外国映画をこよなく愛し、数々の吹替えの制作現場に携わり、音声業界でも名うてのふきカエ愛好家である吉田プロデューサーと長谷川マネージャーとMr.ダークボ がぜひ観ていただきたい名作・秀作をご紹介!

※Amazonのページで紹介しているビデオテープ・DVD・ブルーレイ等のソフトは、日本語吹替え音声を収録していなかったり、このページで紹介しているものとは異なるバージョンの日本語吹替え音声を収録している場合もありますので、ご購入等の際はご注意ください。

My name is Bond...James Bond.

…と、名乗り続けて半世紀。007シリーズは今年でなんと生誕50周年を迎えた。ちなみにカセットテープとパンシロン胃腸薬も同じ62年生まれである。ついでにトム・クルーズと、拙コラムを書いている筆者も(そこを並べてどうする)
ボンド役の俳優もショーン・コネリーから数えて六代目、現在演じているのはダニエル・クレイグ。
彼がボンドに決まった当初は「柄じゃない」だの「どっちかっつったら敵側のスメルシュにいそうな顔」だの散々な言われようだったわけだが、まあ007ファンも高齢化して小うるさいオヤジになってますんでねえ。どうしても小言幸兵衛みたいな物言いになるのは仕方な…ってホラそこの隅に埃が溜まってますよ、近頃の若いモンは掃除もロクにできゃしないンだからまったく(以下略)


『007 スカイフォール』

ハンガーゲーム 公式サイト

(日本語吹替え版のスタッフ・キャストはこちら)


英国情報部のエージェントであるジェームズ・ボンドの新たな任務は、敵に強奪されたハードディスクの奪還。そのディスクにはNATO諜報部員の情報が記録されていた。敵のアジトを特定してトルコのイスタンブールに飛んだボンド。しかし事態はやがて思いがけない展開を見せ、ボンドの上司であるM、そして英国情報部の過去に秘められた亡霊がその姿を見せ始める…


が、しかし。クレイグ・ボンドのお披露目となった2006年の『007 カジノロワイヤル』は、そんな小言を吹き飛ばす大傑作だった。一番の勝因は、時代背景は現代のまま(←ここ重要)ボンドの設定のみをリセットして、いわば「007:エピソード0」としたこと。物語の冒頭では彼は00ナンバー(=殺しのライセンス)を取得しておらず、つまりまだ「007」ではないのだ。
当然、これまでのシリーズで見られた様々な「定番シーン」は、そのままの形では登場しない。例のガンバレル(スコープの中へ歩いてきたボンドが、やおらこちらに向き直って銃を撃つアレ)はあくまでも冒頭のアクション・シークエンスの一部だし、マティーニをステアするかシェイクするかの問いにも「どっちでもいい」と答える。このあたりで観客は、本作が「007誕生の物語」であることに気づく、という語り口の妙。
そして映画のラスト、敵の黒幕を追い詰めたボンドは遂に名乗りを上げる。「The name is Bond. James Bond」…画面は暗転し、こちらも劇中では頑なに封印されていた「ジェームズ・ボンドのテーマ」が満を持して鳴り響く中、エンドクレジットが流れ出す。つまり「映画の終わり」=「007の始まり」という構成に、初日の観客席からは万雷の拍手が沸き起こった。よっ!待ってました!

この『カジノロワイヤル』と事実上の続編ともいえる『慰めの報酬』で、「007誕生編」は完結した。つまり今回の『スカイフォール』こそが、新生ジェームズ・ボンドの真価を問われる一作となる。その要である監督にサム・メンデスが起用されたと聞いたファンの反応は、「え?」だった。シェイクスピア・シアター出身の演出家で、映画での監督作もアカデミー賞を受賞した『アメリカン・ビューティー』や、愛し合う二人の関係が壊れていく過程が見ていて痛かった『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』(余談ですがこの映画、絶対にカップルで見てはいけません)など、内省的なヒューマン・ドラマが主だったから。トム・ハンクスが“アメリカ版子連れ狼”を演じた『ロード・トゥ・パーディション』に僅かにアクションの匂いは感じられたとはいえ、「この人、活劇映画撮れんの?」というのが正直な疑問だったのである。

