しく危険なヴァンパイア・ストーリー『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』!
6/28(土)夜6:40からの初放送が迫ったこの作品の新録吹替版が誕生するに至った経緯、森川智之さん、入野自由さん、新津ちせさんら主要声優陣のキャスティングについて、さらにこれまでスターチャンネルが制作した新録吹替版について、プロデューサーであるBS10スターチャンネルの上原行成さんに詳しく伺いました!
(「ふきカエル大作戦」時代から数えて)3回目のご登場となる上原さんの興味深いお話しの数々をぜひお読みください!
 
―2025年1月にチャンネル自体のリニューアルがありましたが、「新録吹替版」「激レア吹替版」の制作、放送を継続的に行われており、いち吹替ファンとしても応援しているチャンネルのひとつであります。現在の視聴者の皆様からの反響はいかがですか?
 
上原行成さん(BS10スターチャンネル)(以下:上原さん):「激レア吹替版企画」の放送はもう足掛け4年になります。「毎月楽しみにしている」というお声や、作品のリクエストを視聴者の皆様からいただき、とてもありがたいです。
新録に関しては、(2025年の)1月に『TIME/タイム』、2月に『エース・ベンチュラ』、3月にはアラン・ドロン主演の『冒険者たち』、それから4月には『シリアル・ママ』と続いて、6月に『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』の制作・放送となりました。新録の発表をすると、吹き替えファンの方がX等で発信してくださり、何千も「いいね」がつくような作品もありました。今回の『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』も、今までのラインナップの中で新録に対しての反響が大きかった作品です。
 
―作品選定がすごく良いなと感じております。
 
上原さん:ありがとうございます。“新録”といってもその切り口にはいろいろなパターンがあります。
今回の『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』だとトム・クルーズを森川智之さんの吹き替えで観たいという吹き替えファンのニーズがあると思います。『エース・ベンチュラ』だとジム・キャリーは山寺宏一さんっていうように、“FIX声優”と呼ばれる声優さんがオリジナルの俳優さんに対して固定しているパターンがありますよね。
そのFIX声優の吹替版が存在しない作品を新録するという切り口がまずあります。
あとは、今まで吹替版がなぜか1バージョンも制作されていないという作品を初めて吹き替えるというケースがあり、『シリアル・ママ』がそのパターンでした。さらに、プロの声優ではないタレントや俳優の方が吹き替えに挑戦された作品を、改めてプロの声優を起用して新録を行うパターン、それが『TIME/タイム』だったわけです。ほかにも、過去に吹替版が複数バージョン制作されていても、例えばそれが全部地上波版で、ノーカット版が存在しなかったりする作品もあります。そういった作品を初めてノーカットで丸々新録して制作しますというパターンもあり、それが『冒険者たち』でした。あと、先ほど言った、カット版しか存在しない作品を部分的に追加で新録してノーカット版を作るっていうやり方もあります。
そういったいろんなパターンの吹替版がある中で、今回の『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』に関しては主人公をFIX声優さんで制作しよう、となった作品であるわけです。
非常に良いタイミングで、『ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング』も公開されていて、トム・クルーズに注目が集まっていましたし(笑)。
 
―キャスティング方法もお聞かせください。
 
上原さん:トム・クルーズについては、今やトム本人公認の日本語吹替声優として定評のある森川智之さんに担当していただくことが大前提となりますが、森川さんからもすぐに快諾していただき、順調なスタートとなりました。
共演のブラッド・ピットの吹き替えは入野自由さんにお願いしました。
この作品のブラピは、彼自身、非常に若く、美しく、かつ新米のドラキュラとしてトム・クルーズ演じる先輩ヴァンパイアから見初められて、弟子のような立ち位置で学んでいくっていうような設定ですよね。自分が生きていくために、人の血を啜って、そうすることで人が死んでいく、そのことに対して悩んだり、大きな葛藤を持っているキャラクターで、そのセンシティブな部分って言うんですかね、まだヴァンパイアになりきれない、そういう不安、迷い、葛藤の部分を表現をしていただくのに、若さ、青さを出しつつ、かつ雰囲気に合う声と演技力をお持ちの方ということで、入野さんに吹き替えをお願いしたわけです。
 
