吉田Pのオススメふきカエル

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『怪盗軍団、ただいま参上!』

「人のものを盗ったら泥棒ですよ!」…子供のころ繰り返し親や先生に聞かされた言葉。その通りです。人のものを盗ってはいけません。でもイケナイことほど魅力的に見えるのは世の常でありまして、でもやっぱりそれは悪いことだし見つかったら怒られるし何より相手に迷惑が…そんな一般市民のモヤモヤをスカッと晴らしてくれるのが盗みのプロを主人公とする、人呼んで“ケイパー・ムービー(犯罪映画)”。その中では古今東西いろんなお宝を狙って、プロの怪盗軍団が華麗な盗みのテクニックを披露してきました。そんなケイパー映画の最新作『バッドガイズ』の公開を控えて、このジャンルの名作をいくつかご紹介しましょう、というのが今回の趣旨であります。やっぱさ、ワルイ奴ってカッコいいじゃん?

吉田Pのオススメふきカエル『オーシャンと11人の仲間』(1960)

監督:ルイス・マイルストン
出演:フランク・シナトラ ディーン・マーティン

ケイパー映画の草分けと言えばこの作品。顔ぶれを見れば一目瞭然、御存じ“シナトラ一家”が勢ぞろいしたオールスター犯罪映画。フランク・シナトラ親分の下に集いしはディーン・マーティン、サミー・デイヴィス・Jr、ピーター・ローフォードといったお馴染みの面々。大晦日の深夜0時、巨額の現ナマが集まるラスベガスのカジノを5つ同時に襲撃するという大胆不敵な犯行は果たして成功するのか?…物語はもちろん、気心の知れたシナトラ一家の洒落たやり取りを観ているだけでも眼福ですわ。その四十年後、ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、マット・デイモンといったこちらもオールスターキャストによる『オーシャンズ11』としてリメイクされたのはご存知の通り。

 

吉田Pのオススメふきカエル『黄金の七人』(1962)

監督:マルコ・ヴィカリオ
出演:ロッサナ・ポデスタ フィリップ・ルロワ

続いてはイタリアから、いかにも彼の国らしい小粋でお洒落なケイパー映画。天才的な頭脳を持つ犯罪者“教授”以下、ヨーロッパ中から集められた七人のプロが狙うのは、鉄壁の守りを誇るスイス銀行の地下金庫に眠る七トンの金塊。綿密な計画と大胆な犯行で作戦は成功したかに見えたが、その先に待っていたのはリーダーである教授と妖艶な美女ジョルジャの裏切りだった!そこから始まる、誰が敵で誰が味方かわからない三つ巴の騙し合い。そして最後に笑うのは…?二転三転するストーリーはもちろん、ジョルジャを演じるロッサナ・ポデスタが見せてくれる素っ頓狂ギリギリのセクシーな衣装が目にも嬉しい逸品。全編こんなカッコなんですよマジで。

 

吉田Pのオススメふきカエル『ミニミニ大作戦』(1969)

監督:ピーター・コリンソン
出演:マイケル・ケイン ノエル・カワード

こちらは米英合作のケイパー映画で舞台はイタリアのトリノ。刑務所帰りのチャーリーが仲間とともに400万ドルの金塊を狙います。チャーリーを演じるマイケル・ケインはじめ犯罪者集団の飄々とした芝居もさることながら、この映画のもう一人(?)の主役は彼らが犯行に使うミニクーパー。英国旗の色に塗られた派手なミニたちがイタリア警察のアルファロメオを相手に、トリノの街で文字通り縦横無尽のカーチェイスを繰り広げます。他にもフィアットにランボルギーニにアストンマーティンとヨーロッパの名車が入り乱れる本作、クルマ好きなら必見。なおこちらも『オーシャン~』と同じく、四十年後にマーク・ウォールバーグ主演でリメイクされています。

 

吉田Pのオススメふきカエル『ホット・ロック』(1971)

監督:ピーター・イェーツ
出演:ロバート・レッドフォード ジョージ・シーガル

ミステリ作家ドナルド・E・ウェストレイクが生んだベストセラーシリーズと言えば“ドートマンダーもの”。泥棒ドートマンダーを主人公に金庫破りのケルプ、ドライバーのスタンといった仲間たちがあの手この手でお宝を狙うコメディ・タッチの犯罪小説です。その映画化第一作である『ホット・ロック』では世界最大のダイヤモンドを巡って博物館から刑務所、銀行の貸金庫と舞台を変えながら、どこかトボけた強奪作戦が展開します。レッドフォード演じるドートマンダーの二枚目ぶりと、ジョージ・シーガル演じるケルプのボヤキ芸の対比が何とも楽しい傑作。合言葉は“アフガニスタン・バナナスタンド”!

 

…とまあ、そんな傑作たちを生みだしてきた“ケイパー映画”の布陣にこの秋、期待の新作アニメーションが参戦します。

『バッドガイズ』

吉田Pのオススメふきカエル

© 2021 DREAMWORKS ANIMATION LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

監督:ピエール・ペリフェル
声の出演:サム・ロックウェル オークワフィナ
公式サイト:gaga.ne.jp/badguys

次々とハデな盗みを成功させてきた怪盗集団<バッドガイズ>。“天才的スリ”にしてカリスマ的リーダーのウルフが率いるのは “金庫破り”のスネーク、“変装の達人”シャーク、“肉体派”ピラニア、 “天才ハッカーの毒舌ガール”タランチュラ。歴代の強盗たちも奪えなかった伝説のお宝《黄金のイルカ》を狙って作戦を開始するが、その裏ではさらなる巨悪が密かに動き始めていた――。

『シュレック』『ヒックとドラゴン』『ボス・ベイビー』と数々のヒットを飛ばしてきたドリームワークス・アニメーションが総力を挙げて放つ“ケイパー映画”の決定版。クールでセクシーな怪盗軍団による史上最大の強奪作戦が、アニメならではの楽しいキャラクターとダイナミックなアクションで繰り広げられます。
そんなキャラクターたちに日本語版で命を吹き込むのは、こちらも多彩な出演者たち。リーダーのウルフを演じる尾上松也さんは歌舞伎界のプリンスであると同時に、ディズニーアニメ『モアナと伝説の海』を始めいくつもの作品で声優を務めてきました。私も一度ご一緒させていただきましたが、もうね、本職ですこの人(笑)。他にも個性派俳優の安田顕さん、面構えがワルそうな(失礼)チョコプラの長田さんほか、豪華なメンバーが揃いました。
⇒日本語吹替え版のスタッフ・キャストはこちら

それらメインキャストの脇を本職の声優諸氏が固めているのですが、そのお名前を眺めていると…白“熊”寛嗣、“鶴”岡聡、武“虎”、“牛”田裕子、“魚”建…わはは、そう来たか(笑)まあ出てくるキャラがみんな動物ですからね。こういう縛りのキャスティング、大変だけど面白そう、と無責任に思ってしまう同業者なのでありました。

 

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『黄金の七人』で全編を彩るのは、エンニオ・モリコーネと並ぶイタリア映画音楽の巨匠アルマンド・トロヴァヨーリ作曲のポップでキュートな“ダバダバ・サウンド”。お洒落ってのはこういうことよ