しかし完成した『007 スカイフォール』で、そんな懸念は払拭された。ヒーローとしてのボンド像や悪役(ハビエル・バルデムが怪演!)の造形、冷戦終結後ぼやけてしまっていた“敵”の再定義といった課題は見事にクリアされ、前述したような数々の「定番ネタ」も21世紀の世界観の中にピタリとはまった。もちろんアクション・シークエンスも大掛かりでありながら切れ味は鋭く、さらには英国情報部や上司であるMの過去といった“影の領域”にまで足を踏み入れるという大盤振る舞い。 結果、映画の尺はシリーズ最長の145分となったが、本作はそんな長さを感じさせないスピード感に満ちた快作であり、その手法はかつてバットマン・シリーズを見事に再起動させたクリストファー・ノーランを想起させる。『スカイフォール』は、バットマンにおける『ダークナイト』に匹敵する、モニュメンタルな一作となったのである。

加えて個人的に嬉しいポイントを並べると、まずは(これも前述した「定番ネタ」のひとつだが)2002年の『ダイ・アナザー・デイ』以来となる、MI6秘密兵器開発主任“Q”の登場。演じるベン・ウィショーも、初代から(番外編も入れて)数えると六代目である。これがまた「あー、21世紀の“Q”なら確かにこうだよなあ」という絶妙なキャラ。
そして、シリーズで毎度のお楽しみである主題歌。いくつかの例外(主題歌自体が存在しなかった『ドクター・ノオ』と『女王陛下の007』、単語の意味からしてそりゃ歌の文句には使えませんわなぁの『オクトパシー』)を除いて、007の主題歌には「歌詞には必ずその作品のタイトルが入る」という法則があった。特に初期の作品では、歌い出しの歌詞がそのまんまタイトルだったのだ。
とは言え『カジノロワイヤル』からは二作続けて無視されていたこの法則が、『スカイフォール』では見事に復活した。「空が崩れ落ちようと、私はあなたと一緒に立ち向かう」…数々のグラミー賞に輝くロンドン出身の女性アーティスト・アデルが、珠玉のバラードを歌い上げる。くー、いいねぇ。

しかし何よりも特筆すべきは、今回007シリーズ史上では初めて、日本語吹替え版が劇場で同時公開されること。主役を張るのは2009年に放送された『カジノロワイヤル』日曜洋画劇場版で、ボンド役に大抜擢された藤真秀氏。ショーン・コネリーの若山弦蔵氏、ロジャー・ムーアの広川太一郎氏を始め、幾多の名優たちが居並ぶ「ボンド声優」のリストに新しい名前が刻まれた。
ファンの反応も、発表当時は(失礼ながら)「…藤真秀って誰?」だったのが、実際に放送が始まるや絶賛の声に変わっていくという、まさにオリジナルのダニエル・クレイグに対する評価と全く同じだったのが面白い。藤氏はその後、同じく日曜洋画劇場で『ダークナイト』の主役を演じて、こちらも絶賛された。なんかいろいろとシンクロしてますなあ。
さらに嬉しいのは、テレビ放送版の声優である彼が、今回の劇場版にも起用されたこと。藤氏に加え、「トゥモロー・ネバー・ダイ」のフジテレビ放送版で”M”を吹替えた谷育子さんも、同じ役で”凱旋出演”を果たしている。通常はまず劇場版の吹替えが作られ、そのキャスティングがオフィシャルなものとして他メディアでも踏襲されることが多い。今回のレアなケースは、それだけTV版の吹替えがファンの支持を得たという証明でもある。この業界に身をおく者として、まさに御同慶の至り。藤氏はもちろん、彼を抜擢したスタッフの慧眼にも敬意(と少しばかりの羨望)を表したい。