あとはこの作品に子役時代のキルスティン・ダンストが出演しています。
「子役の吹き替えは本当の子供でやりたい」っていうのは、私の1つこだわりとしてあります。
2016年にスターチャンネルで新録版を制作した西部劇の名作『シェーン』でも当時8歳の二宮慶多さんを起用したり、『冒険者たち』でもジャンジャンという役名の子供が重要な役どころで登場するのですが、彼の吹き替えも劇団ひまわりに所属されている川原瑛都さん(11歳)にお願いしたりしました。子供の吹き替えは大人の女性声優が少年の声を出してやる、というケースが一般的だと思います。演技力も安定していて、かつ子供の声が出せるっていうところだと思いますが、観る側から言うと、やはりそれが分かってしまうことがありますよね。「これは大人が演じているな」って。それにはやはり様々な事情があって、それを否定するつもりはもちろんないのですが、「子供の声は子供が当てる」方がリアリティが増して、ひいては作品全体のクオリティというか、観る人への説得力に繋がるんじゃないかという、私なりの信念があって、そこはこだわっている部分なんです。
そこで、今回、当時13歳のキルスティン・ダンストが演じたクローディア役も、近い年齢の新津ちせさん(収録時14歳)にお願いしました。
 
―『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』新録版を事前に拝見させていただきまして、新津ちせさんが、森川さん、入野さんに引けを取らない演技を披露されていて良い意味で非常に驚きました。細かい演技指導もされているのでしょうか?
 
上原さん:台本は事前にお渡しするので、新津さんもご自身なりに練習をされてきたと思います。今回のアフレコでは森川さん、入野さんと一緒に収録スタジオに入って演技をしていただいたのですが、新津さんが堂々たる素晴らしい演技を見せてくれました。
これまでも吹き替えのお仕事はいくつもされていますが、一人での抜き録りが多くて、複数名での同時収録はほとんど経験がなかったらしく、森川さん、入野さんと一緒の収録ということで、かなり緊張されていたそうです。しかし、いざ始まってみると、そんな心配はまったく感じさせない“プロ”の迫力に圧倒されました。森川さん、入野さんに負けないようにという心意気もあったかもしれませんし、お2人が演技を引き出してくれた部分もあったかもしれませんが、一緒に収録して、非常に良い結果になりました。
 
―入野さんのキャスティングについて話しを戻しますが、アニメ作品以外も参考にされましたか?
 
上原さん:そうですね。入野さんご自身は実写作品の吹き替えへのご参加が(森川さんに比べると)多くはないのですが、入野さんが主人公を吹き替えた『デューン/砂の惑星』シリーズ等は参考にしました。
アニメで演じられている作品も観て・聴いていたのですが、ある作品で、『インタビュー~』のブラピにハマるのでは、という作品があって、そちらも参考にして入野さんを有力候補に挙げさせてもらったわけです。
今回のブラピの役どころは、入野さんのキャリアの中でも新たな挑戦という部分もあったようで、収録後に新しい刺激があったという風におっしゃっていただけました。
ここでも森川さんと一緒に収録だったので、森川さんの演技=相手の出方で自身がどのように対応するのか、また逆に入野さんの演技=出方で森川さんがどう反応するか、という「演技の相互力学」が働いたところがあると思います。コロナ禍以降、バラバラに収録するスタイルが増えてしまったのですが、やはり一緒にがっつりと絡んで演技することで、安直な言葉になりますが、“良い化学反応”が出た部分は大いにあると思います。
 
―脇役では若きアントニオ・バンデラスを演じた子安武人さん、インタビュアー役のクリスチャン・スレイターを吹き替えした阪口周平さんも印象的でした。
 
上原さん:お2人ともピッタリとハマっていたと思います。
 
作品をご覧になる方にもそれぞれにご自身でピッタリだと思われるキャスティングがあるかと思いますが、全ての方の“ピッタリ”にお応えすることは残念ながら不可能です。放送後の反響が楽しみな部分も不安な部分もありますが、これからも新録に挑戦していきたいと思っています。
 
―今回の『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』では森川さんの起用なくしては制作もなかったということでしたが、森川さんの演技はいかがでしたか?
 
上原さん:森川智之さんのトム・クルーズは誰もが納得する安定感ですので、大舟に乗ったも同然です。何より、森川さんご本人が大いにノって演じて下さったのが一番うれしかったことです。トム・クルーズさながらのサービス精神で、終始ノリノリで、若き日のヴァンパイア・トムになりきってくださいました(笑)。当時32歳のトム・クルーズを演じるにあたり、若さを意識されるかなと思っていたのですが、中身は何百歳のヴァンパイアということで、百戦錬磨のベテラン・ヴァンパイアという部分と、けれども肉体的には美貌と若さを持っているという、内面と外面の両方を意識されたということを森川さんから伺いました。“若さ”と“老練さ”の融合の妙を、視聴者の方々にも是非感じ取っていただきたいと思います。
森川さんご自身も、まだ演じていないトム・クルーズをもっと演じたいというお気持ちもおありのようでしたので、今後もチャンスがあれば、森川版が存在しないトム・クルーズ作品を新録制作できたらいいなと思っています。
そういえば、森川さんも、新津さんの演技に天性の才能を感じるとおっしゃっていましたよ。入野さんも「すごい」とおっしゃっていました。
新津さん演じるクローディアは、いろいろな表情というか、いろんな気持ちをセリフにしなくてはいけないシーンがありますよね。ちょっと甘えてみたり、ちょっと不安になってみたり、時には激しく怒りをぶつけたり、非常に幅広い演技力が求められる役どころでした。
先ほどの繰り返しになりますが、3人で同時収録した相乗効果が発揮された結果と言えると思います。そんなところも視聴者の皆様に感じていただけたらいいですね。
 
―過去の作品も含めて、これまでの新録版で印象に残っている作品はありますか?
 
上原さん:スターチャンネルでは視聴者様からのリクエストを受付しています(→ リクエストページはこちらから)。もちろん全てにお応えできるわけではないのですが、『TIME/タイム』はリクエストをいただいた作品です。また、中村悠一さん演じるアラン・ドロンを再び観たいというリクエストにお応えして『冒険者たち』を新録しました。『シリアル・ママ』では、「本田貴子さんの吹き替えで観たい」というリクエストを実現した形です。
『TIME/タイム』では、最初のバージョンから引き継いで、浪川大輔さんに主人公を再び演じていただきました。
最初のバージョンとは演技を変えていただきましたが、やはり最初のバージョンを収録してから浪川さんも多くのキャリアを積まれて成長・進化をされているし、キャラクター造形を少し変化させて演じていただいています。もし聴き比べができるなら、浪川さんの演技の違いをぜひ聴き比べて欲しいですね。
『エース・ベンチュラ』では、山寺宏一さんはやはりすごいなと思いました。
1994年のエネルギー全開の若きジム・キャリーを2025年の山寺さんが演じたわけですよ。一息で一気にまくしたてる長ゼリフのマシンガントークも随所にあり、文字通りヘトヘトになりながら全身全霊を込めて体当たりの大熱演を披露してくれた山寺さんを見て、まさに山寺さんにしかできない「唯一無二の」妙技に触れた思いでした。
『冒険者たち』では、2016年にスターチャンネルで新録した『太陽がいっぱい』に続いて、視聴者の方からのリクエストもあって中村悠一さんで再度アラン・ドロンを吹き替えました。これは私の主観ですが、中村さんのアラン・ドロンは、往年の野沢那智さん版にも引けを取らない、すばらしいフィット感だと思っています。また、『冒険者たち』では、リノ・ヴァンチュラを吹き替えた田中美央さんもとても印象に残りました。『ゴジラ-1.0』など実写作品にもご出演されていますが、吹き替えではMCU作品に登場するベネディクト・ウォンを演じられている俳優さんです。男同士の友情と、ヒロインへの秘めた恋心の間で揺れ動く、不器用で誠実な男ロランを見事なハマりっぷりで演じていただきました。
ハマったといえば『シリアル・ママ』ですね。個人的に大好きな作品なのですが、主役から脇役に至るまで実に個性的なキャラクターたちがひしめきあっていますが、個人的にパーフェクトなキャスティングだと思っているのですが、果たしてご覧になった視聴者の方はどう感じられたでしょうかね?
本田貴子さん演じる“ママ”と雨蘭咲木子さん演じる友人の女性が下品な言葉で罵り合うシーンは悩みどころでした。。言葉をマイルドにすると面白さが半減するし、かといってあまりに下品だと放送に堪えられないし、さらに本田さんも雨蘭さんもいくら仕事とはいえ抵抗感を抱かれるかもしれないと懸念したり…、ということでギリギリの線を狙った下品なセリフの応酬と相成ったわけですが、お二人とも私の心配を見事に吹き飛ばす豪快な罵り合いを演じて下さり、下品で楽しい見せ場になりました。さすがプロ、と唸りました(笑)。
 