11月に世界で公開されるや爆発的なヒットとなり、シリーズの記録を塗り替えつつある『007 スカイフォール』。興行面のみならず、作品的にもシリーズ中ベストとの声も多い。007生誕50周年という節目の年に、最高の設備を備えた劇場で、シリーズ最高の作品を、最高の吹替え版で堪能できる幸せ。これはボンドならずとも、最高に冷えたマティーニで乾杯したくなるでしょう。あ、もちろんシェイクでね。

 

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なに!「女王陛下の007」を見たことがない?これだから近頃の若いモンは!

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Merry Christmas!! 今年も早いもので、あと1か月。ほんと月日の流れは容赦なく過ぎていくぅ~…。誰かー!!時間を止めてー!!!

では気を取り直して、今年6月に公開されました、あの『ハイスクール・ミュージカル』シリーズのイケメン君、ザック・エフロンが主演のラブストーリーをご紹介します。

【初回限定生産】一枚のめぐり逢い ブルーレイ&DVDセット (2枚組) [Blu-ray]

『一枚のめぐり逢い』
[画像はAmazon.co.jpより]

です。ティーンアイドルから一皮むけたザック君。役柄の為鍛えた肉体美でファンを魅了。イラク掃討作戦に参加する海兵隊員の役だ。

そんな戦いの中、拾った一枚の写真に命を救われる。使命を全うし、本国アメリカに無事帰還するが、生死の狭間で過ごした日々が重くのしかかる。平穏な暮らしに馴染めず、何度も奇跡を起こした写真に写った女性を探す旅にでる。遠い道のりを愛犬ゼウスと共に歩き続けて辿り着いた場所は、家族で経営する犬の訓練所だった。そこで写真の女性に出逢う。美しい景色の中のゆったりとした時間に癒される2人は、自然に惹かれあうが、さらなる運命へ写真が導く…。

ふきカエのキャストは、ザック君演じるローガンを細谷佳正さんが凛々しくそして優しく、写真の女性テイラー・シリング演じるベスの揺れ動く女心を坂本真綾さんが好演と、この2人が、とても爽やかに、また情熱的にアテられています。ベスのおばあちゃん、ブライス・ダナー演じるエリー役を弥永和子さんが、家族を見守る柔らかで素敵な女性に演じています。
寒い冬の日、美しく流れゆく大自然の中に生まれた、ロマンティックで温かな愛に、ほっこりしませんか?

 

ニューイヤーズ・イブ [DVD]

続きましてもう1作は、

『ニューイヤーズ・イブ』
[画像はAmazon.co.jpより]

です。1人1人にそれぞれの人生と年明けがある。そんなテーマを、笑いあり涙ありで描くオムニバスストーリーです。

大晦日のニューヨーク。年越しのメインイベントである「ボール・ドロップ」を成功させるために躍起になるクレア(ヒラリー・スワンク)、仕事が上手くいかず自棄になっているイングリッド(ミシェル・ファイファー)とその夢を叶えようとする自転車便のポール(ザック・エフロン)、末期のガンで死を待つスタン(ロバート・デ・ニーロ)とそれを見守る看護師エイミー(ハル・ベリー)、エレベーターに閉じ込められてしまうランディ(アシュトン・カッチャー)とエリーズ(リー・ミシェル)等、様々な登場人物の悲喜こもごもを、大都会のニューヨークの街々を背景に繰り広げるストーリー。

クレアに本田貴子さん、イングリッドに高島雅羅さん、スタンに樋浦勉さん、エリーズに小島幸子さん。その他にもストーリーを盛り上げる、以前の恋人と偶然再会するロックスター、ジェンセン(ジョン・ボン・ジョヴィ)に咲野俊介さん、娘との仲に悩むキム(サラ・ジェシカ・パーカー)に永島由子さんと、俳優陣に負けず劣らずの豪華ふきカエキャストでお送りする作品です。
是非、今年の年越しカウントダウンに合わせてご覧くださいませ!! これであなたもニューヨーカー!!?