ここまで紹介したBS10スターチャンネルのオリジナル新録吹替版を、7月にまとめて放送します(『TIME/タイム』を除く)ので、この機会に是非ご覧いただきたいと思います。
 
そしてご覧いただけたら、何かしらご感想やご意見をいただけるとうれしいです。XなどのSNSで発信していただくのでも構いませんし、スターチャンネル宛てにメールやお手紙でも構いません。
また、リクエストも(全てにお応えできるわけではないのですが)、いただいたリクエストには全て目を通していますので、ぜひお送りいただければうれしいです!
 
―今後の放送予定等、可能な範囲でお知らせいただけますでしょうか?
 
上原さん:8月放送の新録吹替版もきっと皆さんがアッと驚くような企画を用意していますのでどうぞご期待ください。
 
―今後の新録版(キャスティング)のエピソード等、また記事にさせてください!激レアのご予定はいかがでしょうか?
 
上原さん:足掛け4年継続してきましたが、吹替ファンの方々の期待を背に受けて、責任感とプレッシャーを感じています、正直なところ(笑)。
今後も続けられる限り、貴重でレアなバージョンをお届けしていきたいと思っています。これからも、吹替版のみならず、BS10スターチャンネルで映画&ドラマをお楽しみください!
 
 
☆スターチャンネル新録版放送予定
インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア
6/28(土)夜6:40~、7/6(日)午後3時~、7/29(火)深夜1:40~
インタビューウィズヴァンパイア

© 1994 The Geffen Film Company

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シリアル・ママ
7/13(日)夜11:10~、7/22(火)午前9:10~
シリアル・ママ

© 1994 Savoy Pictures All Rights Reserved.

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エース・ベンチュラ
7/6(日)夕方5:10~、7/11(金)午前11:20~
エースベンチュラ

© 1994 Morgan Creek Productions, Inc. All Rights Reserved.

⇒詳細はこちらから
 
冒険者たち[4Kリマスター版]』
7/27(日)午前10時~、7/30(水)夕方4:20~
冒険者たち

© Societe Nouvelle de Cinematographie (SNC ) -Paris 1967

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太陽がいっぱい(2016年制作:新録・完全吹替版)』
7/20(日)午前10時~
太陽がいっぱい

© 1960 STUDIOCANAL – Titanus S.P.A.

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☆スターチャンネル・リクエストページ
⇒こちらから
 
関連ページ
⇒名作に新風!BS10スターチャンネル オリジナル新録吹替版映画コレクション
⇒スターチャンネルオリジナル吹替版 森川智之版『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア[新録吹替版]』
 
過去の上原さんへのインタビューページ
→2022.08.31 ドキュメンタリー映画『オードリー・ヘプバーン』日本語吹替版制作秘話を伺いました!
→2021.12.08 「激レア地上波吹替版」素材はこうして発掘&修復! 担当プロデューサーが明かすその舞台裏とは!?