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2012 [Blu-ray]

 

世界の終わりが来る前に。

この原稿を書いているきょうは11月21日。早いもので2012年も間もなく終わり、思い起こせば恥ずかしきことの数々… マヤの予言によればあと1か月で世界が終わってしまうので、これまで人には言えなかったわが悪行を、今のうちに告白しておこうと思います。

 

アラビアのロレンス 製作50周年記念 HDデジタル・リマスター版 ブルーレイ・コレクターズ・エディション (初回生産限定) [Blu-ray]

<懺悔その1>

『アラビアのロレンス』
[画像はAmazon.co.jpより]

ついにブルーレイ化されたこの名作、収録されているふきカエは、このコラムの初回でご紹介した、わがテレビ東京バージョンです。
「20世紀名作シネマ」では当初、かつての名ふきカエ(ピーター・オトゥール=岸田森さんバージョン)で放送するつもりでしたが、素材をチェックしたところ状態が悪く、音声が途切れ途切れでした。これを上司に報告した結果、大スケールで新録を敢行することになったわけですが…
後日、旧素材を返却する前に再度聴いてみたところ、放送に使えないというほどではありませんでした。どうやら再生機器の方に問題があったようで…すみません!

 

ゴールデンアイ(デジタルリマスター・バージョン) [DVD]

<懺悔その2>

『ゴールデンアイ』
[画像はAmazon.co.jpより]

007最新作『スカイフォール』と、50周年記念ブルーレイ・DVDが話題沸騰中ですが、かつてわが「木曜洋画劇場」で、シリーズ第17作『ゴールデンアイ』を放送した時のこと。
ピアース・ブロスナンのジェームズ・ボンドのふきカエと言えば、テレビでは田中秀幸さんですが、もう各局で何度も放送された作品なので、テレ東初の放送では気分を変えてみようと、あえてDVD版の神谷明さんバージョンを転用しました。
『探偵レミントン・スティール』の頃とは違って努めてクールに決めるブロスナン・ボンド、神谷さんのふきカエもクールでしたが、画竜点睛を欠くのはラストシーン。美女を腕に抱えたボンドが、大口を開けて歯を見せつつカメラ前を見切れて行くのが何ともだらしない。しかも声優さんの習性なのか、神谷さん、画面のブロスナンの大口開きに「デヘ」と(原音にない)声をつけてしまってます。
これがどうにもいただけなくて…カットしちゃいました。すみません!

 

ターミネーター [Blu-ray]

<懺悔その3>

『ターミネーター』
[画像はAmazon.co.jpより]

こちらもブルーレイ化されましたが、ソフトには入ってない「木曜洋画」バージョンについては、以前このコラムに書いた通り。
収録後の打ち上げの席で、サラ・コナー役の松本梨香さんが「『ターミネーター2』もやらせてください!」とおっしゃって、私、力強く「はい!」と答えました。 正直言ってこの約束、守れるとは鼻から思ってなくて…守れませんでした。すみません!

 

<懺悔その4>

毎回勝手なことを書き散らしているこのコラム、毎回締切りを守れませんでした。ほんとにすみません!

 

しょーもない告白ばかりですみませんでした…というのが一番の懺悔であります。

さて、次回更新は再来月ということで、直前までお知らせできないのが残念ですが、BSジャパンでは、新年2月にあっと驚く番組を放送する予定です。このコラムより先にふきカエルさんが知らせてくれるかな?

それと、以前「7月のおすすめ」でご紹介した未公開映画『レア 魔性の肉体』が、新年1月31日(木)の「午後のロードショー」で放送されます。まさに“レアもの”のオンエアですので、テレビ東京をご覧になれる方はこの機会にぜひ。
それでは皆さん、よいお年を!


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